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第2章『悪夢の王国と孤独な魔法使い』編
第54話『再会/Reunion』Part.3
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4人と1匹はベンチに腰を下ろし、しばし沈黙のひと時を過ごしていた。
何事もなかったかのように、目の前の川を行商用の舟が往来している。
何とも平和なひととき。スカースレット王国という見知らぬ街にも、少し慣れてきたような気がする。
すると、少女がぽつりと自分自身に語りかけるように、ふいに呟いた。
「……また、あたしの負けね」
もしや、先の一件で気を悪くさせてしまったかもしれないとエレリアは思っていたが、意外にも少女は穏やかだった。どこか諦観した様子で、微笑みを漏らしている。
と、ここで隙を見計らって、エレリアはずっと胸に引っかかっていた疑念について、勇気を出して少女に尋ねてみた。
「ねぇ。あなたと、あなたのお母さんとの間に何があったの? 良かったら、教えてほしいんだけど」
そう、昨日大喧嘩していた、少女と母親の関係性だ。
ミサも同意見だと思ってくれているようで、エレリアの言葉に小さく頷いてくれた。
しかし、すぐに少女は口を開いてくれなかった。やはり、この話題を彼女に対して話すには禁句だったか。
ただ、少女は意を決した様子で目つきを変えると、初めてエレリアのために真実を語ってくれた。
「あの人は、あたしの本当の親じゃないの」
「えっ……?」
少女の口から飛び出たのは、エレリアにとって思わぬ発言だった。
「本当の親じゃないって……」
「ふふっ。いいわね、その驚いた顔。話した甲斐があったわ」
ひょっとしたら失礼なことを聞いてしまったかと焦ったが、少女は愉快そうに笑っていた。どうやら、エレリアの気づかいは杞憂だったようだ。
「元々、あたしは親なしなの。俗に言う、孤児ってやつ」
「じゃあ、昨日言い争ってたあの人は……」
「そう、血も繋がってない赤の他人。ただの他人ね」
そう言い切った後、緩やかに微笑んだ少女の顔は、どこか清々しく、それでいて、どこか悲しそうに見えた。
「あたしは見てもらっての通り魔法使いで、ゆくゆくは偉大な賢者になりたいと思ってるの。それも、生半可な賢者なんかじゃない! 最上級の炎魔法ボルゾーナを自由自在に操る最強の大賢者!」
「わぁ、それはすごい!」
「でしょっ!? あんたも、そう思うわよね!?」
大げさ気味なミサのリアクションに、少女はすぐさま顔色を変えて興奮気味に詰め寄った。
この少女は、本当に魔法が好きなのだろう。その目を見れば分かる。
彼女は生粋の魔法使いなのだ。
「だから、あたしは今すぐにでもこんな退屈な街とはオサラバして、修行の旅に出たいわけ。けど、あんたたちも知っての通り、あのクソうるさいババアが許してくれないの……!」
「ババアって……」
少女の放ったジョークに、ミサが苦笑いを漏らす。
すると、ミサの隣で話を聞いていたソウヤが、ふいに少女に対して口を開いてきた。
「けどよ。だったら、親の言う事なんか無視して、自分で勝手に修行の旅でも、なんでも好きなところに行けばいいだけじゃねぇかよ。おまえって、見かけの割にクソマジメなんだな」
「……」
「な、なんだよ、その目は……!?」
「あんたって男は、つくづく癪に障る奴ね。初めて会った時から思ってたけど、あたしの目に狂いはなかったわ」
「なんだとぉ!!」
「ソウくん! 落ち着いて!」
「ほら、そういうところよ。あたし、無駄に感情的なる男、嫌いなのよね」
ソウヤに対して、冷ややかな軽蔑の眼差しを向ける少女。
まったく、何回彼をなだめなければならないのか。せめて初対面の人間にだけでも、最低限の礼儀を持って接してほしいところである。
「あの人とは、ある約束をしたの。で、その約束をあたしは果たせなかった。ただ、それだけ」
「約束、って?」
