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0日目 1億人目の転生者

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    いつも決まった時間に鳴る携帯のアラームで目を覚まし、代わり映えの無い食事を済ませ大学へと出かける。時間割通りに講義を受けて、生活費を稼ぐためにアルバイト。愛すべき我がボロアパートの一室へと帰宅し、入浴。適当に夕食を済ませて就寝。

    こんな画一的な毎日に俺・水源光琉みなもとひかるは嫌気がさしていた。とはいえ、これ以外の何かに挑戦しようという決断力も無ければ、金銭的な余裕もない。

    仕方なく俺は毎日ほとんど変わらない生活をしているというわけだ。

    そんなある日のことだ。いつも通りの仕事をしたアラームを止めて身を起こすと、視界にやけに神々しい老人がいる。

    普通だったら悲鳴のひとつでもあげる事態なのかも知れないが、俺自身落ち着いている性格と、何よりも寝起きだということもあって半分寝ぼけていると思って特に気にとめなかった。

「君は水源光琉くんだね」

「はい。そうですけど」

    謎の老人の問いに、自分でも眠いと分かるようなあくび声で答える。

「おめでとう。君はたった今史上1億人目の異世界転生者に選ばれた!」

「なんですかそれ?」

     まだまだ開店準備中の脳は聞き取った情報を処理しきれずに取り敢えずの疑問を老人に投げた。

「異世界転生って知らない?ほら、最近ラノベとかアニメとかで流行ってると思うんだけど…」

 ( この老人、やけに流行に詳しいな…ん?転生!?)

    ようやく仕事を始めた俺の頭脳が今までの老人との会話を一斉に処理し始めた。その結果、

「俺が転生者に選ばれただって!?」と町内に響き渡るような大声で驚くことになった。


    ようやく「それらしい」反応を見ることができた老人はどこか満足気な表情で詳細を話し始めた。

    それによると、かの老人は転生にまつわる一切のことを取り仕切る「転生神」で、俺が史上1億人目の転生者に選ばれた。

    そして俺には1億人目を記念して、「世界統治」なるスーパーチート能力が与えられるらしい。

    さらにさらに、異世界の行き先を選ぶことができ、そもそも転生しない選択肢もあるとの事だ。

    話を一通り聞いてから5分も経たないうちに俺の考えは決まった。と言うよりも、話の途中から決めていた選択肢を選ぶ覚悟を決めた。

「分かった。転生する」

    両親とは絶縁状態にあるし、友達もほぼ居ない。バイト先のシフトに穴を開けてしまうくらいだから、もうこっちの世界に悔いは無い。

    強いて言うなら童貞くらいは捨てておきたかったなとは思うが、向こうの世界で散々楽しめばいい。

    転生先の世界については、一旦待合室的な空間に移動してから詳細を決めることになった。

「それでは行くぞ」

    転生神が自らの右手を俺にかざす。するとたちまち俺の身体は黄金の光に包まれてこの世界から去った。


    俺は待合室へやってきてから3日間一睡もせずに世界づくりに没頭していた。どういう訳かこの空間では眠くなることも無ければ、腹も空かない。疲れを感じることすら無い。

    もうずっとこの待合室に居たいと思わない訳では無かったが、せっかく貰った貴重なチケットを有効活用せずにはいられない。

    72時間連続でつくられた俺製の世界について簡単な説明をしたい。

    新しい世界は一つの丸い大陸から出来ていて、俺が入るまで人間は存在しない。他の動植物については俺が元々いた世界に似た感じの構成になっている。

    それから、新世界には「スキル」という概念があって、各種スキルに応じた特技や特別な力を得ることができるらしい。(さらに子孫に引き継がれる表のスキルと、引き継がれない裏スキルに分かれる)これらは俺と一緒に新世界入りする最初の仲間たちにも設定しようと思う。

「調子はどうかな?」

    新世界の概要が定まったあたりで転生神が姿を見せた。ちょうどいいタイミングで現れてくれたので気になっていたことを聞くことにした。

「そういえば世界統治のチートって転生後も使えるのか?」

「もちろんだ。こちらで使っているのと同じように使えるぞ。」

    だいぶフランクに神様と話している俺だが、男性転生者は大抵こんな感じに開き直ることが多いらしい。俺もそれに倣って砕けた物言いをすることにした。

    転生神は俺が設定した新世界を一応確認し、パチンと指を鳴らした。突然俺の右手に木製の扉が現れた。どうやら新世界へと向かう為の扉らしい。

「共に向かう仲間の支度が整ったらあの扉を潜りなさい。儂は他の仕事を済ませなければ行けないから、勝手に行ってくれて構わない。」

    転生神は再び指を鳴らした。先程まで老神が佇んでいた高貴空間はその他大多数と同じ一般的な物に戻った。


    仲間たちの調整にさらに2日かけた俺は、4人の仲間を引き連れながら自分でつくった新世界へと転生したのであった。
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