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第3章:雷速姫と迷宮街編
第99話:罠
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「きぃぃッ!!何じゃあの小娘は!?暖に色目等使いおって!!」
建物の入口で待機している俺達だが、アリシエーゼが一人息巻いていた。
「いや、だから色目って何だよ・・・」
「色目は色目じゃ!寧ろエロ目じゃ!」
おい・・・
俺はユーリーを未だに抱っこしながら、アリシエーゼと言い合いをしているが、何だか意味が分からない光景だなと思ってユーリーに聞く。
「ユーリー、そろそろ降りるか?」
「・・・ン、イヤ」
そう言ってユーリーは俺の胸に顔を埋めた。
「コラァァッ!ユーリー!!何をやって―――」
「五月蝿ぇ!子供にまで嫉妬するなッ」
「―――あッ、痛ッ」
ユーリーにまで食って掛るアリシエーゼに俺は拳骨を落とす。
「・・・・・・」
ふと視線を感じて其方を振り返ると、モニカが俺を恨めしそうに見ていた。
その目は見ただけで呪われそうな程に呪詛が込められていると思いそうになるくらい感情が抜け落ちていた。
怖ッ!?
何なのマジで!?
「モニカ、お前も大概だぞ・・・変態エルフがッ」
「変態何て酷いですッ!私はユーちゃんを愛しているだけですッ!分からないんですか!?」
「俺はお前を変態と言っただけだ。それがユーリーに関する事なんて一言も言ってないが、何でそこでユーリーが出て来たんだ?うん?」
「え、あ・・・」
俺がそう詰めると、モニカはめちゃくちゃ目が泳いでいた。
分かりやす過ぎるだろ・・・
何時もの如くアリシエーゼとモニカを相手にしながらユーリーを肩車する為にいきなり持ち上げた。
「・・・ワッ」
ユーリーは突然の事で身体を一瞬強ばらせたが、俺は持ち上げた勢いのままユーリーを自分の肩に乗せて肩車した。
「・・・ワァ」
ユーリーは初めて肩車をされたのだろうか、いつもとは全然違う見え方の景色に驚き、そして喜んでいる様であった。
証拠に仕切りに両脚をピョンピョンと伸ばしてはしゃいでいる。
「ユーちゃん、肩車して貰ったんだ?良かったねー」
明莉が近付いて来てユーリーにそう言った。
「・・・ウン、タノシイ」
表情は見えなかったが、ユーリーは確かに喜んでいる様で俺は自然と笑っていた。
「あぁぁぁぁッ!!変態だぁ!ほら!そっちこそ変態じゃないですか!!」
ユーリーを肩車している所を目を剥いて見ていたモニカは、突然涙を浮かべながら俺に詰め寄った。
「ちょッ!お前、危ないっての!」
いきなり詰め寄られた俺はバランスを崩すが、何とか踏ん張り、モニカに抗議した。
「私だって、ユーちゃんを肩車した事無いのに!!ユーちゃんの初めてを取られたぁぁ」
そしてモニカはワンワンと泣き始めてしまった。
いや、言い方・・・
「そんな本気泣きする事じゃないだろ!?何なんだよマジでお前ッ!」
泣きたいのはこっちの方だと、俺も全力で抗議するが、モニカは中々泣き止まなかった。
「あーあ、泣かしたぞー。女を泣かすとは何事じゃー」
完全に冷やかしに入ったアリシエーゼに煽られ、周りの面々も、あーあとか言っていた。
おいッ!何でだ!
極め付けは、肩車をしていたユーリーが俺の肩の上から、ポカポカと俺の頭を叩いた。
「・・・オネエチャンナカシタ」
「えぇぇ」
肩の上でユーリーが暴れるので俺は仕方無くユーリーを下ろした。
解放されたユーリーはモニカに近付き、小さな手で頭を撫でた。
「・・・うぅッ、ユーちゃん。お姉ちゃん穢されちゃったよぉ」
「・・・ウン、カワイソウ」
いや、だから言い方・・・
モニカのクソみたいな演技に騙されて、ユーリーは頻りにモニカの頭を撫でて慰めている。
翌々見ると、しゃがみこんで泣いているモニカだが、ユーリーにアタマを撫でられる度に口元を歪めて笑っていた。
「おまッ―――」
「―――何やってるんだキミ達は?」
俺がモニカに抗議しようと声を上げたその時、建物の入口から着替えが終わり出て来たリラに声を掛けられた。
「いや、何でも無い。って言うか来るのが遅―――」
「ん?どうした?」
「―――い・・・いや、なんでも無い」
こんな状況になっているのは、遅れて来たお前のせいだ!と文句を付けようと声の方を振り向いて、不覚にも見惚れてしまった。
着替えたリラは、先程までの軍服にハーフプレートメイルと言う荒々しい物と全く異なり、女性らしい、と言うか先程のリラからは想像も出来ないくらい可愛らしくも美しい、レースをあしらった白い長袖のシャツに、浅葱色のロングスカートを履いており、足元は線の細いブーツでコーディネートしていた。
この場に居る男性陣は皆、そのギャップに完全にやられており、ナッズなどは白地に口笛を吹いて、ヒューとかやっている。
何も言わない俺達に、リラはキョロキョロと顔を振り、若干顔を赤らめて呟いた。
「普段はスカートなど履かないのだが・・・変だろうか?」
ぐはあぁぁッ!!
