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56話:仲神嵐雪
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車での問答、ついでに膝枕してもらえて嬉しい。
ドラマや映画の内容が役に立った。
嘘ついてるか脈拍でわかるって本当なんだな。
視線逸らすのも本当だったし。
____
「嵐雪様、到着しましたよ。」
「嵐雪、起きたか?」
兄さんとの会話中うとうとして、そのまま寝ていたらしい。
目が覚めたら家の前で車は止まっていた。
「ん…起きた。」
「よし。昼はそうめんしようって松田さんと話していたんだが、暫く時間空けるか?」
「兄貴腹減ってるだろ、用意してる間に腹減るから大丈夫。」
荷台から荷物を取り出して運んでいる松田さん。その前を兄さんにエスコートされながら玄関へと向かう。
ドアを開けて先に俺を入らせる兄さん。
こういうのを自然にするからモテるんだ。
「あ、松田さん。部屋までは俺が運びますよ。昼の用意お願いしていいですか?」
「畏まりました。急がなくて構いませんのでごゆっくりおくつろぎ下さい。」
玄関入ってすぐの階段を荷物を持って登る兄さんを見送り、キッチンへ行く松田さんについていく。
「おや、お手伝いしてくれるんですか?」
「違う、兄貴に飲み物用意すんの。」
キッチンに着くとそのまま冷蔵庫を開け、中から松田さん特製のブレンド茶を氷入りのコップに注ぐ。
ついでに俺も1杯頂き、2杯目を注いでからキッチンに隣接したリビングのテーブルに持っていく。
ソファにもたれこみテレビを点ける。何かいいのがないか番組表を眺めていると、茹でるためにお湯を沸かしていた松田さんが口を挟む。
「あ!嵐雪様、そこ!そのバラエティにしてください!」
大声で言われた通りの番組を映すと、丁度アップになったのは今話題の男性アイドルグループ。
「はぁ…顔がいい。リアタイ出来るとは、流石嵐雪様、運が良い。」
キッチンから聞こえてくる感嘆の声はもはや日常だ。
確か松田さんは推し活のためにここで働いてるんだっけ?
給料いいらしいし、兄さんや俺の顔がいいから世話をすることが楽しいらしい。
今の一推しはこの前デビューしたばかりの男性アイドルグループらしくて、デビューシングルを聴かされたのを覚えている。
布教されたせいで、メンバーの顔と名前が分かってしまう。
惰性でテレビを見ていると兄さんがリビングに入ってきた。
「あ、兄貴。喉渇いてるだろ?これ飲んでいーぜ。」
用意しておいたコップを手に掲げてそう言うと、キッチンへ手伝いに行こうとしていた兄さんがリビングに留まってくれた。
「ん、美味いな。松田さんのブレンド茶を飲むと、帰ってきたって気がするよ。ありがと嵐雪。」
「あと、このグループ。松田さんの今の推しだって。」
飲み干したコップをテーブルに置いた兄さんに、次いでだからと番組を見せる。
「蛍様も曲聴きます?気分あがりますよ。」
「ああ、このグループなら聴いたことありますよ。クラスで流していた奴がいたんで。疾走感があっていい曲でした。」
兄さんがそう言うと、松田さんはまるで自分のことのように喜んでいる。
兄さんはお勧めしたらちゃんと聞いて感想くれるから嬉しい。
俺もお勧めの映画やドラマを教えると、感想くれたから分かる。
「でっしょ~!やっぱり蛍様は分かってらっしゃる。嵐雪様なんて曲調が早くて歌詞が聞き取れないなんて言って、そんなもん慣れですよ。」
「松田さんだって俺が観てたドラマに、この人他の作品で犯人役だったからこれもきっと犯人ですよって言ったじゃねぇか!」
「その通りだったでしょ!午後のサスペンスなんて大概同じ人が演じてるんだから。それにその時は観るのに夢中で宿題してなかった嵐雪様が悪いです。」
あー言えばこー言う、松田さんに口で勝てた試しがない。
