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【第二部】
4 side 黒川 廉
しおりを挟む俺の腕の中で、泣き疲れた華。
くたっと脱力し、体重を預けてくるのが嬉しい。
「こら」
「…ムフ」
時折、首筋を甘噛みしてくるのが愛おしすぎて、今すぐ襲いたくなるがグッと我慢。だが、尋常ではない濃さのフェロモンに、いつまで耐えられるか分からない。
「…本当に間に合って安心した」
強く抱き直すと、華も更にピトッとくっついてくる。
うどんを作ろうと思っていたが、食べられなかったらと、軽めのりんごにしたのは正解だったらしい。
あれを全て飲んでいたら、と考えると怖い。
持っていた薬の量と、尋常ではない手の震え。肝が冷えたが、止められてよかった。
「…、あの、茶色くなった、ごめんなさい…」
そう、ふと言った華の気だるげな視線の先。
それを追うと、時間が経ち褐変したりんごがある。
「食べる?」
問うと、腕の中にある華の身体が、大袈裟なほどビクンと跳ねる。
「っン…んん、今はいらない」
それを誤魔化す様にモゾモゾ身動ぎする華。文句なしに可愛い。
わざとではないが、抱き締めていたせいで、耳元で囁く事になってしまった。
ヒートが始まった今、こうして番と密着しているだけでも辛いはず。俺も辛い。
「辛い?」
「…まだだいじょ、ぶ」
現に、俺の腹には華の主張しているブツが当たっているし、華の臀には俺のモノが下着越しに当たっているだろう。
それとなく下から、軽く腰を揺らしてみる。
「んっぁ!ぅ、…」
「………」
喘ぎ、軽く背を反らし、華の息は荒くなった。
その背を撫であげるだけで、快感に身体を震わす。
なのに、何も言ってこない。
何が『まだ大丈夫』だ。
俺も早く華の中に入りたいけど、その気がないなら話は別だ。嫌な思いをさせたくないし。
まぁ、どこからどう見ても、その気がある様にしか見えないが、もはやこれは謎の我慢比べ。
しばらく、抱き合ったまま時は流れた。
「廉さん、…っ」
もうそろそろこっちが限界…という所で、やけに切羽詰まった華の声。
抱擁を解いて、真正面から見つめ合う。
「早く、早くさわって…っ」
華が俺の手を取り、そのまま自分の頬に添えた。
手のひらから、頬の熱さ、少しの汗ばみ、柔らかさなど、大量に情報が伝わってきて危うく鼻血が出そうになる。
いよいよか…?
「…いい?」
「ん、…4年ぶん、はやくぅ」
いつスイッチが入ったのか。一気にどろりと溶けた瞳には、俺しか映っていない。
ヒートの時しか見られない、扇情的な行動と表情に、思わず喉が鳴った。
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