「信頼できる仲間を連れて来い。そしたら、旅に出るのを特別に許してやる、って話だったんだけど」
「そっか、だから私たちを……」
ここまでの話は、昨日の彼女たちの会話からだいたい予想がついていた。
そして、その予想はだいたい思っていた通りだった。
「あたしは生まれてこのかた、ずっと独りだもん。今さら、3人も連れてくるなんて無理に決まってる……。きっと、あの人もあたしのこの人となりを分かってて、きっとからかってたんだ」
そう語る少女の右手は、よほどの悔しさのせいか少し震えているように見えた。
あくまでも表層は強気に笑顔を気取っているが、内心はやり場のない怒りで燃えているに違いない。
「けど、もう終わりにするわ」
「終わり、って……?」
すると、ふいにポツリと呟いた少女の言葉に、思わずエレリアはその発言の真意を聞き返してしまった。
「魔法の修行に出る旅よ」
「え? なんで、止めちゃうの?!」
「なんで止めちゃうの、って。あんた、あたしの話聞いてた? もう、無理なの。あたしが大賢者になる夢は完全に潰えたの」
すっとんきょうな発言を返したエレリアに、少女は眉根を寄せ、渇いた笑みを見せた。
そして、すべてを悟ったかのような無垢な微笑を漏らしながら、ため息を吐くように呟いた。
「こんなクソみたいな退屈な街で、あたしは死んでいくだけなのよ」
手にした杖を静かに見つめ続ける少女。
そんな彼女の姿を見て、エレリアはとても心がむず痒い気分だった。
「ふふ。あたし、なんで名前も知らない他人のあんたたちにこんな真剣に話してんだろ。バカみたい」
少女は自分自身を嘲笑うかのように、言葉を吐き捨てた。
そんな彼女に対して、エレリアがかけてあげられる言葉は、たった一つだった。
「それじゃ。話はすんだし、もうあたしに用はないでしょ? さよな……」
そして、少女がベンチからおもむろに立ち上がった、その時、
「だったら、私たちが仲間になればいいんだよね?」
「えっ?」
エレリアは無意識に、立ち去ろうとしている少女に対して口を開いていた。
思わず、呆然と立ち尽くす少女。
「私たちが、あなたの言う仲間ってやつになってあげれば、それでお母さんと約束を果たせるんでしょ?」
「な、何を……」
エレリアの発した言葉に、目の前の名も知らぬ少女は戸惑いを見せていた。
「せっかく、目の前に私たちがいるんだよ? なのに、なんで立ち去ろうとするの。私たちでいいなら、力を貸すのに」
「け、けど、もうあの人との約束の期間は過ぎたの! もう、どうしようもないのよ……」
「だったら、見返してやればいいじゃん」
どこか屁理屈じみた少女の発言にも、エレリアは平然と言い返した。
「うん、そうだね。リアちゃんの言う通り。それに、ちょうど、私たちも新しいお友達を探してたところだったし。あなたが仲間になってくれたらとっても心強いよ」
「へっ。余計なこと言いやがってよ、エレリア。おまえが言うんだったら、しゃーねぇなぁ」
「あんたたち……」
エレリアに続けミサとソウヤも、少女に向かってそれぞれ言葉をかけた。
「あ、あんたたち。それ、本気で言ってる……?」
「もちろん。嘘なんかつかないよ」
かつて、ポーションの材料を採るために訪れた森で、居場所がないと苦しんでいたエレリアにミサが語った一言。
『私があなたの家族になってあげる』。
この言葉は、記憶を失ったエレリアにとって、自分自身の存在意義を繋ぎ止めるような、とても大切な言葉だった。そして、今もまだあの言葉は心の中に深く残っている。
今度は自分の番だ。
ミサから貰った優しさを、愛を、誰かを救うために渡してやる番だ。
「だからさ。さよなら、なんて言わないでよ」
「……」
そして、エレリアは立ち上がって、少女に向かってそっと右手を差し出した。
「君は一人じゃないんだよ」
柄にもない言動かもしれない。自分でもそう思っている。
だが、目の前の少女を苦しみから救うのに理由なんていらないのだ。手を差し伸べることができるのなら、手段なんて選んでいる場合ではない。