嬉しそうに俺らのやりとりを眺めている兄さん。
ああ、本当に家にいるんだなって実感できる。
ドラマや映画の内容が役に立った。
嘘ついてるか脈拍でわかるって本当なんだな。
視線逸らすのも本当だったし。
____
「嵐雪様、到着しましたよ。」
「嵐雪、起きたか?」
兄さんとの会話中うとうとして、そのまま寝ていたらしい。
目が覚めたら家の前で車は止まっていた。
「ん…起きた。」
「よし。昼はそうめんしようって松田さんと話していたんだが、暫く時間空けるか?」
「兄貴腹減ってるだろ、用意してる間に腹減るから大丈夫。」
荷台から荷物を取り出して運んでいる松田さん。その前を兄さんにエスコートされながら玄関へと向かう。
ドアを開けて先に俺を入らせる兄さん。
こういうのを自然にするからモテるんだ。
「あ、松田さん。部屋までは俺が運びますよ。昼の用意お願いしていいですか?」
「畏まりました。急がなくて構いませんのでごゆっくりおくつろぎ下さい。」
玄関入ってすぐの階段を荷物を持って登る兄さんを見送り、キッチンへ行く松田さんについていく。
「おや、お手伝いしてくれるんですか?」
「違う、兄貴に飲み物用意すんの。」
キッチンに着くとそのまま冷蔵庫を開け、中から松田さん特製のブレンド茶を氷入りのコップに注ぐ。
ついでに俺も1杯頂き、2杯目を注いでからキッチンに隣接したリビングのテーブルに持っていく。
ソファにもたれこみテレビを点ける。何かいいのがないか番組表を眺めていると、茹でるためにお湯を沸かしていた松田さんが口を挟む。
「あ!嵐雪様、そこ!そのバラエティにしてください!」
大声で言われた通りの番組を映すと、丁度アップになったのは今話題の男性アイドルグループ。
「はぁ…顔がいい。リアタイ出来るとは、流石嵐雪様、運が良い。」
キッチンから聞こえてくる感嘆の声はもはや日常だ。
確か松田さんは推し活のためにここで働いてるんだっけ?
給料いいらしいし、兄さんや俺の顔がいいから世話をすることが楽しいらしい。
今の一推しはこの前デビューしたばかりの男性アイドルグループらしくて、デビューシングルを聴かされたのを覚えている。
布教されたせいで、メンバーの顔と名前が分かってしまう。
惰性でテレビを見ていると兄さんがリビングに入ってきた。
「あ、兄貴。喉渇いてるだろ?これ飲んでいーぜ。」
用意しておいたコップを手に掲げてそう言うと、キッチンへ手伝いに行こうとしていた兄さんがリビングに留まってくれた。
「ん、美味いな。松田さんのブレンド茶を飲むと、帰ってきたって気がするよ。ありがと嵐雪。」
「あと、このグループ。松田さんの今の推しだって。」
飲み干したコップをテーブルに置いた兄さんに、次いでだからと番組を見せる。
「蛍様も曲聴きます?気分あがりますよ。」
「ああ、このグループなら聴いたことありますよ。クラスで流していた奴がいたんで。疾走感があっていい曲でした。」
兄さんがそう言うと、松田さんはまるで自分のことのように喜んでいる。
兄さんはお勧めしたらちゃんと聞いて感想くれるから嬉しい。
俺もお勧めの映画やドラマを教えると、感想くれたから分かる。
「でっしょ~!やっぱり蛍様は分かってらっしゃる。嵐雪様なんて曲調が早くて歌詞が聞き取れないなんて言って、そんなもん慣れですよ。」
「松田さんだって俺が観てたドラマに、この人他の作品で犯人役だったからこれもきっと犯人ですよって言ったじゃねぇか!」
「その通りだったでしょ!午後のサスペンスなんて大概同じ人が演じてるんだから。それにその時は観るのに夢中で宿題してなかった嵐雪様が悪いです。」
あー言えばこー言う、松田さんに口で勝てた試しがない。
嬉しそうに俺らのやりとりを眺めている兄さん。
ああ、本当に家にいるんだなって実感できる。
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