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第三章 王太子の恋人 メイヴィス×シャーロット
仮面舞踏会 メイヴィス❶
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王宮の大広間で催されている仮面舞踏会には、煌びやかな衣装と凝った趣向のマスクを着けた貴族の紳士淑女達が和やかに談笑して楽しんでいる。
その中で一際、人目を惹く男性がいた。漆黒の髪はさらさらで肩下まで垂らし、藍色に金色のラメが入ったマスクをしている。体付きからまだ若く、マスク越しでも端正な顔立ちと分かる。
素敵な恋や、一晩の夢などを求めている女性から熱い視線を浴びている。しかし彼はそんな女性たちには目もくれず、誰かを探している様だった。
『はぁ、こんなに人が多くては、見つけ切れないな、』
地毛が特徴的な金色で目立ち易い為、今日のメイヴィスは、漆黒の髪の鬘を被っている、彼は王妃命令で婚約者との関係を改善する為、黄色のドレスをきた彼女を探していた。
そんなメイヴィスに、薄紫色の長い髪に、羽毛で天使の羽根を模したマスク、宝石のついたリボンで首を飾っている女性が近づいて来た。
「こんばんは、太陽の貴方。どなたかお探しですか?」
「やあ、黄色い可憐な花を見掛けなかったかな?、妖精さん」
声をかけてきたのは女装したイオニスで彼は会場に潜んで、招待客の様子を観察している。女装は完全なる趣味だが、密偵として動く事が多い彼の役に立っている。
「例の件は実務隊がいま別邸を捜査中で、僕は会場で当主の動向を監視中、何か動きが有れば報告するね」
にこやかに話すイオニスは何処から見ても可憐な令嬢に見える。
「分かった。で、シャーロット嬢を見掛けなかったか?」
「仮面越しだから絶対じゃ無いけど、テラスで見たような?・・・・・・」
私はイオニスに礼を言って教えて貰ったテラスに向かった。果たしてそこには黄色のドレスの女性が立っていた。
「どうしよう・・・」
不安そうに彼女が呟いていたので、取り敢えず私は、背後から話しかけてみた。
「レディ、どうかされましたか?」
「!!」
突然話しかけられて驚いたのか、彼女の体が面白いほど跳ねた。びっくりした猫のようで不謹慎だが面白くて、私はちょっと笑ってしまった。
「ぷっくくっ、驚かせてしまった様で申し訳ない、悩みがお有りのようですが、良ければ少し話をしませんか?」
振り向いた彼女は、私を見て驚いた顔をして、言葉が出てこないのか、少し口を開いたまま固まっている。
「レディ、もし私の正体が分かっても、貴女の胸に秘めて下さい、貴女も私も今日は誰でもない、何にも縛られない、ただの男と女なのですから」
「は、は、は、はい!」
勢い込んで吃っている、私は思わず笑みが溢れた、どうやら私の婚約者は可愛らしい人のようだ。
「それで悩み事は何ですか?」
彼女は言いにくそうに下をむくと、ぽつんと呟いた。
「何だか場違いな気がして、落ち着かないんです、まるで自分が迷子になっているみたいで・・・」
心細そうに呟いたその言葉で、メイヴィスは気付いた。婚約者は聖女として神殿にいたので、舞踏会の経験が殆ど無かったこと、そんな彼女にとってこの仮面舞踏会はさぞかし居心地が悪かっただろう事に。
「貴女さえ良ければ、ここを抜け出して庭園の散策に行きませんか?」
メイヴィスはテラスに避難していた婚約者に別の避難場所を提案してみた。
「はい」
ほっとしたのか、仮面越しでも分かる満面の笑顔で彼女が答える。彼女をエスコートして大広間から出かけた時、給仕がぶつかりそうになり、持っていたワインが彼女にかかった。
「きゃあ!」
「申し訳ありません」
私は彼女を王族用の特別室へ案内した後メイドを呼び、染み抜きと軽食を頼む。幸いにも浴びたのは白ワインで対応も早かったので、ドレスに目立つシミは無かった。
彼女が落ち着いた頃に、私は部屋に用意されていた赤ワインの封を切りグラスに注ぐ、それを彼女に渡しソファーに座るよう勧めた。
「色々と、有難うございます」
恥じらうように顔を赤くした彼女は先程とは違い、髪を耳の後ろにかけて両耳を出していた。片耳だけ耳飾りを付けている、私は妙にそれが気になる。
「どうして片耳だけ耳飾りをつけているのかな?」
「これは母の形見なんです、大切にしていたのですが、数年前に片方を紛失してしまいまして、それで片方だけなんです」
彼女は照れながら、ちびちびワインを飲んでいる。
「素敵な耳飾りだね、少し近くで見せてもらえるかな?」
私はその耳飾りに見覚えがあり、じっくり確かめてたくて、反対側に座っていた彼女に近づく。彼女は焦って動揺しているが、私も譲れない。彼女の右隣りに座りそれを細かく確認し始める。
「え、え、えっ、」
「これは何処で手に入れたか教えて貰えるかな?、私も欲しいのだけれど」
近すぎる私に動揺する彼女は2杯目のワインを一気飲みしている。
「何処かは分かりませんが、オーダーメイドの一点ものです、同じ物は無いので手に入れるのは難しいです」
「同じ物が無い・・・」
その言葉の意味を理解した私は、仮面越しに彼女をまじまじと見たら、彼女は様子がおかしかった。顔を赤らめ、呼吸が少し荒くなっていて小刻みに震えてるような・・・?
