a pair of fate

みか

文字の大きさ
上 下
49 / 226
【第一部】

終業式

しおりを挟む

黒川さんとデートした土日から開けた週の金曜日、今日は一学期の終業式だ。

結局あの後、俺は行き先を決められず黒川さんが良く行くカフェとか本屋さんとかに連れて行ってもらった。

それで俺は進路をどうするか黒川さんに相談しようとしていたのをすっかり忘れていた。
結局、第一志望は爽と同じく事務所に入る様にした。父さんは意外にも『お前の人生だ。好きな様にしろ』と言ったし、母は最初から俺の選んだ進路は応援するつもりだったらしい。

拍子抜けしたけどまぁ爽と白林さんがいるしまだ不安はあるけど、やりたい事も無かったのでチャレンジしてみようと爽と約束した。


「─なので、三年生は最後の夏休みとなりますが─」


何回目だよそのフレーズ…。

20分近くダラダラ話し続けている校長に欠伸を噛み殺す。校長の話が長過ぎて周りの生徒も結構な数が船を漕いでいる。

きっと俺の数人後ろの爽も寝ているんだろう。


「──希望進路実現に向け、努力をするように。以上です。」


あ、終わった。

周りが立ったのに遅れて俺も立ち上がり、礼をする。
それから教室に戻り課題を貰ったらすぐ解散になった。


「華~帰ろーぜ~マック寄ろ~」

「ん、いいよ」


昇降口を出ると梅雨明けしたばかりの太陽の日差しが俺らを照りつける。それに蝉の鳴き声も重なって暑さが倍増だ。
爽は『あちいあちい~』と言いながら肩を組んでくるが、俺はそっちの方が暑いし他人に触られるのは好きじゃないせいで少し、いや、大分不快だ。


「俺の方があちいって離れろよ」

「えーー華低体温で気持ちいい」

「ウザ俺は暑いし気持ち悪い」


こんな俺にも相変わらず仲良くしてくれる爽をあしらいながら着いたファストフード店に入る。
注文を済ませて席で待っているとポケットのスマホが振動して、画面を見ると黒川さんからのメッセージを受信していた。


『今どこ?』


深く何も考えずに『マックです』と返信した後に考える。

何で俺がこの時間に返事するって分かってる?もしかして今日が終業式なのも知ってる?いや知ってるな。と、いうことは…

──♪♪

気付いた瞬間、着信音が鳴る。
爽はまだ戻ってこないし、と思い応答ボタンを押した。


「…もしもし」

『○○店で合ってる?』

「も、もしかして、」

『迎え行く。出てくるまで車で待ってるからそっから俺ん家な』

「…はい」


拒否権なんてないような言い方。

要件だけ聞いて了解を得るとさっさと切られて、まるで仕事の電話をしたみたいだなと思う。

まじかよ…俺なんかしたっけ…と考えていると爽が二人分のバーガーが乗ったトレーを持って戻ってきた。





しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

いつかコントローラーを投げ出して

せんぷう
BL
 オメガバース。世界で男女以外に、アルファ・ベータ・オメガと性別が枝分かれした世界で新たにもう一つの性が発見された。  世界的にはレアなオメガ、アルファ以上の神に選別されたと言われる特異種。  バランサー。  アルファ、ベータ、オメガになるかを自らの意思で選択でき、バランサーの状態ならどのようなフェロモンですら影響を受けない、むしろ自身のフェロモンにより周囲を調伏できる最強の性別。  これは、バランサーであることを隠した少年の少し不運で不思議な出会いの物語。  裏社会のトップにして最強のアルファ攻め  ×  最強種バランサーであることをそれとなく隠して生活する兄弟想いな受け ※オメガバース特殊設定、追加性別有り .

ヤクザと捨て子

幕間ささめ
BL
執着溺愛ヤクザ幹部×箱入り義理息子 ヤクザの事務所前に捨てられた子どもを自分好みに育てるヤクザ幹部とそんな保護者に育てられてる箱入り男子のお話。 ヤクザは頭の切れる爽やかな風貌の腹黒紳士。息子は細身の美男子の空回り全力少年。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

風紀“副”委員長はギリギリモブです

柚実
BL
名家の子息ばかりが集まる全寮制の男子校、鳳凰学園。 俺、佐倉伊織はその学園で風紀“副”委員長をしている。 そう、“副”だ。あくまでも“副”。 だから、ここが王道学園だろうがなんだろうが俺はモブでしかない────はずなのに! BL王道学園に入ってしまった男子高校生がモブであろうとしているのに、主要キャラ達から逃げられない話。

組長と俺の話

性癖詰め込みおばけ
BL
その名の通り、組長と主人公の話 え、主人公のキャラ変が激しい?誤字がある? ( ᵒ̴̶̷᷄꒳ᵒ̴̶̷᷅ )それはホントにごめんなさい 1日1話かけたらいいな〜(他人事) 面白かったら、是非コメントをお願いします!

俺を注意してくる生徒会長の鼻を明かしてやりたかっただけなのに

たけむら
BL
真面目(?)な生徒会長×流されやすめなツンデレ男子高校生。そこに友達も加わって、わちゃわちゃの高校生活を送る話。 ネクタイをつけてこないことを毎日真面目に注意してくる生徒会長・伊佐野のことを面白がっていた水沢だったが、実は手のひらの上で転がされていたのは自分の方だった? そこに悪友・秋山も加わってやいのやいのにぎやか(?)な高校生活を送る話。 楽しんでいただけますように。どうぞよろしくお願いします。

【好きと言えるまで】 -LIKEとLOVEの違い、分かる?-

悠里
BL
「LIKEとLOVEの違い、分かる?」 「オレがお前のこと、好きなのは、LOVEの方だよ」  告白されて。答えが出るまで何年でも待つと言われて。  4か月ずーっと、ふわふわ考え中…。  その快斗が、夏休みにすこしだけ帰ってくる。

処理中です...