34 / 226
【第一部】
はじめてのデート
しおりを挟む「ああああぁぁぁぁあ!!!!」
真っ暗闇からぬっ、と登場した白い着物の物体から逃れるように、隣の黒川さんに縋りついた。
「お前なぁ…」
5回目くらいの俺の絶叫に呆れた黒川さんが何か言っているが、半パニックに陥っている俺の耳には何も届かない。
ここは廃病院。夜な夜な幽霊達が歩き回っていて、自分達を助けれくれなかった人間に復讐をしようと…という設定の廃病院、もといお化け屋敷だ。
何でノコノコ付いてきちゃったんだろう…、と頭の片隅で猛烈に後悔する俺だった。
「無理…リタイアしたい…」
「もうすぐ出口だから我慢しろ」
事の発端は昨日の夜、期末考査も終わり後は夏休みを待つだけ。いつものように俺はベッドでゴロゴロしていた。
金曜日なのに早く寝るのは何か勿体ない、と時間を持て余していた所に黒川さんから『遊園地行かないか』とお誘いが来たのだ。
うん、まぁ何で俺のLIME知ってるか、とか今更気にしないけどね。
土日は基本、家に居たいけど遊園地とか何年も行ってなかったので二つ返事でOKしてしまった。
てっきり白林さんと早野さんも一緒かと思っていたのに迎えに来てくれたのは黒川さんだけで、二人きり。
これは、いわゆるデートでは?とソワソワして眠れず、お化け屋敷で絶叫してクタクタの現在、という流れだ。
「…はぁ…疲れました…」
「あんだけ叫べばな。何で入るって言ったんだよ」
「…だって…」
フードコートにある二人がけのテラス席に腰掛けると『喉乾いたろ?』と何処から出したのか、ペットボトルのお茶をくれる黒川さん。
デキる人だなぁ…エスコートし慣れてるし格好良いしさぞかしおモテになる事だろう。
今だってチラチラと周囲の人達が黒川さんを見ているのだ。気付かない方がおかしい。
「だって?」
みんな見てるけど俺の番なんだよ…しかも運命らしい。と少し優越感に浸っていたが、そこで意識は黒川さんに引き戻される。
「黒川さんが入りたいって言ったから」
「へぇ。生意気な癖に可愛いとこあるんだな」
ニヤニヤするかと思っていたのに、花が綻ぶような笑みで言われ顔が熱くなるのがわかった。
照れ隠しに椅子から立ち上がりコーヒーカップへ向かって歩く。
「は?うるさいです!もう!コーヒーカップは一人で行ってください!!」
「そう言いながら向かってるの気付けよ。あ、二人で」
スマートに係のお姉さんに告げた黒川さんに背中を押され水色のカップに座る。
0
お気に入りに追加
231
あなたにおすすめの小説
いつかコントローラーを投げ出して
せんぷう
BL
オメガバース。世界で男女以外に、アルファ・ベータ・オメガと性別が枝分かれした世界で新たにもう一つの性が発見された。
世界的にはレアなオメガ、アルファ以上の神に選別されたと言われる特異種。
バランサー。
アルファ、ベータ、オメガになるかを自らの意思で選択でき、バランサーの状態ならどのようなフェロモンですら影響を受けない、むしろ自身のフェロモンにより周囲を調伏できる最強の性別。
これは、バランサーであることを隠した少年の少し不運で不思議な出会いの物語。
裏社会のトップにして最強のアルファ攻め
×
最強種バランサーであることをそれとなく隠して生活する兄弟想いな受け
※オメガバース特殊設定、追加性別有り
.
ヤクザと捨て子
幕間ささめ
BL
執着溺愛ヤクザ幹部×箱入り義理息子
ヤクザの事務所前に捨てられた子どもを自分好みに育てるヤクザ幹部とそんな保護者に育てられてる箱入り男子のお話。
ヤクザは頭の切れる爽やかな風貌の腹黒紳士。息子は細身の美男子の空回り全力少年。
両片思いのI LOVE YOU
大波小波
BL
相沢 瑠衣(あいざわ るい)は、18歳のオメガ少年だ。
両親に家を追い出され、バイトを掛け持ちしながら毎日を何とか暮らしている。
そんなある日、大学生のアルファ青年・楠 寿士(くすのき ひさし)と出会う。
洋菓子店でミニスカサンタのコスプレで頑張っていた瑠衣から、売れ残りのクリスマスケーキを全部買ってくれた寿士。
お礼に彼のマンションまでケーキを運ぶ瑠衣だが、そのまま寿士と関係を持ってしまった。
富豪の御曹司である寿士は、一ヶ月100万円で愛人にならないか、と瑠衣に持ち掛ける。
少々性格に難ありの寿士なのだが、金銭に苦労している瑠衣は、ついつい応じてしまった……。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
コネクト
大波小波
BL
オメガの少年・加古 青葉(かこ あおば)は、安藤 智貴(あんどう ともたか)に仕える家事使用人だ。
18歳の誕生日に、青葉は智貴と結ばれることを楽しみにしていた。
だがその当日に、青葉は智貴の客人であるアルファ男性・七浦 芳樹(ななうら よしき)に多額の融資と引き換えに連れ去られてしまう。
一時は芳樹を恨んだ青葉だが、彼の明るく優しい人柄に、ほだされて行く……。
【好きと言えるまで】 -LIKEとLOVEの違い、分かる?-
悠里
BL
「LIKEとLOVEの違い、分かる?」
「オレがお前のこと、好きなのは、LOVEの方だよ」
告白されて。答えが出るまで何年でも待つと言われて。
4か月ずーっと、ふわふわ考え中…。
その快斗が、夏休みにすこしだけ帰ってくる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる