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第6話 みんなでお買い物➁

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「ふっふっふーん」

「鼻歌止めてもらえるかしら。気が散るんだけれど」

「別にいいじゃないですか。そのくらい! 酷いです先輩のくせに!!」

「なにその先輩が後輩に譲らないといけないみたいなやつ。少し腹立たしいわね」

「喧嘩しないでくれない!?」

 俺は二人と一緒にショッピングモールに向かっていた。
 最初は姫野とだけ行く予定だったが、色々あって凛音ちゃんとも行くことになり、こうなった。
 さっきから喧嘩ばかりしていて、先が思いやられる……。

 それに……。

「なんで、こんなに睨まれるんだ……」

 道歩く男全員に睨まれている気がする。
 胸にドクッとナイフという名の視線が突き刺さる。
 ちょっと怖い。

「仕方ないです、先輩! 美女二人に連れられて歩く男なんて誰だって睨みますよ!」

「そうね、私たち美少女だし。それくらい我慢しなさいな」

「そんな無茶な……」

 いつもこの二人と居たらこんな風になるのか。
 結構きついぜ。

「そんなことより、澤宮さん。私はあなたのことをまだ認めていないのだけれど。あなたがついてきたらカップル割り引きが使えないでしょう。行く意味がないじゃない」

「残念ながらそこは大丈夫です。ちゃんと店員さんには二人とも恋人ってことで説明しますから」

「説明しても店員には伝わらないと思うのだけれど……」

 はぁ……とため息をつく。

「そこは大丈夫ですよきっと! ねー先輩!」
 
「うお!?」

 すると、俺の体に寄りかかってきた。
 体重を丸ごと俺に乗せて来て、危うく転ぶところだったが、なんとか耐えた。
 隣をみると、姫野が殺気を出しながら凛音ちゃんの方を見ている。

「ちょっと! 何してるのよ!!」

「いいじゃないですか。これから恋人として行くんですからこういう風にするのが一番なんですよ」

「……確かに」

「いやいや、なに納得してんの!?」

「いいや、これは澤宮さんの言う通りよ。これからカップルとして目的地に行くつもりなのよ。こんな風にしておけば……」

 すると姫野も。

「簡単に恋人の練習が出来て、楽でしょう?」

「!?」

 身を預けるように寄りかかってくる。
 凛音ちゃんは子供っぽいような感じだが、姫野は冷徹とは裏腹に優しくて、気持ちのいい寄っかかり方をしてきて、胸がドキッとする。不意打ちだ。

「……一応念のために言っておくけれど、もしもあなたが私の告白をOKしてあなたの恋人になったとしてもいつもはこんなことはしないからね……練習だからなんだからね……」

「……なんの忠告だよ」

 俺は姫野にそう言いながら、考えごとをする。
 凛音ちゃんはわかりやすいけど、姫野のことだけはいまいちよくわからない。
 小さいころ、よく家で遊んでいたことは少しだけだが、覚えている。
 だけど、どうして俺なんかが好きなんだろう。
 本当に俺のことなんか好きなのだろうか……わからない。

「着きましたよ、先輩!」

 そうこうしているうちに目的のショッピングモールに着いた。
 大型のモールでたくさんの人でにぎわっていた。
 その中には同じ制服を着ている学生もいる。
 学校からそう遠くないところにあるため、寄り道としてここに来る人も多いんだろう。
 まあ、俺たちもその一人だが。

「おい、いくら恋人のフリとは言え、今やってると色々とまずいんじゃないのか?」 

「……そうね、今は一旦止めましょう。店に入ってからまたやりましょう」

「またやるの!?」

「当たり前でしょ。なんのための練習だったのよ。恋人のフリといえど本気でやらないとバレてしまうもの……」

 そういうものなのだろうか。 

「えー、私はまだ離れたくないんですけど。私はバレても全然影響ないですし」

「あなたになくても彼にはあるのよ。もしあなたの好きな人が彼だとバレてみなさい。全学年の男子からバッシングを受け、なんやかんやあって、きっと次の日、遺体で発見されるわ」

「……なるほど、それはヤバいですね」

 そういうと、二人は俺から離れていく。

「納得しないで!? てか、なんやかんやってなに!? 怖い!!」

「ごほん、少し長話し過ぎたわね。早く中に入りましょう。もうそろそろ5月でだんたんと熱くなってきているのだし」

「そうですね、入りましょうか」

 俺のツッコミはすらっと流され、そのまま中に入って行った。
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