a pair of fate

みか

文字の大きさ
上 下
121 / 226
【第一部】

4

しおりを挟む




そのまま黒川さんの肩に手を置いて、少し顔を傾ける。


「華?」


黒川さん、びっくりしてる。

黒川さんが驚くなんてあまり見れないな、と思いながら形の良い唇に自分の唇を押し当てた。

俺から舌入れるとかまだ無理だから、今の俺からの精一杯のキス。


「…なんだよ…」

「…ぁ、…キス…したかった、です」

「可愛い」


小さく呟いても静かな浴室では丸聞こえで、気を良くした黒川さんにものすごい力で抱き締められる。


「…かわいい…かわいい…可愛すぎる…可愛い、…」


可愛い可愛い連発する黒川さんだけど、俺の頬にあたる耳は熱いし素肌に感じる心音はとても速い。

黒川さんの方が可愛い。


「…ふふ…」

「可愛い、可愛い。ベッド行くぞ。後でまた一緒に風呂入ろうな。先に消毒だ」


毎度の事ながら俺に拒否権はなく、素っ裸にバスタオルを巻かれ、姫抱きで寝室まで強制連行。

俺の体はバスタオルがあるから濡れてないけど、黒川さんは拭いてもないから廊下はびしょびしょ。


「なんで持てるんですか」

「お前縦に長いよな…もうちょい太れよ」


つまり俺は筋肉がないと…。
ガーンと効果音がつきそうなくらい落ち込んでいると、あっという間に寝室に到着。

寝室は裸でも寒くないくらい、だけど暑くない温度にされていて完璧な気遣いにときめく。


黒いシーツの上に下ろされて、覆いかぶさってきた黒川さんで視界はいっぱいになった。


流れで首に回した両腕で引き寄せようとすると、唇同士が触れる直前でピタッと止まられお預け状態。


「キス?」


わかってるなら早くしてくれればいいのに、今日の黒川さんは言わせたがりみたいだ。

仕方ないから少し体を起こしてまた俺から当てるだけのキスをする。


「好き?」

「?、…ん、…」


ちゅっ、ちゅと至る所にキスを落とされながら首を傾げる。

キスが?黒川さんが?それとも他の何か?

でも答えは決まっている。


「黒川さんなら何でも好き!全部好き!大好き!」

「いてっ」


勢い余って起き上がると額をぶつけた。

でも痛さなんか気にならないくらい感情が昂る。


好きで好きで、もう体が、もちろん気持ち的にも黒川さんしか受け入れられなくなってしまった。


「大好き…俺、黒川さん大好き」

「華?」


もっと言わないと全然伝わらない。

俺はこんなに黒川さんが好きなんだよって、毎秒伝えないといつか爆発するんじゃないかと思うくらい好き。

触って欲しいのも触りたいのも独り占めしたいのも全部黒川さんだけ。


「俺っ、俺、黒川さん…」


やばい、なんか泣きそう。俺変になったかも。

涙が零れない様にぐっと我慢して俯くと、大きい手に顔を挟まれ、無理やり上を向かされる。


「大丈夫だ」

「…っん、うん、うん…」


何がなんて何も分からないけど、黒川さんが大丈夫って言うならきっと大丈夫。

もう止まらない涙を隠す術も無く、黒川さんの言葉に何度も頷いた。



しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

ヤクザと捨て子

幕間ささめ
BL
執着溺愛ヤクザ幹部×箱入り義理息子 ヤクザの事務所前に捨てられた子どもを自分好みに育てるヤクザ幹部とそんな保護者に育てられてる箱入り男子のお話。 ヤクザは頭の切れる爽やかな風貌の腹黒紳士。息子は細身の美男子の空回り全力少年。

いつかコントローラーを投げ出して

せんぷう
BL
 オメガバース。世界で男女以外に、アルファ・ベータ・オメガと性別が枝分かれした世界で新たにもう一つの性が発見された。  世界的にはレアなオメガ、アルファ以上の神に選別されたと言われる特異種。  バランサー。  アルファ、ベータ、オメガになるかを自らの意思で選択でき、バランサーの状態ならどのようなフェロモンですら影響を受けない、むしろ自身のフェロモンにより周囲を調伏できる最強の性別。  これは、バランサーであることを隠した少年の少し不運で不思議な出会いの物語。  裏社会のトップにして最強のアルファ攻め  ×  最強種バランサーであることをそれとなく隠して生活する兄弟想いな受け ※オメガバース特殊設定、追加性別有り .