すると、少女は向けられたエレリアの白い手をしばらく見つめたまま、いきなり目を潤し始めた。
そして、手にしていた杖を地面に落とすと、自身も力なく膝を地面に突き、嗚咽を漏らしながら、吐息を吐くようにして呟いた。
「みんな、ありがとう……」
あの日。夕焼けに照らされた森で、ミサから家族になろうと告げられた日。
きっと、エレリアもこの少女と同じように泣きじゃくっていたのだろう。
なんだか、今になって小っ恥ずかしくなってきた。だが、同時にこの目の前の少女がなぜだか一気に愛しく思えてきた。
理由は分からないが、どこか彼女は自分に似ている。そう、エレリアは感じたのだ。
泣き続ける少女を、見守るように見つめるエレリアたち。
すると、ふいに少女は泣き止んだかと思うと、いきなり勢いよく立ち上がり、赤く潤った目をこすった後、声高らかに叫んだ。
「よしっ!! 決まり!!」
突然、少女が立ち上がったので、一体何事かとエレリアたちが目を丸くしていると、彼女はニカっと笑った。
「これからは、あたしたちは仲間なのね!」
「うん!」
これ以上ないぐらいの幸せそうな笑顔で叫ぶ少女に、ミサも少女と負けないぐらいのとびっきりの笑顔で喜びの意を返した。
「あっ、そいえば、あんたたちの名前、まだ聞いてなかったわね。えっと……」
すると、少女がエレリアたちに名を尋ねてきた。
ということで、恒例の自己紹介タイムだ。
「私の名前はミサ! で、この2人がリアちゃんとソウくん!」
「まぁ、正確にはエレリアとソウヤだけど……」
「あと、このかわいい白猫のモフちゃん!」
「みぁ!!」
「えぇっと? ミサに、エレリアに、ソウヤに、モフ……。う~ん、そんな一気に覚えらんないわ!」
目を回すように、大げさに頭を抱える少女。
「あなたの名前は何ていうの?」
そして、続けてエレリアは少女に彼女自身の名を聞いた。
ついに、この時が来たのだ。
すると、少女は勿体ぶるように一息つくと、声高らかにこう叫んだ。
「私の名前は、モニカよ! よろしく!」
こうして、エレリアたちに、魔法使いの少女モニカが仲間になったのだった。
(第54話 終わり)
何事もなかったかのように、目の前の川を行商用の舟が往来している。
何とも平和なひととき。スカースレット王国という見知らぬ街にも、少し慣れてきたような気がする。
すると、少女がぽつりと自分自身に語りかけるように、ふいに呟いた。
「……また、あたしの負けね」
もしや、先の一件で気を悪くさせてしまったかもしれないとエレリアは思っていたが、意外にも少女は穏やかだった。どこか諦観した様子で、微笑みを漏らしている。
と、ここで隙を見計らって、エレリアはずっと胸に引っかかっていた疑念について、勇気を出して少女に尋ねてみた。
「ねぇ。あなたと、あなたのお母さんとの間に何があったの? 良かったら、教えてほしいんだけど」
そう、昨日大喧嘩していた、少女と母親の関係性だ。
ミサも同意見だと思ってくれているようで、エレリアの言葉に小さく頷いてくれた。
しかし、すぐに少女は口を開いてくれなかった。やはり、この話題を彼女に対して話すには禁句だったか。
ただ、少女は意を決した様子で目つきを変えると、初めてエレリアのために真実を語ってくれた。
「あの人は、あたしの本当の親じゃないの」
「えっ……?」
少女の口から飛び出たのは、エレリアにとって思わぬ発言だった。
「本当の親じゃないって……」
「ふふっ。いいわね、その驚いた顔。話した甲斐があったわ」
ひょっとしたら失礼なことを聞いてしまったかと焦ったが、少女は愉快そうに笑っていた。どうやら、エレリアの気づかいは杞憂だったようだ。
「元々、あたしは親なしなの。俗に言う、孤児ってやつ」
「じゃあ、昨日言い争ってたあの人は……」
「そう、血も繋がってない赤の他人。ただの他人ね」
そう言い切った後、緩やかに微笑んだ少女の顔は、どこか清々しく、それでいて、どこか悲しそうに見えた。