破壊力ぅぅぅぅッ!!!
何この破壊力!?
もしもこれをリラが演技で計算してやっているのだとしたら恐ろしい・・・
「・・・姉貴、外見だけはかなり良いから余計タチが悪いんだ」
俺に耳打ちをして来たドエインに俺はハッとして、漸く現実世界に帰って来る事が出来た。
確かにこれだけ外見が良ければ寄って来る男は数知れなかっただろう。
然し、あの性格であの武力だ。
雷速などと言う二つ名まで持っているんだから、正に雷の様な速度で返り討ちにあった男も数知れないだろう事が容易に想像出来た。
「うわぁ!凄い綺麗ですね!さっきの鎧姿もカッコよかったですけど、今は本当に綺麗です!ねッ!?」
言葉を無くした男性陣を他所に、明莉がそんなリラの容姿に切り込む。
しかも、俺に、ねッ!?なんて振ってくる始末だ。
俺は余りリラを見過ぎるとその美貌と言う魔力に飲まれてしまいそうだったので、直ぐに明莉に振り向き気を逸らそうとした。
「そうだ―――ねぇッ!?」
な、何??
笑ってるけど笑って無いよ!?
え?何でそんな顔!?
明莉は口元は笑っているが、目が笑って居なかった・・・
目は口ほどに物を言うとはこの事だったのかと実感すると共に、一つの疑問が浮かぶ。
あれ・・・?
綺麗だねに対して、そうだねと肯定して良かったんだろうか・・・
いやいや、綺麗じゃ無いというのも可笑しいだろ?
え、でも何で明莉は・・・
俺の頭はそんな事を考えてはいやいや、考えてはいやいやと無限ループに入っていた。
「と、とりあえず店は予約出来ているから行こうか・・・」
リラはまだ顔を赤らめた状態のままそう言った。
「そ、そうだな。店はここから近いのか?」
等と言いながら歩き出すが、返事が返って来ずに俺は不審に思い振り返った。
リラは先程の場所から動いて居らず、モジモジと此方の様子を窺っていた。
「どうした?」
俺は訳が分からずリラにそう言うと、モニカが代わりに答えた。
「ハルさん、こう言う時は女性を男性がエスコートするものなんですよ?」 」
そう言ったモニカはニヤニヤと笑っていた。
「??」
先ず、何で俺が?と言う思いが込み上げて来て、その後、何でこんな展開?と思ったが、頭が混乱していて上手く考えが纏まらなかった。
モニカはそんな俺にはお構い無しに、俺の右腕をリラが絡め易くする為に三角形を無理矢理作り、そこにリラを招き寄せ、「ささ、どうぞ」等と言っていた。
リラもモニカに促されるまま、俺の右腕に自身の左腕を絡ませた。
「・・・こっちだ」
リラが右手で示す方向ーーと言っても、大隊の施設がある敷地の正門がある場所だがーーに俺は促されるまま歩き始めた。
この敷地に向かって来た時とは違うゆったりとした速度の歩みを続けている内に段々と思考が通常通りとなって行くと同時に唯ならぬ雰囲気を感じ取った。
「ハッ!?」
俺は立ち止まり、後ろを振り返る。
「・・・グギギギッ、許さんぞッ」
「ふふふふ」
アリシエーゼは歯がくだけんばかりに食いしばりながら、明らかな殺意を周囲に振り撒き、明莉はあの能面の様な表情をしながら笑うと言う何とも器用で奇妙な事をしていた。
「!?」
しまった!と思い、俺はモニカの方を振り向く。
するとモニカは厭らしい表情で右手を口に当てながら笑っており、別の方から聞こえる笑い声の方に振り向くと、ナッズとパトリックが声を出して此方を指差して笑っていた。
こ、これは!?
魔のトライアングル!?
