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【第二部】
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しおりを挟む自分の鼻にかかった声と、耳元で聴こえる短く熱い息。
フッ、フッ、と荒い息が聴こえるその向こう側で、どちらかの下着からぐちぐちと音が鳴る。
だらしなく開いた口からは、意味を成さない音しか出ない。
「ぁ…あっ…!」
快感から滲む涙を瞬きで散らし、一層つよく広い背中にしがみついた。
はいってないのに、この状態。
のしかかられている重さと、体温でさえ気持ちいいなんて、馬鹿みたいだ。
全部気持ちよくて、ずっと気持ちいい所から降りてこられない感覚が怖い。
でも全部、廉さんから、もたらされるものだと思うと、悪くない気分でウフフと声を上げそうになる。
「はあっ、、だめ、廉さん…」
「っ…なにが」
その問いには答えられず、口からはただ喘ぎ声が出た。
これだけ声を上げておいて、何がダメなのかわからないが、ダメなもんはダメなのだ。
嬉しいし気持ちいいし、ヒート中は色々な感情がごちゃ混ぜになる。
ふと、聞こえるのは自分の声ばかりで、廉さんの声が聴こえない事に気付き、思わず口を手のひらで押さえた。
「…っ、…」
「手はこっち」
その手は、いとも容易く恋人繋ぎに変わる。
身長差はそこまで無いのに、手は廉さんの方が少しだけ大きい。こうして手を繋いだ時に、包み込まれるような感じになるのが俺は大好きだ。
でも、声を抑えられないのは恥ずかしい。
しかも廉さんの声が聴こえない。
きゅっと唇を噛むと、咎めるように舌先が唇をなぞる。
「噛むな」
「ぁ…」
好きな声でそう言われると、ふるえる唇を、いとも容易く開けてしまった。
その僅かな隙間から器用に入り込んできた舌先に吸い付き、唾液を啜り嚥下する。
「…ん、んっぁ…」
いつの間にか、まとっていた服はベッドの端に追いやられ、剥き出しの性器はふたり分まとめて大きな手で扱かれていた。
「っぁ!でる…ぅ」
ぶるっと腰が震えて、腹筋に力が入る。
来る快感に備えたその時、
「ぁっ──!?」
するりと大きな手が下腹部に伸びてきて、自然に鈴口を押さえられた。
え、と瞼をあげると、こちらを見つめていた、黒い双眸と目が合った。
「久しぶりなのにイキすぎは辛いだろ?」
本気で心配したように言われて、目の前が真っ暗になる。
ついでに涙もじわじわ出てきて、喉がひくっと鳴った。
発情期中なのにイクの我慢とか、何の拷問だ。
こちとら我慢する方が辛い期間なんだよ。
「っん、やだあ…」
「やだじゃない」
腰をくねらすと、機嫌をとるように頬擦りされる。
そんな行動が可愛くてきゅんきゅんするけど、今は違う。早くイきたい。
ずっと我慢してたのに。
この4年間、しようと思ってする自慰はしていないし、ヒートもできるだけ薬で抑えてきた。
その反動からか、おかしいくらいに感じているのが自分でもわかった。
ハッ、ハッ、と犬のように息を吐き出すのが止まらず、熱くて熱くて仕方がない。
身体の中を熱がグルグルとかけめぐる。
お腹の奥は準備万端なのに、中々埋められない寂しさに、自分の薄い腹を撫で、廉さんを見上げる。
「はやく、早く、ここまでっ、ン…」
いれて、と言いたかったのにそれは音にならなかった。
唇をちゅっと吸われたすぐ後に、ぴりっと袋を破る音が聞こえる。
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