a pair of fate

みか

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【第二部】

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次の日の面会時間。俺は、黒川さんのいる病院に来ていた。
昨日はどうやって帰ったかもわからない。


ツンと鼻につく消毒液みたいな匂いが充満する病室からは、誰かの声が聞こえてくる。


そっとドアを引く。


「っ…」


ベッドに横たわる黒川さん。

その口元には、ドラマでよく見る酸素マスク。ベッドからたくさん管が伸びていて、近くに数字が表示されているモニターもある。


それだけが、黒川さんの生きている証だった。


「っひっく…廉…廉おきてよ…廉…ぅぅう…」


大粒の涙をボロボロ流しながら、黒川さんの横たわるベッドに突っ伏す理央の姿が、酷く滑稽に見えた。


悲しくて泣き叫びたいのにどうしたらいいか分からない俺と、事故なんて誰にでも起こりうる事なんだ、と冷静に理解する俺がいる。


でも、泣いたってどうしようもなくないか。


そんな事をして黒川さんが目を覚ますなら、とっくに声が枯れるくらいやってんだよ。


「華くん、大丈夫?」

「はい」


自分がこの状況でおかしなくらい冷め過ぎてるのは自覚している。
理央と同じくらい、それ以上に泣いてても良いはずのに、俺からは涙の一滴も流れない。

本当に、ただ本当に実感が湧かなくてどうしたらいいか分からないんだ。


「ほら理央、水分とらないと」

「ぃらないぃぃ…ひ、っく…」

「…俺…ちょっと歩いてきます」


理央の泣き声を聞きながら、ふらっと病室を後にする。

黒川さんに病院着と酸素マスクなんて似合わない。
やっぱり黒いシャツか、スーツを着てくれないと。

もしかしたらあの人は黒川さんじゃないのかもしれない。

きっとそうだ。


「…はぁ……」


そう思いたくても現実は変えられない。

あの青白い顔に触れたら、消えちゃいそうで、触れられず、声をかける事もできなかった。


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