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11.
しおりを挟むデートから数日後、辰也さんは生徒会長から頼まれた調べ物をするためずっとパソコンの前にいる。
家の中なら安全だしと思って、その間に母方の実家に顔を出しに行く。
まー外見がヤクザかよって人たちとお屋敷だけど、ただの地主だからね。
「おじいちゃん来たよー。」
「おお!待っとったぞ環!」
和装の渋い老人、眼光鋭く只者じゃないのは小さい頃から本能で感じてる。
お屋敷の祖父の部屋である和室で、机を挟んで向かいに敷かれている座布団に座る。
側に控えている南雲さんが、居心地悪そうな顔してるのは、昔武道で負けたことがあるからとかで祖父に頭が上がらないらしい。
僕は母に似ているからすごく気に入られてるんだけどね。
「お前が南雲に頼んでいた件だがな、じいちゃんもちょっこし手助けしてやろう。」
えっへんと胸を張りながら、封筒を渡してくれるおじいちゃん。
中を改めると、出てきたのは西條家経営のIT会社による汚職や、借金。セクハラ、パワハラなどの内部状況がデータや証拠として書かれていた資料。
これは前に南雲さんが言っていた、揃えればいけない資料なのでは?
ドヤ顔しながら自慢の髭を触っているおじいちゃんに向き合って、ありがとうと伝える。
「最高だよおじいちゃん。本当にありがとう。」
「ふっふっふ…喜ぶのはまだ早いぞ。弁護士と社員の今後も手配済みじゃ!株価の方も弄っておいたぞ。」
「流石。じゃあ早く倒産させなきゃね。今度辰也さんも連れて来るよ。」
封筒に資料を戻し、すぐに帰ろうと思ったが、折角きたんだからもう少し居なさいとおじいちゃんに引き留められ、お茶菓子をいただくことになった。
おばあちゃんも亡くなって、1人で寂しいんだろうな。
地主と言っても事業は全て引退して、今は隠居生活のおじいちゃん。
「あの狸爺め、儂が旅行に誘ったのに孫が従者とできてそれどころじゃないだと?もう誘ってやらん!」なんて言ってるけど、知り合いにそんな関係の人いたなー。
おじいちゃんの愚痴や辰也さんとの惚気を互いに聞いてもらいつつお茶を飲んでいると、席を外していた南雲さんが慌てた様子で戻ってきた。
「環さま!辰也さまがご兄弟に連れ去られたって!」
携帯を握りしめてそう報告してくれた南雲さん。
予想していなかったのか、目を見開き驚いている。
「っ?!何で!今日は家にいるって言ってたのに!」
だが、驚いているのは僕だって同じだ。
以前言ってた誘拐計画は南雲さんが潰してくれたはず。そこは信頼しているから今回とは関係ないだろう。
「辰也さまにつけていた護衛によると、家から1人で外出し、近くの喫茶店で辰也さまのご兄弟方と合流。挟まれる形で話し合いの末、次男が怒鳴り散らし腕を掴んだまま店内を後に…そのまま車に押し込められて走り去ったと。」
「ねえ、護衛は仕事してる?」
ああ、八つ当たりしてる。
守れなかったのは僕なのに、その場に居なかった僕が悪いのに…
南雲さんが淡々と話していた内容を聞く限り、メッセージか何かで辰也さんを呼び出し、無理矢理連れ去った、義兄さん達。
「護衛は一般人を装ってとの御命令でしたので…辰也さまを離すように注意をしたところ、何でもない、ただの兄弟喧嘩だと言われ立ち入れませんでした。ただ尾行は続けていますので、最悪強硬手段に出る準備はできています。突入しますか?」
「僕が行く。脅しを無視ってことは高校生のガキだって舐められてるってことだよね?
おじいちゃん。大学生になったらくれるって言ってた約束のやつ…今貰ってもいい?」
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