【R18】傲慢な王子

やまたろ

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番外編 王太子は濃密  メイヴィス×周囲の人々

愛しい異母弟ダルトン

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 ダルトンは何をしても可愛いし愛しい、私にはそうとしか思えない。


 横に眠るダルトンの顔には涙の跡が薄っすらと残っている。メイヴィスは親指の腹でそっと頬を撫でる、子供の頃とそう変わらない滑らかな肌だった。


 眠るダルトンの眉や頬に鼻筋から唇に指を這わせる。記憶の中にある幼いダルトンと比較してその成長を感慨深く思う。


 こうして一つの寝台で眠るのは、いつ振りだろう。子供の頃はよくお互いを抱きしめて眠っていた。私の可愛いダルトン、お前が望む事は出来る限り叶えよう。


 ダルトンがメイヴィスの持つ色を好きなように、メイヴィスはダルトンの持つ色が好きだった。ダルトンの輝く星を散りばめた夜空のような瞳は美しく、ずっと見ていたい程だ。


 なのに弟の色を持つ子供が生まれないと知ってメイヴィスは切なくなり、ダルトンの青みがかった黒髪を撫でる。もう彼で終わりなのだ、この美しい弟の血を受け継ぐ子は出来ないのだ。それを実感すると益々ダルトンが愛しくなる。


 メイヴィスも何故こんなにダルトンが好きなのか自分でも分からない。ただダルトンと自分は表裏一体、対になる存在な気がしている。
 

 太陽の自分・夜のダルトン、光と影。


 一つの魂が二つに分かれて、メイヴィスとダルトンを形作ったような、何か魂の片割れのような、もやる感覚がある。


「ダルトンお前が望むなら、私をお前に与えよう、お前の子供が見たかったよ」


 眠るダルトンの額にコツッと自分の額を合わせる。子供の頃はよくこうして眠っていた。彼の穏やかな寝息を聴いて、私も眠りに落ちる。




 ◆◇◆◇◆◇




 目覚めたダルトンは目の前にある、大好きな兄の顔を眺めていた。黄金色の柔らかな髪はくせ毛で緩やかなウェーブが顔を飾る、大好きな琥珀色の瞳は閉じられたままだ。


 ダルトンは久しぶりに間近で見る兄の寝顔が嬉しくて兄の鼻を摘んでみた、少し息苦しかったのか、メイヴィスの眉間に皺が寄る、直ぐに手を離して今度は指で眉間をなぞる。


 ダルトンは自分の顔が美しい事は知っている、周りがそう言うからだ、だがダルトン自身が一番美しいと思うのは兄の顔だった、メイヴィスはダルトンにとって太陽であり、愛しいと思う全てだった。


 幼い頃は離宮で一人、使用人達と暮らしていた。母の顔は覚えておらず、何となく自分が大切にされていない事は気付いていた。3つ年上の兄がいるのは知っていたが、会った時の記憶は無かった。


 使用人達から蔑まれ嫌がらせを受ける日々の中、突然兄上が僕を迎えに来た。


 僕の兄上はびっくりする程綺麗な人だった。黄金色の髪に琥珀色の瞳、まるで太陽の化身みたいで僕とは正反対の色を持っていた。僕は自分と同じ大きさの枕をぎゅっと抱きしめて、兄上に見惚れてた。


 その日から兄上の居室で寝泊まりして、学習も食事も湯浴みも一緒にして、夜は兄上に抱きしめられて一緒の寝台で眠った。兄上の鼓動を聞いた僕は今まで感じた事のない安心感に包まれた。 


 使用人達の態度も離宮とは全然違う、不快な大人はいつの間にか、居なくなっていた。そして兄上はいつも優しく愛情を注いでくれて、僕を護ってくれた。僕はいつしか兄上が大好きになっていた。


 出来るなら兄上の体の一部になりたい。
 体は邪魔で魂を融合させて一つになりたい。


 この世で一番好きな音は、兄上の鼓動の音
 この世で一番安心出来るのは、兄上の腕の中


 ダルトンはメイヴィスの胸に持たれて、その鼓動に耳を澄ます、眠りに落ちて身じろぎ一つしなくても、今この瞬間も兄上が生きている証の音。


 トクン、トクン、トクン、トクン・・・


 ダルトンはメイヴィスの腕の中で大好きな音聴いて、再び眠りに落ちた。








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