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第三十話 再び洞窟へ 2/3
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フラバの森近辺で植物が枯れ、川が汚染されている。その原因が洞窟の奥に住んでいると信じられている水の精霊の怒りかもしれない、と街の人たちの噂が寄せられ調査依頼が来ていたのだ。セシリヤが怪鳥討伐を行っている間に支部で受理をしてクエストを出しているところだ。まだクエストに挑戦している者はいない。本部の者として噂の真意を確かめてから帰ろうと思っているとミラは語った。
「なるほどね。ごめん、その件だけど解決しちゃったのよね……」
「そうなんですか⁉ さすがセシリヤさんです」
苦笑交じりに告げると目を丸くしたミラはすぐにニコニコと笑みを浮かべる。
では早速確認に行きましょう! と張り切ったミラがセシリヤの手を引いた。すぐに反応したピー助が離れろ、と言いたげにミラのローブを引く。
「さっき盛大に赤面していたのは何だったのよ」
頭を撫でられて赤面していたことはなかったかのように密着するミラにセシリヤは困惑する。その間にもピー助とミラは睨み合っている。
考えていても時間の無駄だと判断したセシリヤはピー助に手を伸ばした。両羽を広げて羽ばたいたピー助はセシリヤの肩に止まる。
「ほら、さっさと確認行くわよ。用事があるんだから早くして」
そう言われたミラは「はい!」と元気よく返事を返して転移魔法を使った。
♦♦♦
洞窟の最奥の地面に魔法陣が浮かぶ。気配を感じたアンディーンは湖中央に姿を現して警戒心を強めた。魔族によって汚染されたのは記憶に新しい。せっかくセシリヤとティルラによって元に戻ったというのにどうなっているのか、と魔法陣を見つめる。すぐに攻撃が出来るように水を凝縮させて宙へ浮かべた。
(また魔族でしょうか。来るなら来なさい)
魔法陣から現れたのは二人の男女。一人は見覚えがある。
「セシリヤ様⁉」
アンディーンは目を丸くした。先日汚染されて暴走した自分を助けてくれた恩人が目の前にいる。隣にいる人物には見覚えがない。誰だろう、と見つめているとセシリヤが口を開いた。
「アンディーン、昨日は力を貸してくれてありがとう」
ミラの肩を押して距離を取ったセシリヤがアンディーンへと笑みを向けた。
「あ、いいえ。あれくらいお安い御用です。それよりも今日はどういったご用件で?」
セシリヤの登場に安心したアンディーンが宙に浮かべていた水の刃を解けば、水面に戻った水が音を立てた。
「用事があるのはこっち。私は連れ回されているだけよ」
セシリヤの視線を追って男性の方へアンディーンも視線を向ける。相手は柔らかな笑みを浮かべて一歩前へ出た。
「初めまして、僕はクエスト管理協会本部に所属しているミラと申します」
ティルラの時と同じく一礼するミラにアンディーンも慌てて同じ動きをする。
「ご丁寧に。私は水の精霊―アンディーンと申します。ご用件を窺っても?」
アンディーンからの問いにミラは目的を説明した。
「分かりました。けれど、汚染に関してはセシリヤ様、ティルラ様、ピー助様により解決しました。私が語れることは少ないのですが……」
「大丈夫です。ここの記憶を読み取らせていただくので」
途中で遮ったミラは言うなり足元に魔法陣を展開する。「え、あの……」と状況について行けないアンディーンにセシリヤが眉を下げて困ったように笑った。
「ミラが記憶を読み取っている間は暇だから話でもしない?」
セシリヤからの誘いにアンディーンは小さく笑って「はい」と頷いた。
「なるほどね。ごめん、その件だけど解決しちゃったのよね……」
「そうなんですか⁉ さすがセシリヤさんです」
苦笑交じりに告げると目を丸くしたミラはすぐにニコニコと笑みを浮かべる。
では早速確認に行きましょう! と張り切ったミラがセシリヤの手を引いた。すぐに反応したピー助が離れろ、と言いたげにミラのローブを引く。
「さっき盛大に赤面していたのは何だったのよ」
頭を撫でられて赤面していたことはなかったかのように密着するミラにセシリヤは困惑する。その間にもピー助とミラは睨み合っている。
考えていても時間の無駄だと判断したセシリヤはピー助に手を伸ばした。両羽を広げて羽ばたいたピー助はセシリヤの肩に止まる。
「ほら、さっさと確認行くわよ。用事があるんだから早くして」
そう言われたミラは「はい!」と元気よく返事を返して転移魔法を使った。
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洞窟の最奥の地面に魔法陣が浮かぶ。気配を感じたアンディーンは湖中央に姿を現して警戒心を強めた。魔族によって汚染されたのは記憶に新しい。せっかくセシリヤとティルラによって元に戻ったというのにどうなっているのか、と魔法陣を見つめる。すぐに攻撃が出来るように水を凝縮させて宙へ浮かべた。
(また魔族でしょうか。来るなら来なさい)
魔法陣から現れたのは二人の男女。一人は見覚えがある。
「セシリヤ様⁉」
アンディーンは目を丸くした。先日汚染されて暴走した自分を助けてくれた恩人が目の前にいる。隣にいる人物には見覚えがない。誰だろう、と見つめているとセシリヤが口を開いた。
「アンディーン、昨日は力を貸してくれてありがとう」
ミラの肩を押して距離を取ったセシリヤがアンディーンへと笑みを向けた。
「あ、いいえ。あれくらいお安い御用です。それよりも今日はどういったご用件で?」
セシリヤの登場に安心したアンディーンが宙に浮かべていた水の刃を解けば、水面に戻った水が音を立てた。
「用事があるのはこっち。私は連れ回されているだけよ」
セシリヤの視線を追って男性の方へアンディーンも視線を向ける。相手は柔らかな笑みを浮かべて一歩前へ出た。
「初めまして、僕はクエスト管理協会本部に所属しているミラと申します」
ティルラの時と同じく一礼するミラにアンディーンも慌てて同じ動きをする。
「ご丁寧に。私は水の精霊―アンディーンと申します。ご用件を窺っても?」
アンディーンからの問いにミラは目的を説明した。
「分かりました。けれど、汚染に関してはセシリヤ様、ティルラ様、ピー助様により解決しました。私が語れることは少ないのですが……」
「大丈夫です。ここの記憶を読み取らせていただくので」
途中で遮ったミラは言うなり足元に魔法陣を展開する。「え、あの……」と状況について行けないアンディーンにセシリヤが眉を下げて困ったように笑った。
「ミラが記憶を読み取っている間は暇だから話でもしない?」
セシリヤからの誘いにアンディーンは小さく笑って「はい」と頷いた。
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