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【第二部】
ハロウィンSS
しおりを挟む「それで、俺に、警察官のコスプレをしてくれと」
「はい…」
ふーん、と言いながら、袋の中身を漁る廉さん。
全然嫌ではなさそうな顔だ。むしろ口端を少し上げ、乗り気な感じさえする。
事の発端は、雑誌のハロウィン特集。
今月の表紙を飾る事はできなかったが、俺と爽のページが組まれる事になった。
まだまだひよっこ同然の俺。
コンセプトものは初めてで、廉さんと撮影イメージを兼ねた練習をしたい、と頼んだのだ。
…というのは建前で、本当はハロウィンにかまけて、廉さんの警察官コスが見たいだけ!なんて事は、言えるはずない。
「忙しいならほんと大丈夫なんですけど」
なんて申し訳なさそうに言ってみるが、大丈夫ではない。
俺はどうしても、どうしても警察官姿の廉さんを見たいのだ。
裏社会に身を置く廉さんが、正義の象徴とも言える警察官の格好をするなんて、色々ヤバいに決まってる。
今日のコスプレ、半分は仕事、半分は自分の欲だ。
「全然良いけど…ちょっと待ってろ」
「はい、ありがとうございます!」
俺の頭をひと撫でして、廉さんは書斎へ向かった。
数分も経たず、すぐに戻ってきた廉さんが俺に差し出した物を見て、思わず叫びそうになる。
「俺はお前の頼みを聞くんだから、な?」
黒い笑顔で圧を掛けてくる廉さん。
そう言われてしまうと、ここで断るのも罪悪感がすごい。
「ええ…うーん……」
渋々、受け取った袋には、『チャイナドレス』の文字。
中には、黒地に金の柄がついている服と、多分髪につける何かが入っていた。
「…すぐ脱ぎますからね」
「よし、着替えたら練習な」
頷き、それぞれウォークインクローゼットと寝室へ向かう。裸を見られるのと着替えを見られるのは、また違った恥ずかしさがある。
廉さんの警察官…楽しみすぎるな。
「…え?本当にこれで合ってんの…」
たくさんのスーツが並んでいるクローゼットの中にある姿見。
そこに映っているのは、チャイナドレス姿の俺。
着てみたは良いが、肩幅がかなりキツい。
当たり前だ、女物なんだから。想像していたよりピタッとしていて動きづらい。
丈はロングだけど、大胆なスリットが入っている。
横から脚がほぼ見えているのが萌えポイントなのだろうが、ちょっと寒い。
まさかこの歳になって、女装をする事になるなんて思わなかった。
肩幅がキツいとは言え、着れなかった訳では無い。
頑張ってファスナー上げたし。
そして、なかなか様になっているのを受け入れたくない。
自分がこんな格好をしていたら、廉さんの警察官姿に集中できない。
「…はぁ…早く写真撮って、お菓子渡して着替えよう…」
一度大きなため息をつき、複雑な気持ちでウォークインクローゼットを出た。
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