「あたしは見てもらっての通り魔法使いで、ゆくゆくは偉大な賢者になりたいと思ってるの。それも、生半可な賢者なんかじゃない! 最上級の炎魔法ボルゾーナを自由自在に操る最強の大賢者!」
「わぁ、それはすごい!」
「でしょっ!? あんたも、そう思うわよね!?」
大げさ気味なミサのリアクションに、少女はすぐさま顔色を変えて興奮気味に詰め寄った。
この少女は、本当に魔法が好きなのだろう。その目を見れば分かる。
彼女は生粋の魔法使いなのだ。
「だから、あたしは今すぐにでもこんな退屈な街とはオサラバして、修行の旅に出たいわけ。けど、あんたたちも知っての通り、あのクソうるさいババアが許してくれないの……!」
「ババアって……」
少女の放ったジョークに、ミサが苦笑いを漏らす。
すると、ミサの隣で話を聞いていたソウヤが、ふいに少女に対して口を開いてきた。
「けどよ。だったら、親の言う事なんか無視して、自分で勝手に修行の旅でも、なんでも好きなところに行けばいいだけじゃねぇかよ。おまえって、見かけの割にクソマジメなんだな」
「……」
「な、なんだよ、その目は……!?」
「あんたって男は、つくづく癪に障る奴ね。初めて会った時から思ってたけど、あたしの目に狂いはなかったわ」
「なんだとぉ!!」
「ソウくん! 落ち着いて!」
「ほら、そういうところよ。あたし、無駄に感情的なる男、嫌いなのよね」
ソウヤに対して、冷ややかな軽蔑の眼差しを向ける少女。
まったく、何回彼をなだめなければならないのか。せめて初対面の人間にだけでも、最低限の礼儀を持って接してほしいところである。
「あの人とは、ある約束をしたの。で、その約束をあたしは果たせなかった。ただ、それだけ」
「約束、って?」
「信頼できる仲間を連れて来い。そしたら、旅に出るのを特別に許してやる、って話だったんだけど」
「そっか、だから私たちを……」
ここまでの話は、昨日の彼女たちの会話からだいたい予想がついていた。
そして、その予想はだいたい思っていた通りだった。
「あたしは生まれてこのかた、ずっと独りだもん。今さら、3人も連れてくるなんて無理に決まってる……。きっと、あの人もあたしのこの人となりを分かってて、きっとからかってたんだ」
そう語る少女の右手は、よほどの悔しさのせいか少し震えているように見えた。
あくまでも表層は強気に笑顔を気取っているが、内心はやり場のない怒りで燃えているに違いない。
「けど、もう終わりにするわ」
「終わり、って……?」
すると、ふいにポツリと呟いた少女の言葉に、思わずエレリアはその発言の真意を聞き返してしまった。
「魔法の修行に出る旅よ」
「え? なんで、止めちゃうの?!」
「なんで止めちゃうの、って。あんた、あたしの話聞いてた? もう、無理なの。あたしが大賢者になる夢は完全に潰えたの」
すっとんきょうな発言を返したエレリアに、少女は眉根を寄せ、渇いた笑みを見せた。
そして、すべてを悟ったかのような無垢な微笑を漏らしながら、ため息を吐くように呟いた。
「こんなクソみたいな退屈な街で、あたしは死んでいくだけなのよ」
手にした杖を静かに見つめ続ける少女。
そんな彼女の姿を見て、エレリアはとても心がむず痒い気分だった。
「ふふ。あたし、なんで名前も知らない他人のあんたたちにこんな真剣に話してんだろ。バカみたい」
少女は自分自身を嘲笑うかのように、言葉を吐き捨てた。
そんな彼女に対して、エレリアがかけてあげられる言葉は、たった一つだった。
「それじゃ。話はすんだし、もうあたしに用はないでしょ? さよな……」
そして、少女がベンチからおもむろに立ち上がった、その時、
「だったら、私たちが仲間になればいいんだよね?」
「えっ?」
エレリアは無意識に、立ち去ろうとしている少女に対して口を開いていた。
思わず、呆然と立ち尽くす少女。
「私たちが、あなたの言う仲間ってやつになってあげれば、それでお母さんと約束を果たせるんでしょ?」
「な、何を……」
エレリアの発した言葉に、目の前の名も知らぬ少女は戸惑いを見せていた。
