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34話

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聞き取れるが、声量を抑えて話し始める西條の言葉に耳を傾ける。


「俺さー親に期待してたの。言われたことこなしたら俺のこと褒めてくれる、愛してくれるって……でもそうじゃなかった。だから学園にいるうちでも俺を愛してくれる人が欲しくて、親衛隊に依存してた。
 それで、お仕事しなくなったら怒られちゃって、監視まで送ってくるし……寝不足はそれもあるけど、寝るの怖くなったんだ……寝ても覚めても怒鳴られてる。出来損ない、西條の恥、その通りだけどねー。」


哀愁帯びた顔をすぐにいつものへらっとした笑顔にした西條。これはこいつのSOSだろう。

西條家の内情を初めて知ったが、虐待疑惑が浮上するとは…随分な教育だな。
仕事内容を詳しくは聞かないが、子供に強要する仕事ってなんだよ。胸糞悪いな。

「お前の親が何をほざいているかは知らないが、生徒会からの書類で、会計としての仕事の丁寧さを風紀は知っている。気づいたのは目黒だ。わかりやすくまとめられてて、毎回確認がしやすいって喜んでるぞ。」

「環ちゃんが?そんな素振り全く……」

初耳だろうな。風紀役員の間では知られているが、基本的に温厚な目黒だが気を許していない奴には無駄な会話すらない。仕事の鬼だな。

懐かれている俺としてはちょっと自慢したくなるものだが、今言うと逆効果だからな。

「それに、機械のことで困ったら助けてくれてるだろう?頼らせてもらっていた。」

「何それ…仲神の弱点だもんねー機械って。ふふ、おじいちゃんじゃん。」

気が緩んできたな、自然に笑えるようになってきている。
そんな西條の様子をみて、俺も自然と口元が緩む。

「聞いてもいいか?監視って一体どう言うことだ。」

監視を送ってきたと言っていたが、この様子だと最近知ったんだろう。学園関係者で新しく起用された人物はいないはず、となると生徒として入学したと言うこと…1年か?

「今更遠慮した物言いしないでよ、教えるから。…監視役は専務の息子だってさ、今年入学してきたCクラスの立花たちばな勇実いさみってやつ。若松と仲良くしてた時に接触してきてね。」

「脅されたのか。」

「んーまあ簡単に言うとそうかな。俺のトラウマまで持ち出して、ちょっと心やられちゃった。」

微かに震えているのを悟られないよう、気丈に話しているが、気づいてしまった。
泣きそうな顔を隠すように顔を逸らす西條をみて心が痛む。

立花勇実だな、後で目黒と青山に探ってもらおう。

「西條、親衛隊とも距離を置いているみたいだが……それじゃ悪化するだろ。対策を練らなくてはな。」

依存していたと本人が言うほどだ。その関係を絶っている今、ストレスが溜まる一方だろう。

こいつも人に頼るというのが苦手というか、頼ってはいけないと思っているんだろうな。
親衛隊のやつらはこぞって甘やかされたお坊ちゃんだ。西條の本質は甘やかされたがりだろう、合っていなかったな。

甘やかす……

「なぁ、目黒とかどうだ。あいつは世話焼きだし。お前懐いてるだろ?」

目黒のことちゃん付けで呼んでるの西條くらいだ。

「……仲神と似てるよね、世話焼き気質。風紀委員長って代々そういう性格になるの?」

呆れたと言いたげな表情でため息を吐く西條に再度提案する。

「とにかく、話してみるだけでもどうだ?目黒は聞き上手だし、思いもよらない解決策を提案してくれたりする。相談相手にはもってこいだ。」

「知ってるよ……考えとく。」

「それなら今お悩み相談室始めましょうか?」

前向きに検討するつもりだろう?すっきりした顔で西條が返事をした時、話に出ていた目黒が俺の背後から声をかけてきた。

ドアの開閉音、聞こえなかったんだが?
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