上 下
15 / 93

12話

しおりを挟む

運動場に設営した風紀のテントに辿り着くと、常在している委員と休憩中の委員、その中に目黒の姿があった。


「委員長?どうしてそんなに慌てて……もしかして襲われたとか?!」

「おい、なんでちょっと嬉しそうなんだ。」


嬉々として聞いてくる目黒だが、お前そんなキャラだったか?

「すみません。で?走って戻ってくるなんて、実際何かありました?」

机に置いてあったペットボトルを渡してくれる目黒が、口元を押さえながら、つい願望が…なんて小声で言っているのが聞こえた。


お前の願望って俺が襲われることなのか?


信頼している副委員長に、もしかしたら恨まれているのかもしれないと内心びくびくしながらも、渡されたお茶で口の中を潤す。

一息つくと、さっきあったことを掻い摘んで目黒に報告する。キスのことは絶対言わない。犬に噛まれたと思うことにする。


「会長が……」

そう呟いた目黒は手で目を覆い天を仰いだ。


「俺のことはもういい、それより何も問題はなかったか?」

思考が何処かに行っている目黒を引き戻し、尚且つ話題を逸らすために問いかける。

「ああはい、怪我もなく順調ですよ。今バスケのブロック決勝が行われているそうです。」

目から手を離してこっちを向き、現状を報告してくれた。


バスケがブロック決勝か…この調子なら時間通りに決勝まで進みそうだな。
チラッと視線を移したのはテントに設置したホワイトボード。
トーナメント表が貼られており、その横に終了時間目安として、12時まで!と大きく書かれている。

この表を見ながら、負けた者の把握や勝ち進んでいる者が試合に遅れないように目配りする。


「ドッジボールの方はどうだ?」

「それは俺から。Sクラスが粘っているらしくて、他の試合が遅れている。」

挙手をして報告をする、茶色の短髪の男。
3年風紀の青山あおやま虎徹こてつ。会計を担っている、みんなの頼れる兄貴みたいなやつ。
実際、後輩から慕われていてきゃあきゃあ騒がれると、その男前な顔を困ったように顰めているものだ。

Sクラスって…若松くんがドッジボールのチームに加入したって聞いたけど、まさかな。


「あ、委員長。それ例の転入生が色々やってるらしいですよ。」
「俺のとこにも報告あった、いちゃもんつけてるとかって険悪なムードで試合してるらしいぞ。」

……なんでこう問題を起こすんだ。

「いちゃもんは解決したのか?」

報告をしてくれた青山に確認を取る。

「いや、若松の言い分は相手チームが外野から戻ってきたとか。」
「……ルール説明したよな?」
「したねぇ、内野を倒したら外野は復帰ありって。」

お互いに目を合わせて大きなため息をつく。
困ったものだな。


「委員長!!!」

「ん?お帰り蜂須賀。」


般若の顔で見回りから戻ってきた蜂須賀が、殺気を纏い俺に近づいてくる。

少し機嫌が悪いのだろうと特に気にせずいつも通りに接した。原因が俺だと知らずに。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

笑わない風紀委員長

馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。 が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。 そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め── ※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。 ※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。 ※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。 ※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

平凡くんの憂鬱

BL
浮気ばかりする恋人を振ってから俺の憂鬱は始まった…。 ――――――‥ ――… もう、うんざりしていた。 俺は所謂、"平凡"ってヤツで、付き合っていた恋人はまるで王子様。向こうから告ってきたとは言え、外見上 釣り合わないとは思ってたけど… こうも、 堂々と恋人の前で浮気ばかり繰り返されたら、いい加減 百年の恋も冷めるというもの- 『別れてください』 だから、俺から別れを切り出した。 それから、 俺の憂鬱な日常は始まった――…。

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

だから振り向いて

黒猫鈴
BL
生徒会長×生徒会副会長 王道学園の王道転校生に惚れる生徒会長にもやもやしながら怪我の手当をする副会長主人公の話 これも移動してきた作品です。 さくっと読める話です。

モブ男子ですが、生徒会長の一軍イケメンに捕まったもんで

天災
BL
 モブ男子なのに…

転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが

松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。 ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。 あの日までは。 気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。 (無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!) その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。 元日本人女性の異世界生活は如何に? ※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。 5月23日から毎日、昼12時更新します。

その空を映して

hamapito
BL
 ――お迎えにあがりました。マイプリンセス。  柔らかな夏前の風に乗って落とされた声。目の前で跪いているのは、俺の手をとっているのは……あの『陸上界のプリンス』――朝見凛だった。 過去のある出来事により走高跳を辞めてしまった遼平。高校でも陸上部に入ったものの、今までのような「上を目指す」空気は感じられない。これでよかったのだと自分を納得させていた遼平だったが、五年前に姿を消したはずの『陸上界のプリンス』朝見凛が現れて――? ※表紙絵ははじめさま(https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/830680097)よりいただいております。

処理中です...