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第八話 子猫を連れて

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 三限目の授業までだった私は帰宅して階段を上る。上り終えた先には茶々さんと、小さな子猫が座っていた。私は目をしばたたかせて子猫と茶々さんを交互に見る。茶白猫の茶々さんとは異なり、子猫は茶トラだ。
 「茶々さんの子供?」
 聞いたところで答えが返ってくるわけではないが、つい聞いてしまう。その間にも子猫は短い脚をぴょこぴょこと動かしながら私の部屋の前を駆けまわる。活発な子供とは反対に茶々さんはさすが大人だ。座っていた。鞄を置いた私は目の前で元気に遊ぶ子猫を眺めていた。


 夕食時、私は千帆ちゃんに子猫の事を話そうとソワソワしていた。ちなみに、今日の夕飯は酢豚とデザートに杏仁豆腐付きだ。
 「和ちゃん、茶々さんの子供には会った?」
 「へ⁉」
 言おうとしていたことを先に言われて間の抜けた声が零れた。千帆ちゃんは目をしばたたかせて「どうしたの?」と笑う。
 私は首を左右に振って子猫に会ったことを伝えた。
 「可愛かったよね~。好奇心旺盛な女の子!」
 「名前何か決める?」
 「そうだね! 決めよう!」
 私の提案に乗った千帆ちゃんと子猫の名前について話し合いが始まった。と言っても数分で「姫」に決まったのだが……。
 「姫かぁ~」
 「かなりお転婆姫だけどね」
 「お待ちください、姫! あぁ~的な感じかな?」
 そう言って私たちは「ふっ」と笑い合った。



 名前が決まった日から数日経った日曜日。天気が良かったので私は布団を干すことにした。敷布団を玄関前の手すりに掛けて布団用のハサミで挟んで固定する。
 「ふぅ~! 干している間に課題でもしようかな。そう言えばテストが近かったような……」
 大学生になって初めての試験。緊張しないわけがない。溜息を吐きながら私は部屋へと戻った。
 二時間後、布団を取り込もうとドアを開けた私の視線の先には、布団を日陰に姫と茶々さんが昼寝をしていた。規則正しくお腹が上下している。それを見た私は彼女たちの近くで身を屈めた。起きる気配はないが、耳は音を拾っているのかピンと立っていた。私はポケットに入れていたスマートフォンを起動させると二匹の親子を写真に収めた。スマートフォンに写る二匹の親子は寄り添い眠っている。それを見て目元が自然と緩んだ。
 「そう言えば初めてだね、写真撮るの」
 私は小さく笑うと、布団を取り込むのは後にして部屋へと戻った。
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