【R18】傲慢な王子

やまたろう

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第四章 皇子の狂愛  サイラス feat ラグランド

それぞれの未来

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 倒れたサイラスは特別治療室に寝かせて、この国の宰相へ事情を説明して後は任せる事になった。


 ナターシャ王女とサイラスは実際には婚約を交わしておらず、王と王妃、王女に制圧を掛けて正式な婚約者と思わせていた。一連の婚約騒動は宰相や閣僚は詳細を知らされず、王命で解消の手続きを執り行ったらしい。


 目が覚めたサイラスは、以前の傲岸不遜な彼では無く、おどおどした軟弱な男になっており、そもそも王女の婚約者でも何でもない為、体力が回復次第、帝国へ送還すると報告があった。


 ナターシャ王女については、本人が強く希望した為、遠方の地でしばらく療養をする事になりそうだ。


 婚約解消に伴う諸々が落ち着いたので帰国する事になった私は、帰国前にロランやジャスティンと会い、今回の件やそれぞれの未来の事を話し合っていた。


「後二年足らずで私は即位して王になる、その後にダルトンの職を解いて臣籍降下させ公爵にするつもりだ。 そうなったら戻って来い、ジャスティン。
いずれジャックの跡を継いで宰相となり、ランバートの家督を継いだキースと、グリード、ロランと四人で一緒に私を支えてくれ」


「そんなに簡単には戻れませんよ」


 そうしたい気持ちは有っても自分とグレースは死んだ事になっているのだ、簡単な事では無い。


「産まれた時に、隣国に養子に出されたジャスティンの双子のジャスが、実子としてシーリーの籍に入り、妻のスーと一緒に戻って来た事にすれば良い、楽園の恋人の生まれ変わりとして、今度は奇跡の二人と言われるさ、カークとジャックに任せればまた上手くやってくれるよ」


「・・・・・」
「・・・・・」


 メイヴィスの提案に、ジャスティンとロランは眼を見張り、良くそんな事を思い付いて、他人を振り回せるなと呆れた、そして父親達の過去の悪巧みも知られてる。


「もう直ぐダルトンに子供が産まれる、私に良く似た男の子だ。いずれその子が私の後を継ぐ、それまでに国をもっと良くして渡してやりたい、その為にお前達の力を貸して欲しい」


「メイヴィス殿下、産まれるのは半年以上先ですよ、何故そんな事が分かるのですか?」


 ロランが不審な顔で質問する。


「恐らく雷帝の力の影響だろうが、時々見えるのだよ、見たいと願うものは見えないが、神の悪戯か不意に見える事が有る、驚くほど私に似ている子が産まれて成長する姿とか、その子を見るダルトンの幸せな顔とかね」


 メイヴィスは遠くを眺めるように眼を細めて柔らかく微笑む。


 ジャスティンとロランの頭の中に、サイラスを処罰した時の彼の美しい姿が浮かんだ。
 やはりこの人は、人ならざる者、何か神々しい別の存在なのではないかと、改めて思わされた。




 ◆◇◆◇◆◇




 その後、予見通りにダルトンにはメイヴィスそっくりの男の子、ヴィクターが生まれた。出産後に妻を亡くしたダルトンは息子を育てる事に重きを置き、職を辞して臣籍降下をする。


 メイヴィスの即位式と婚姻式は予定通り執り行われて王国内が落ち着いた頃、市井では奇跡の二人がいると密かに囁かれ始めた。悲劇から生まれた奇跡の二人として演劇の演目になり、またしても大人気を博す。


 演劇業界では、国王夫妻の運命の恋人も演目化したいと許可を願い出ているが、残念な事に国王は、二人の大切な思い出だからと拒否している。


 ラグランド王国は新国王の統治に変わり、前王の頃よりも益々穏やかで平和な国となって王国民も安心して暮らしている。彼らは知らないが四つの侯爵家が王と国を陰で支えていた。


 知略の青) ジャスティン・シーリー
 友愛の金) キース・ランバート
 武力の赤) グリード・ベルクマン
 制圧の緑) ロラン・セローニャ


 新国王 メイヴィス・ジーク・ラグランド

 彼は黄金の賢王と呼ばれ、王国民から慕われて愛されている。


                  ー 完 ー
                 







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