組長と俺の話

性癖詰め込みおばけ
BL
その名の通り、組長と主人公の話 え、主人公のキャラ変が激しい?誤字がある? ( ᵒ̴̶̷᷄꒳ᵒ̴̶̷᷅ )それはホントにごめんなさい 1日1話かけたらいいな〜(他人事) 面白かったら、是非コメントをお願いします!

俺を注意してくる生徒会長の鼻を明かしてやりたかっただけなのに

たけむら
BL
真面目(?)な生徒会長×流されやすめなツンデレ男子高校生。そこに友達も加わって、わちゃわちゃの高校生活を送る話。 ネクタイをつけてこないことを毎日真面目に注意してくる生徒会長・伊佐野のことを面白がっていた水沢だったが、実は手のひらの上で転がされていたのは自分の方だった? そこに悪友・秋山も加わってやいのやいのにぎやか(?)な高校生活を送る話。 楽しんでいただけますように。どうぞよろしくお願いします。

もし、運命の番になれたのなら。

天井つむぎ
BL
春。守谷 奏斗(‪α‬)に振られ、精神的なショックで声を失った遊佐 水樹(Ω)は一年振りに高校三年生になった。 まだ奏斗に想いを寄せている水樹の前に現れたのは、守谷 彼方という転校生だ。優しい性格と笑顔を絶やさないところ以外は奏斗とそっくりの彼方から「友達になってくれるかな?」とお願いされる水樹。 水樹は奏斗にはされたことのない優しさを彼方からたくさんもらい、初めてで温かい友情関係に戸惑いが隠せない。 そんなある日、水樹の十九の誕生日がやってきて──。

花婿候補は冴えないαでした

BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。 本番なしなのもたまにはと思って書いてみました! ※pixivに同様の作品を掲載しています

両片思いのI LOVE YOU

大波小波
BL
 相沢 瑠衣(あいざわ るい)は、18歳のオメガ少年だ。  両親に家を追い出され、バイトを掛け持ちしながら毎日を何とか暮らしている。  そんなある日、大学生のアルファ青年・楠 寿士(くすのき ひさし)と出会う。  洋菓子店でミニスカサンタのコスプレで頑張っていた瑠衣から、売れ残りのクリスマスケーキを全部買ってくれた寿士。  お礼に彼のマンションまでケーキを運ぶ瑠衣だが、そのまま寿士と関係を持ってしまった。  富豪の御曹司である寿士は、一ヶ月100万円で愛人にならないか、と瑠衣に持ち掛ける。  少々性格に難ありの寿士なのだが、金銭に苦労している瑠衣は、ついつい応じてしまった……。

学園と夜の街での鬼ごっこ――標的は白の皇帝――

天海みつき
BL
 族の総長と副総長の恋の話。  アルビノの主人公――聖月はかつて黒いキャップを被って目元を隠しつつ、夜の街を駆け喧嘩に明け暮れ、いつしか"皇帝"と呼ばれるように。しかし、ある日突然、姿を晦ました。  その後、街では聖月は死んだという噂が蔓延していた。しかし、彼の族――Nukesは実際に遺体を見ていないと、その捜索を止めていなかった。 「どうしようかなぁ。……そぉだ。俺を見つけて御覧。そしたら捕まってあげる。これはゲームだよ。俺と君たちとの、ね」  学園と夜の街を巻き込んだ、追いかけっこが始まった。  族、学園、などと言っていますが全く知識がないため完全に想像です。何でも許せる方のみご覧下さい。  何とか完結までこぎつけました……!番外編を投稿完了しました。楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...