「せっかく、目の前に私たちがいるんだよ? なのに、なんで立ち去ろうとするの。私たちでいいなら、力を貸すのに」
「け、けど、もうあの人との約束の期間は過ぎたの! もう、どうしようもないのよ……」
「だったら、見返してやればいいじゃん」
どこか屁理屈じみた少女の発言にも、エレリアは平然と言い返した。
「うん、そうだね。リアちゃんの言う通り。それに、ちょうど、私たちも新しいお友達を探してたところだったし。あなたが仲間になってくれたらとっても心強いよ」
「へっ。余計なこと言いやがってよ、エレリア。おまえが言うんだったら、しゃーねぇなぁ」
「あんたたち……」
エレリアに続けミサとソウヤも、少女に向かってそれぞれ言葉をかけた。
「あ、あんたたち。それ、本気で言ってる……?」
「もちろん。嘘なんかつかないよ」
かつて、ポーションの材料を採るために訪れた森で、居場所がないと苦しんでいたエレリアにミサが語った一言。
『私があなたの家族になってあげる』。
この言葉は、記憶を失ったエレリアにとって、自分自身の存在意義を繋ぎ止めるような、とても大切な言葉だった。そして、今もまだあの言葉は心の中に深く残っている。
今度は自分の番だ。
ミサから貰った優しさを、愛を、誰かを救うために渡してやる番だ。
「だからさ。さよなら、なんて言わないでよ」
「……」
そして、エレリアは立ち上がって、少女に向かってそっと右手を差し出した。
「君は一人じゃないんだよ」
柄にもない言動かもしれない。自分でもそう思っている。
だが、目の前の少女を苦しみから救うのに理由なんていらないのだ。手を差し伸べることができるのなら、手段なんて選んでいる場合ではない。
すると、少女は向けられたエレリアの白い手をしばらく見つめたまま、いきなり目を潤し始めた。
そして、手にしていた杖を地面に落とすと、自身も力なく膝を地面に突き、嗚咽を漏らしながら、吐息を吐くようにして呟いた。
「みんな、ありがとう……」
あの日。夕焼けに照らされた森で、ミサから家族になろうと告げられた日。
きっと、エレリアもこの少女と同じように泣きじゃくっていたのだろう。
なんだか、今になって小っ恥ずかしくなってきた。だが、同時にこの目の前の少女がなぜだか一気に愛しく思えてきた。
理由は分からないが、どこか彼女は自分に似ている。そう、エレリアは感じたのだ。
泣き続ける少女を、見守るように見つめるエレリアたち。
すると、ふいに少女は泣き止んだかと思うと、いきなり勢いよく立ち上がり、赤く潤った目をこすった後、声高らかに叫んだ。
「よしっ!! 決まり!!」
突然、少女が立ち上がったので、一体何事かとエレリアたちが目を丸くしていると、彼女はニカっと笑った。
「これからは、あたしたちは仲間なのね!」
「うん!」
これ以上ないぐらいの幸せそうな笑顔で叫ぶ少女に、ミサも少女と負けないぐらいのとびっきりの笑顔で喜びの意を返した。
「あっ、そいえば、あんたたちの名前、まだ聞いてなかったわね。えっと……」
すると、少女がエレリアたちに名を尋ねてきた。
ということで、恒例の自己紹介タイムだ。
「私の名前はミサ! で、この2人がリアちゃんとソウくん!」
「まぁ、正確にはエレリアとソウヤだけど……」
「あと、このかわいい白猫のモフちゃん!」
「みぁ!!」
「えぇっと? ミサに、エレリアに、ソウヤに、モフ……。う~ん、そんな一気に覚えらんないわ!」
目を回すように、大げさに頭を抱える少女。
「あなたの名前は何ていうの?」
そして、続けてエレリアは少女に彼女自身の名を聞いた。
ついに、この時が来たのだ。
すると、少女は勿体ぶるように一息つくと、声高らかにこう叫んだ。
「私の名前は、モニカよ! よろしく!」
こうして、エレリアたちに、魔法使いの少女モニカが仲間になったのだった。
(第54話 終わり)
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