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65話
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1階にあるシアタールーム、映画を観るのがすきな嵐雪に両親が誕生日プレゼントとして改装した1室。
いつか家族揃って映画をと、椅子が4脚設置されているが、座ったことがあるのは俺と嵐雪、そして松田さんだけだ。
「それじゃ流しますよ。」
横1列に並ぶ椅子。
真ん中に俺と嵐雪が座っており、嵐雪の隣に葉山。俺の隣に蜂須賀が座り、松田さんは仕事をすると言って用意だけしてくれて退室した。
暗くなったシアタールーム、スクリーンに映し出されたのは赤ん坊の俺。
病室で母さんに抱えられている。
次々と成長過程の写真が流れて4歳のとき、嵐雪が産まれた。
俺と嵐雪2人の写真が多くなる。
「はぁ…ほっぺぷにぷにじゃないっすか。」
「うわ、天使じゃん。」
蜂須賀と葉山がそれぞれ感想を告げるのが恥ずかしい。
だが、こうやって思い出を振り返るなんてしたことなかったな…懐かしい。
次に流れたのが小学生の俺がエプロンと三角巾をつけて松田さんの手伝いをしている動画。
覚えている、嵐雪の3歳の誕生日にケーキを作りたいと言ったやつだ。
「蛍様、上手ですよ。」
スポンジに苺を並べる俺に、松田さんが褒めてくれる。
確か、嵐雪が昼寝をしているうちに完成させるって張り切ってた。結局、途中で起きてきた嵐雪も加わって一緒に作ったんだ。
「らんちゃんも作る!!」
動画に現れた、昼寝後で元気いっぱいの嵐雪。
あー懐かしい、可愛い。
自分のことをらんちゃんって呼んでる嵐雪なんてレアだ。
5歳になる前に、祖父に矯正されて呼ばなくなったからな。
「らんちゃんかっわい~。」
「うっせ!誰にだってあるだろ、一人称が名前なんて…」
揶揄う葉山の一言に嵐雪がやけ食いとばかりにポップコーンに集中し始める。
対して、静かに動画を見ている蜂須賀をちらりと横目で見ると、見逃すまいと真剣な表情をしていた。
瞬きしてるよな?
動画が終わったと思えば、また次の写真や動画が流れる。
遠足、運動会、合唱コンクールなど、一種のドキュメンタリー作品のように流れ、やっと終わったと思ったときには、見始めてから1時間以上経っていた。
「これ焼き増しって出来ないっすか?」
リビングに戻り早速松田さんの元へそう聞きに行く蜂須賀を見送り、懐かしさと恥ずかしさで気疲れした俺と嵐雪はソファに倒れ込む。
「にしても、相変わらず家族写真は少なかったね兄貴。」
「そう言うな、父さんと母さんの働く姿はかっこいいだろ。」
家族旅行なんて数えるほどしかしていないし、家族写真なんて、盆や正月の仲神家の集合写真とかしかない。
でも入学式や卒業式、写真は撮れなくても参加はしてくれた。子供を放置しているわけじゃないってわかっている。愛してくれている。
松田さんのおかげで俺たち兄弟は寂しいなんて思う暇なく過ごしてきた。
それに、俺に好意を向けてくれる奴がいてくれる……
松田さんと交渉をしている蜂須賀をちらりと見て、京本を頭に思い浮かべる。
俺は2人に告白された。惚れさせてみろとけしかけた。
「……兄貴さぁ、絆されてない?」
「え"?」
まるで心を読まれたみたいに、言い当てられ思わず変な声が出てしまう。
ジトッとした目で俺を見てくる嵐雪はそのまま続ける。
「顔に出てる、蜂須賀流星に対してゆるゆるな顔。俺にも似た顔向けるけど、あいつに対してはなんか意味合い違うよな。」
「……顔に出てるか?」
「出てるって言ってるじゃん。ふーん、満更じゃないってことか……なら後は俺をどう扱うかだな。」
