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38話:西條辰也
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俺が一方的に憧れている1つ下のしっかり者、環ちゃん。
本人は知らないだろう、1度救われたことがあることを……
中等部、まだ俺がダサい男だった時。俺の陰口を叩いていた先輩たちを不愉快だと一蹴した環ちゃんは、凛としてすっごくかっこよかった。しかもそのあと逆上した先輩に襲われそうになっていたのを投げ飛ばした姿、今でも覚えてる。
半袖から伸びるしなやかな腕、捻りの効いた腰、一体どこにそんな力があるんだろうと思った。
ハグをしてくれた今日、そのあとは自分の部屋に戻ったけど、ずっとどきどきが止まらない。
環ちゃんみたいにかっこよくなりたくて、だんだん伸びた身長と一緒にイメチェンした。
1番かっこいいと思ってもらえるようにって髪色も色々挑戦しているけど、どれもいい反応はない。
守ってくれるって言った…
ベッドに横たわって、さっきまでの環ちゃんを思い出す。
幸せに包まれて眠れる、きっと悪夢を見ても大丈夫。俺の騎士様が守ってくれるから。
その日は思った通りよく眠れた。
夢の中に環ちゃんが出てきて最高だ。
最近使ってたコンシーラーで隈を隠さなくていいくらいに顔色がいい。
「環ちゃんのお陰だなぁ…」
久しぶりに気分がいい。お昼も一緒に食べる約束してるし、放課後もなんて贅沢だなぁ。
環ちゃんは俺の憧れだった、ピンチの時に現れるヒーローだって思ってたけど、本当は騎士様だった。
「ふふ、俺の騎士様…俺だけの…」
鏡には嬉しそうに笑う赤面の俺が映っている。
櫛で解かした髪をハーフアップにまとめる。
この髪型は反応が良かった。
登校は約束に入ってないから、1人で学校に向かう。
クラスに着くと親衛隊の1人が、ちらちらと見てくる。視線が鬱陶しい、言いたいことがあるなら言いにくればいいのに。
親衛隊に依存してたのは、俺を必要としてくれてたから。
若松を構っていたのは、初対面で多数と関係を持つのは不誠実だと、どの口が言っているんだと思ったし、その超ポジティブ思考が面白かったから。
でももう要らない。
俺のトラウマ、4人兄弟の末っ子。全てがお下がり、俺だけのものなんてなかった。
俺自身すら俺のものじゃなくて父親のものだった。
幼い頃、神の子と言われるほどIQが高く、父親の事業を手伝っていた。そのため誘拐もされたが父親は俺を息子として救ったのではない。会社のコンピュータの1つとして救った。
労りの言葉なんてなかったが、ずっと期待していた。出来るのは俺だけ、これは父親の為、出来たらきっと褒めてくれる。
でも実際は家族の一員とすら認識されてなく、家族旅行は留守番して仕事をしていた。
そんな子供時代を過ごし、誘拐されるのが面倒だ、パソコンがあればどこでもいいだろう。
それくらいしか役に立たないだろう。まともに話もしない西條の恥め。
そう言われて送り込まれた学園は、俺にとって未知の世界だった。
ささやかな反抗で試験の点数を調整してAクラスをキープ。
だけど環ちゃんに会えたんだから、やっぱり感謝かな。
「早くお昼にならないかなぁ」
今日は空が綺麗に見える。
本人は知らないだろう、1度救われたことがあることを……
中等部、まだ俺がダサい男だった時。俺の陰口を叩いていた先輩たちを不愉快だと一蹴した環ちゃんは、凛としてすっごくかっこよかった。しかもそのあと逆上した先輩に襲われそうになっていたのを投げ飛ばした姿、今でも覚えてる。
半袖から伸びるしなやかな腕、捻りの効いた腰、一体どこにそんな力があるんだろうと思った。
ハグをしてくれた今日、そのあとは自分の部屋に戻ったけど、ずっとどきどきが止まらない。
環ちゃんみたいにかっこよくなりたくて、だんだん伸びた身長と一緒にイメチェンした。
1番かっこいいと思ってもらえるようにって髪色も色々挑戦しているけど、どれもいい反応はない。
守ってくれるって言った…
ベッドに横たわって、さっきまでの環ちゃんを思い出す。
幸せに包まれて眠れる、きっと悪夢を見ても大丈夫。俺の騎士様が守ってくれるから。
その日は思った通りよく眠れた。
夢の中に環ちゃんが出てきて最高だ。
最近使ってたコンシーラーで隈を隠さなくていいくらいに顔色がいい。
「環ちゃんのお陰だなぁ…」
久しぶりに気分がいい。お昼も一緒に食べる約束してるし、放課後もなんて贅沢だなぁ。
環ちゃんは俺の憧れだった、ピンチの時に現れるヒーローだって思ってたけど、本当は騎士様だった。
「ふふ、俺の騎士様…俺だけの…」
鏡には嬉しそうに笑う赤面の俺が映っている。
櫛で解かした髪をハーフアップにまとめる。
この髪型は反応が良かった。
登校は約束に入ってないから、1人で学校に向かう。
クラスに着くと親衛隊の1人が、ちらちらと見てくる。視線が鬱陶しい、言いたいことがあるなら言いにくればいいのに。
親衛隊に依存してたのは、俺を必要としてくれてたから。
若松を構っていたのは、初対面で多数と関係を持つのは不誠実だと、どの口が言っているんだと思ったし、その超ポジティブ思考が面白かったから。
でももう要らない。
俺のトラウマ、4人兄弟の末っ子。全てがお下がり、俺だけのものなんてなかった。
俺自身すら俺のものじゃなくて父親のものだった。
幼い頃、神の子と言われるほどIQが高く、父親の事業を手伝っていた。そのため誘拐もされたが父親は俺を息子として救ったのではない。会社のコンピュータの1つとして救った。
労りの言葉なんてなかったが、ずっと期待していた。出来るのは俺だけ、これは父親の為、出来たらきっと褒めてくれる。
でも実際は家族の一員とすら認識されてなく、家族旅行は留守番して仕事をしていた。
そんな子供時代を過ごし、誘拐されるのが面倒だ、パソコンがあればどこでもいいだろう。
それくらいしか役に立たないだろう。まともに話もしない西條の恥め。
そう言われて送り込まれた学園は、俺にとって未知の世界だった。
ささやかな反抗で試験の点数を調整してAクラスをキープ。
だけど環ちゃんに会えたんだから、やっぱり感謝かな。
「早くお昼にならないかなぁ」
今日は空が綺麗に見える。
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