嵌められた!と思った時には時既に遅しであったが、腕を組んで歩いていたリラがまた不意に俺の耳元に顔を近付けて言った。
「どうだ、参ったか」
その言葉を聞き、ハッとしてリラを見ると、出会った時とはまるで別人の様に、目を細めて妖しく笑っていた。
もうこれだけで参りそうだよ・・・
等と思ったのは内緒。絶対。
建物の入口で待機している俺達だが、アリシエーゼが一人息巻いていた。
「いや、だから色目って何だよ・・・」
「色目は色目じゃ!寧ろエロ目じゃ!」
おい・・・
俺はユーリーを未だに抱っこしながら、アリシエーゼと言い合いをしているが、何だか意味が分からない光景だなと思ってユーリーに聞く。
「ユーリー、そろそろ降りるか?」
「・・・ン、イヤ」
そう言ってユーリーは俺の胸に顔を埋めた。
「コラァァッ!ユーリー!!何をやって―――」
「五月蝿ぇ!子供にまで嫉妬するなッ」
「―――あッ、痛ッ」
ユーリーにまで食って掛るアリシエーゼに俺は拳骨を落とす。
「・・・・・・」
ふと視線を感じて其方を振り返ると、モニカが俺を恨めしそうに見ていた。
その目は見ただけで呪われそうな程に呪詛が込められていると思いそうになるくらい感情が抜け落ちていた。
怖ッ!?
何なのマジで!?
「モニカ、お前も大概だぞ・・・変態エルフがッ」
「変態何て酷いですッ!私はユーちゃんを愛しているだけですッ!分からないんですか!?」
「俺はお前を変態と言っただけだ。それがユーリーに関する事なんて一言も言ってないが、何でそこでユーリーが出て来たんだ?うん?」
「え、あ・・・」
俺がそう詰めると、モニカはめちゃくちゃ目が泳いでいた。
分かりやす過ぎるだろ・・・
何時もの如くアリシエーゼとモニカを相手にしながらユーリーを肩車する為にいきなり持ち上げた。
「・・・ワッ」
ユーリーは突然の事で身体を一瞬強ばらせたが、俺は持ち上げた勢いのままユーリーを自分の肩に乗せて肩車した。
「・・・ワァ」
ユーリーは初めて肩車をされたのだろうか、いつもとは全然違う見え方の景色に驚き、そして喜んでいる様であった。
証拠に仕切りに両脚をピョンピョンと伸ばしてはしゃいでいる。
「ユーちゃん、肩車して貰ったんだ?良かったねー」
明莉が近付いて来てユーリーにそう言った。
「・・・ウン、タノシイ」
表情は見えなかったが、ユーリーは確かに喜んでいる様で俺は自然と笑っていた。
「あぁぁぁぁッ!!変態だぁ!ほら!そっちこそ変態じゃないですか!!」
ユーリーを肩車している所を目を剥いて見ていたモニカは、突然涙を浮かべながら俺に詰め寄った。
「ちょッ!お前、危ないっての!」
いきなり詰め寄られた俺はバランスを崩すが、何とか踏ん張り、モニカに抗議した。
「私だって、ユーちゃんを肩車した事無いのに!!ユーちゃんの初めてを取られたぁぁ」
そしてモニカはワンワンと泣き始めてしまった。
いや、言い方・・・
「そんな本気泣きする事じゃないだろ!?何なんだよマジでお前ッ!」
泣きたいのはこっちの方だと、俺も全力で抗議するが、モニカは中々泣き止まなかった。
「あーあ、泣かしたぞー。女を泣かすとは何事じゃー」
完全に冷やかしに入ったアリシエーゼに煽られ、周りの面々も、あーあとか言っていた。
おいッ!何でだ!
極め付けは、肩車をしていたユーリーが俺の肩の上から、ポカポカと俺の頭を叩いた。
「・・・オネエチャンナカシタ」
「えぇぇ」
肩の上でユーリーが暴れるので俺は仕方無くユーリーを下ろした。
解放されたユーリーはモニカに近付き、小さな手で頭を撫でた。
「・・・うぅッ、ユーちゃん。お姉ちゃん穢されちゃったよぉ」
「・・・ウン、カワイソウ」
いや、だから言い方・・・
モニカのクソみたいな演技に騙されて、ユーリーは頻りにモニカの頭を撫でて慰めている。
翌々見ると、しゃがみこんで泣いているモニカだが、ユーリーにアタマを撫でられる度に口元を歪めて笑っていた。
「おまッ―――」
「―――何やってるんだキミ達は?」
俺がモニカに抗議しようと声を上げたその時、建物の入口から着替えが終わり出て来たリラに声を掛けられた。
「いや、何でも無い。って言うか来るのが遅―――」
「ん?どうした?」
「―――い・・・いや、なんでも無い」
こんな状況になっているのは、遅れて来たお前のせいだ!と文句を付けようと声の方を振り向いて、不覚にも見惚れてしまった。
着替えたリラは、先程までの軍服にハーフプレートメイルと言う荒々しい物と全く異なり、女性らしい、と言うか先程のリラからは想像も出来ないくらい可愛らしくも美しい、レースをあしらった白い長袖のシャツに、浅葱色のロングスカートを履いており、足元は線の細いブーツでコーディネートしていた。
この場に居る男性陣は皆、そのギャップに完全にやられており、ナッズなどは白地に口笛を吹いて、ヒューとかやっている。
何も言わない俺達に、リラはキョロキョロと顔を振り、若干顔を赤らめて呟いた。
「普段はスカートなど履かないのだが・・・変だろうか?」
ぐはあぁぁッ!!