呆れた様子から途端真剣な表情でぶつぶつと聞き取れない独り言を言い始めた嵐雪。
顔に出てたとは…弟に指摘されるのは恥ずかしいな。
いつか家族揃って映画をと、椅子が4脚設置されているが、座ったことがあるのは俺と嵐雪、そして松田さんだけだ。
「それじゃ流しますよ。」
横1列に並ぶ椅子。
真ん中に俺と嵐雪が座っており、嵐雪の隣に葉山。俺の隣に蜂須賀が座り、松田さんは仕事をすると言って用意だけしてくれて退室した。
暗くなったシアタールーム、スクリーンに映し出されたのは赤ん坊の俺。
病室で母さんに抱えられている。
次々と成長過程の写真が流れて4歳のとき、嵐雪が産まれた。
俺と嵐雪2人の写真が多くなる。
「はぁ…ほっぺぷにぷにじゃないっすか。」
「うわ、天使じゃん。」
蜂須賀と葉山がそれぞれ感想を告げるのが恥ずかしい。
だが、こうやって思い出を振り返るなんてしたことなかったな…懐かしい。
次に流れたのが小学生の俺がエプロンと三角巾をつけて松田さんの手伝いをしている動画。
覚えている、嵐雪の3歳の誕生日にケーキを作りたいと言ったやつだ。
「蛍様、上手ですよ。」
スポンジに苺を並べる俺に、松田さんが褒めてくれる。
確か、嵐雪が昼寝をしているうちに完成させるって張り切ってた。結局、途中で起きてきた嵐雪も加わって一緒に作ったんだ。
「らんちゃんも作る!!」
動画に現れた、昼寝後で元気いっぱいの嵐雪。
あー懐かしい、可愛い。
自分のことをらんちゃんって呼んでる嵐雪なんてレアだ。
5歳になる前に、祖父に矯正されて呼ばなくなったからな。
「らんちゃんかっわい~。」
「うっせ!誰にだってあるだろ、一人称が名前なんて…」
揶揄う葉山の一言に嵐雪がやけ食いとばかりにポップコーンに集中し始める。
対して、静かに動画を見ている蜂須賀をちらりと横目で見ると、見逃すまいと真剣な表情をしていた。
瞬きしてるよな?
動画が終わったと思えば、また次の写真や動画が流れる。
遠足、運動会、合唱コンクールなど、一種のドキュメンタリー作品のように流れ、やっと終わったと思ったときには、見始めてから1時間以上経っていた。
「これ焼き増しって出来ないっすか?」
リビングに戻り早速松田さんの元へそう聞きに行く蜂須賀を見送り、懐かしさと恥ずかしさで気疲れした俺と嵐雪はソファに倒れ込む。
「にしても、相変わらず家族写真は少なかったね兄貴。」
「そう言うな、父さんと母さんの働く姿はかっこいいだろ。」
家族旅行なんて数えるほどしかしていないし、家族写真なんて、盆や正月の仲神家の集合写真とかしかない。
でも入学式や卒業式、写真は撮れなくても参加はしてくれた。子供を放置しているわけじゃないってわかっている。愛してくれている。
松田さんのおかげで俺たち兄弟は寂しいなんて思う暇なく過ごしてきた。
それに、俺に好意を向けてくれる奴がいてくれる……
松田さんと交渉をしている蜂須賀をちらりと見て、京本を頭に思い浮かべる。
俺は2人に告白された。惚れさせてみろとけしかけた。
「……兄貴さぁ、絆されてない?」
「え"?」
まるで心を読まれたみたいに、言い当てられ思わず変な声が出てしまう。
ジトッとした目で俺を見てくる嵐雪はそのまま続ける。
「顔に出てる、蜂須賀流星に対してゆるゆるな顔。俺にも似た顔向けるけど、あいつに対してはなんか意味合い違うよな。」
「……顔に出てるか?」
「出てるって言ってるじゃん。ふーん、満更じゃないってことか……なら後は俺をどう扱うかだな。」
呆れた様子から途端真剣な表情でぶつぶつと聞き取れない独り言を言い始めた嵐雪。
顔に出てたとは…弟に指摘されるのは恥ずかしいな。
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