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4話

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「委員長!あいつをブラックリストに入れてください!!」



転入生が来てから1週間が経過した。
しかし、その間あいつは問題ばかりを起こしたのだ。

ここ数日の頭痛の種。
頭を押さえながら、訴えてきた2年風紀委員、蜂須賀はちすか流星りゅうせいと目を合わせる。


「今度は何をしたんだ。」


1週間で起こした問題。
特定の相手を作らないことも親衛隊から慕われていた生徒会役員がこぞってお気に入り認定したのだ。

その事で各親衛隊が転入生を呼び出し、お話し合いをした。
何を思ったのか転入生は親衛隊にいじめられたと役員たちに報告。
慕っている相手から軽蔑の眼で見られた親衛隊は絶望顔で風紀に訴えてきた。

他にも。
一般食堂と役員食堂に分かれているのにも関わらず役員食堂を使用する。

部外者立ち入り禁止の生徒会室に入り浸る。

何をする、何処へ行くも生徒会の誰かと行動を共にするため誰も手を出せない。

だから風紀に苦情が集まるという訳だ。

_______

「蛍様、俺もう嫌っす。あいつ何言っても聞かないっすもん。」



そんなときに矢面に立たされるのが2年風紀委員の書記を担う、蜂須賀流星だ。
目黒から言葉巧みに頼み事をされ、意気揚々と挑み、事を解決するのが、2年風紀コンビの常套手段だった。
……転入生には形なしだったみたいだ。


「よしよし、そう落ち込むな。」


ブラックリスト問題児なのに、俺の前ではどうも犬みたいだな。

俺の机に両手を置いて覗き込むように座り込み、半泣きで俺に訴えかけてくる可愛い後輩。

その触り心地のいい金髪を撫でながら、落ち着かせる。

校内では委員長と呼ぶと自分で宣言していたが、名前を呼ぶほど参っているなんてな。


「蛍様……もっと撫でてくださいっす。」

「甘えん坊だな、何があったか話してみろ。」


弟を思い出させる蜂須賀に、どうも俺は弱いらしい。素直に慕ってくれる可愛い後輩にはなるべく誠実に対応したい。


「目黒と俺が今度はターゲットみたいっす……」


ぽそぽそと話し始めた言葉に耳を傾けて、相槌をして続きを促す。


「生徒会のやつから聞いたのか、俺が反抗してた時期のことまで言ってきて、知りもしないくせに、俺は流星の味方だ、とか。
 気持ちわかるよ、とか言って、絡んできて……俺のこと救ってくれたのは蛍様です。そしたらあいつ蛍様のこと悪く言い始めて、俺カッとなって……」


気まずくなったのか、ひょっこり出ていた頭はみるみる下がっていき、椅子に座ったままの俺からは見えなくなった。

机の端を握ったままの蜂須賀の手を覆い、努めて優しい声音で話しかける。


「流星、手を出さなかったんだろう?偉いぞ。目黒からの報告では誰も怪我をしていない、蹴られたゴミ箱が凹んだだけと聞いている。」

「でも俺、蛍様に迷惑かけて…しまいました。」

「このくらい迷惑でもなんでもない、俺のことで怒ってくれたんだろう?それよりお前、そのあと2年から遠巻きにされてるそうじゃないか。」

「どうでもいいっす、慣れてるんで……」


慣れていると言った蜂須賀の声は、諦めや寂しさを我慢しているものだった。
孤独に慣れるなんてあってはいけない。

目黒の報告からは2年の生徒会役員が蜂須賀を避けるようになり、巻き込まれないように周りがそれを倣ったとのこと。

そろそろ懲らしめないとな。


「よし、京本に状況説明をしてもらいに行く。蜂須賀は落ち着くまでここにいなさい。寮の方がいいか?」


椅子を離れ、座り込んでいる蜂須賀の肩に手を置き問いかける。

「蛍様のとこでお泊りしたいです。」

赤くなった目で真っ直ぐこちらを見つめ、伺う蜂須賀。クゥーンと幻聴がするし、なんなら耳と尻尾も見える。


「わかった。鍵を渡しておくから先に帰ってろ。すぐに済む、いい子に待ってろよ。」

「っ!はい!待ってるっす!」

首が取れるのではというくらいに頭を縦に振る破顔の蜂須賀。

つくづく身内に甘いな俺は。
そんなやり取りの後、風紀委員会の執務室から離れた生徒会室へと足早に向かう。

ついでに親睦会の各委員提出書を持って。
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