破壊力ぅぅぅぅッ!!!
何この破壊力!?
もしもこれをリラが演技で計算してやっているのだとしたら恐ろしい・・・
「・・・姉貴、外見だけはかなり良いから余計タチが悪いんだ」
俺に耳打ちをして来たドエインに俺はハッとして、漸く現実世界に帰って来る事が出来た。
確かにこれだけ外見が良ければ寄って来る男は数知れなかっただろう。
然し、あの性格であの武力だ。
雷速などと言う二つ名まで持っているんだから、正に雷の様な速度で返り討ちにあった男も数知れないだろう事が容易に想像出来た。
「うわぁ!凄い綺麗ですね!さっきの鎧姿もカッコよかったですけど、今は本当に綺麗です!ねッ!?」
言葉を無くした男性陣を他所に、明莉がそんなリラの容姿に切り込む。
しかも、俺に、ねッ!?なんて振ってくる始末だ。
俺は余りリラを見過ぎるとその美貌と言う魔力に飲まれてしまいそうだったので、直ぐに明莉に振り向き気を逸らそうとした。
「そうだ―――ねぇッ!?」
な、何??
笑ってるけど笑って無いよ!?
え?何でそんな顔!?
明莉は口元は笑っているが、目が笑って居なかった・・・
目は口ほどに物を言うとはこの事だったのかと実感すると共に、一つの疑問が浮かぶ。
あれ・・・?
綺麗だねに対して、そうだねと肯定して良かったんだろうか・・・
いやいや、綺麗じゃ無いというのも可笑しいだろ?
え、でも何で明莉は・・・
俺の頭はそんな事を考えてはいやいや、考えてはいやいやと無限ループに入っていた。
「と、とりあえず店は予約出来ているから行こうか・・・」
リラはまだ顔を赤らめた状態のままそう言った。
「そ、そうだな。店はここから近いのか?」
等と言いながら歩き出すが、返事が返って来ずに俺は不審に思い振り返った。
リラは先程の場所から動いて居らず、モジモジと此方の様子を窺っていた。
「どうした?」
俺は訳が分からずリラにそう言うと、モニカが代わりに答えた。
「ハルさん、こう言う時は女性を男性がエスコートするものなんですよ?」 」
そう言ったモニカはニヤニヤと笑っていた。
「??」
先ず、何で俺が?と言う思いが込み上げて来て、その後、何でこんな展開?と思ったが、頭が混乱していて上手く考えが纏まらなかった。
モニカはそんな俺にはお構い無しに、俺の右腕をリラが絡め易くする為に三角形を無理矢理作り、そこにリラを招き寄せ、「ささ、どうぞ」等と言っていた。
リラもモニカに促されるまま、俺の右腕に自身の左腕を絡ませた。
「・・・こっちだ」
リラが右手で示す方向ーーと言っても、大隊の施設がある敷地の正門がある場所だがーーに俺は促されるまま歩き始めた。
この敷地に向かって来た時とは違うゆったりとした速度の歩みを続けている内に段々と思考が通常通りとなって行くと同時に唯ならぬ雰囲気を感じ取った。
「ハッ!?」
俺は立ち止まり、後ろを振り返る。
「・・・グギギギッ、許さんぞッ」
「ふふふふ」
アリシエーゼは歯がくだけんばかりに食いしばりながら、明らかな殺意を周囲に振り撒き、明莉はあの能面の様な表情をしながら笑うと言う何とも器用で奇妙な事をしていた。
「!?」
しまった!と思い、俺はモニカの方を振り向く。
するとモニカは厭らしい表情で右手を口に当てながら笑っており、別の方から聞こえる笑い声の方に振り向くと、ナッズとパトリックが声を出して此方を指差して笑っていた。
こ、これは!?
魔のトライアングル!?
嵌められた!と思った時には時既に遅しであったが、腕を組んで歩いていたリラがまた不意に俺の耳元に顔を近付けて言った。
「どうだ、参ったか」
その言葉を聞き、ハッとしてリラを見ると、出会った時とはまるで別人の様に、目を細めて妖しく笑っていた。
もうこれだけで参りそうだよ・・・
等と思ったのは内緒。絶対。
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