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第十七話 攻防戦と思わぬ伏兵

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 基本的に茶々さんを部屋の中に招き入れる私でも時には部屋に入れたくないときだってある。室内を掃除した直後はどうしても土足での立ち入りを拒んでしまう。
 そう、今がまさにそうだ。掃除を終えた私は手を洗い足取り軽く自室へと戻ろうとした。廊下に出てすぐ、いつの間に来ていたのか茶々さんと目が合った。

 「あ、茶々さん。こんにちは~」

 挨拶をして部屋へ向かって歩き出すと茶々さんも付いてきた。
 タタッ、と駆けて私を追い越してドアの前に陣取った茶々さんが座りながらこちらを見上げる。が、ごめんね、茶々さん。今日は部屋に入れることは出来ないんだ。
 私はドアノブに手を掛けたまま茶々さんを見下ろした。互いに視線が交差する。

 「ンニャ。ニャー」

 開けてと言わんばかりに可愛い声音で鳴く。でも、ごめん。今日はダメだ。
 私は茶々さんを抱き上げて横に退かすとドアを開けた。すかさず茶々さんが前脚をドアへと滑り込ませる。さすが、ネコ! と感心している場合ではない。私はドアを閉めることも開けることも出来なくなった。

 「……」
 「ンー」

 互いにもう一度見つめ合う。

 「茶々さん、今日はダメ! 明日とかなら歓迎するから今日は勘弁して!」

 そう言っても茶々さんは前脚を掛けたまま動かない。私も入れまいとドアノブから手が離せない。互いに拮抗状態が続く。
 どうしようか、と悩んでいた時だ。

 「先輩、何やってるんですか?」

 後輩の斎藤君から声を掛けられた。反射的に振り向く。その拍子に手が緩んで茶々さんが部屋に滑り込んだ。

 「あ! あぁあああ!」

 私の叫び声に声を掛けた斎藤君がビクッ、と肩を揺らす。なんだか申し訳ない事をしてしまったと言わんばかりにオロオロとしていた。ごめん、大声を出して。

 「すみません、ドアの前で動かないからどうしたのかなって思って声を掛けてしまいました」
 「ああ、うん、ごめん。声を掛けてくれてありがとう。ネコと攻防戦してて……もう入られたから私の負けだけど」

 君がまさかの伏兵だったとは思わなかったよ。

 「すみません、俺が声を掛けたせいで」

 斎藤君は申し訳なさそうに眉を下げた。そうだけど、まあ、あのままでも私が折れて部屋の中に入れていただろうからなぁ……。

 「ううん。大丈夫! 気にしないで! 声を掛けてくれてありがとう」
 「いえ。それじゃあ、俺行きますね」

 そう言って斎藤君は部屋に戻って行った。彼を見送った私は溜息を吐きながら扉を開けた。部屋の中ではベッドの上で丸くなり呑気に大口を開けて茶々さんが欠伸をしていた。私は諦めたように笑うとベッドに腰かけて茶々さんの頭を撫でるのだった。
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