翠眼の魔道士

桜乃華

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第四十四話 土人形戦 2/3

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 すぐに敵と判断した土人形が向かって来た。土人形の創造主からの命令は単純なのだろう。“魔術障壁を護れ”“近づく者はすべて排除せよ”といったところか。俊敏な動きではないため土人形が振り下ろしてくる腕を避けるのは簡単だ。セシリヤは後ろへ飛び退り土人形の攻撃を避けた。重量があるためか、セシリヤが立っていた位置は少し抉れている。

 「攻撃を直接受ければ怪我だけで済むかな……」

 「ちょっと! 不安を煽るようなこと言わないで!」

 セシリヤの言葉に反応したティルラの声が必死だ。

 「受ければ、の話よ。土人形の攻撃を受けるつもりはないわ!」

 一体目から振り下ろされる腕、避けた先に待ち受けていたもう一体が踏みつけようと片足を上げゆっくり降ろされる。それを前転して躱した。

 (もう一体いたはず!)

 目視で二体を確認したセシリヤはもう一体の気配を探る。

 (背後か)

 背中越しに圧力を感じて膝立ちになったままセシリヤは背後に向かって掌に生成した水を放った。水を掛けられた土人形の体は一瞬、泥に戻ったものの、すぐに再生して元の形を取った。セシリヤは立ち上がり三体から距離を取る。

 「動きは鈍いけど、三体がそれぞれの動きをするから面倒くさいわね。水を掛けても泥に戻るだけだし……」

 「土人形に施された術式を解ければそれ壊れるの?」

 「どうだろ。師匠に読まされた本では魔法で動くタイプと羊皮紙を貼り付けて使役するタイプとあるらしいんだけど、これはどっちか見分けないといけないんだけど……」

 攻撃を避けながら観察していたセシリヤは途中で無言になった。

 ――セシリヤ様?

 声を掛けてきたアンディーンにセシリヤは口を開く。

 「ああー! 面倒くさい! さっきのストレスをぶつけられると思ったのに避けるだけとか余計にストレスが溜まるんですけど!」

 怒りのボルテージが上がる一方だったのだろう。セシリヤが声を荒げた。さすがのアンディーンもびくり、と肩を揺らす。何か言おうか否か迷っている間にセシリヤが手を掲げた。

 「土で出来ているのよね? だったら高温度で焼けば壊れやすくなるんじゃない?」

 ねえ、と笑いながらセシリヤは自らの手に炎を凝縮させていく。炎の塊が徐々に大きくなりセシリヤの白銀の髪が焔に照らされて淡く橙色に見える。

 「は⁉ え、ちょっ! セシリヤさん⁉」

 状況は見えずとも、高濃度の魔力を感じ取ったのだろう。ティルラが目を丸くして魔石を叩く。その間にもセシリヤの手に凝縮されている炎が大きくなっていった。
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