「レディ、もしかして体調が悪くなったのかな?、もしそうなら寝台で休むといい」
声を掛けたが上の空で、両腕で自分を抱きしめて前屈みになり、頭を膝に付けて小刻みに震えている。私は丸まった彼女の背中にそっと触れ声をかける。
「レディ?」
「ひゃっぁあ」
少し触れただけなのに、まるで感電したかのような反応だ、ワインを飲んだだけにしては様子がおかしい、私は残ったワインを少し口に含んでみた、後味が甘く舌が痺れるような味がした。
ここはメイヴィスが予約をしている王族だけが使える部屋だ、不審者が何かの工作をするのは無理が有る。
まさか、グレーシーが媚薬を?
婚約者は息が更に荒くなり肌が赤く染まっている、恐らく今回はひと瓶丸ごと媚薬が入っていたのだろう、それを彼女は2杯も飲んでいる、今体が敏感になり過ぎて少しの刺激でも辛そうだ。
・・・・・・これは、どうしたものかな・・・・・・
メイヴィスは予想もしていなかった事態に困惑していた。
その中で一際、人目を惹く男性がいた。漆黒の髪はさらさらで肩下まで垂らし、藍色に金色のラメが入ったマスクをしている。体付きからまだ若く、マスク越しでも端正な顔立ちと分かる。
素敵な恋や、一晩の夢などを求めている女性から熱い視線を浴びている。しかし彼はそんな女性たちには目もくれず、誰かを探している様だった。
『はぁ、こんなに人が多くては、見つけ切れないな、』
地毛が特徴的な金色で目立ち易い為、今日のメイヴィスは、漆黒の髪の鬘を被っている、彼は王妃命令で婚約者との関係を改善する為、黄色のドレスをきた彼女を探していた。
そんなメイヴィスに、薄紫色の長い髪に、羽毛で天使の羽根を模したマスク、宝石のついたリボンで首を飾っている女性が近づいて来た。
「こんばんは、太陽の貴方。どなたかお探しですか?」
「やあ、黄色い可憐な花を見掛けなかったかな?、妖精さん」
声をかけてきたのは女装したイオニスで彼は会場に潜んで、招待客の様子を観察している。女装は完全なる趣味だが、密偵として動く事が多い彼の役に立っている。
「例の件は実務隊がいま別邸を捜査中で、僕は会場で当主の動向を監視中、何か動きが有れば報告するね」
にこやかに話すイオニスは何処から見ても可憐な令嬢に見える。
「分かった。で、シャーロット嬢を見掛けなかったか?」
「仮面越しだから絶対じゃ無いけど、テラスで見たような?・・・・・・」
私はイオニスに礼を言って教えて貰ったテラスに向かった。果たしてそこには黄色のドレスの女性が立っていた。
「どうしよう・・・」
不安そうに彼女が呟いていたので、取り敢えず私は、背後から話しかけてみた。
「レディ、どうかされましたか?」
「!!」
突然話しかけられて驚いたのか、彼女の体が面白いほど跳ねた。びっくりした猫のようで不謹慎だが面白くて、私はちょっと笑ってしまった。
「ぷっくくっ、驚かせてしまった様で申し訳ない、悩みがお有りのようですが、良ければ少し話をしませんか?」
振り向いた彼女は、私を見て驚いた顔をして、言葉が出てこないのか、少し口を開いたまま固まっている。
「レディ、もし私の正体が分かっても、貴女の胸に秘めて下さい、貴女も私も今日は誰でもない、何にも縛られない、ただの男と女なのですから」
「は、は、は、はい!」
勢い込んで吃っている、私は思わず笑みが溢れた、どうやら私の婚約者は可愛らしい人のようだ。
「それで悩み事は何ですか?」
彼女は言いにくそうに下をむくと、ぽつんと呟いた。
「何だか場違いな気がして、落ち着かないんです、まるで自分が迷子になっているみたいで・・・」
心細そうに呟いたその言葉で、メイヴィスは気付いた。婚約者は聖女として神殿にいたので、舞踏会の経験が殆ど無かったこと、そんな彼女にとってこの仮面舞踏会はさぞかし居心地が悪かっただろう事に。
「貴女さえ良ければ、ここを抜け出して庭園の散策に行きませんか?」
メイヴィスはテラスに避難していた婚約者に別の避難場所を提案してみた。
「はい」
ほっとしたのか、仮面越しでも分かる満面の笑顔で彼女が答える。彼女をエスコートして大広間から出かけた時、給仕がぶつかりそうになり、持っていたワインが彼女にかかった。
「きゃあ!」
「申し訳ありません」
私は彼女を王族用の特別室へ案内した後メイドを呼び、染み抜きと軽食を頼む。幸いにも浴びたのは白ワインで対応も早かったので、ドレスに目立つシミは無かった。
彼女が落ち着いた頃に、私は部屋に用意されていた赤ワインの封を切りグラスに注ぐ、それを彼女に渡しソファーに座るよう勧めた。
「色々と、有難うございます」
恥じらうように顔を赤くした彼女は先程とは違い、髪を耳の後ろにかけて両耳を出していた。片耳だけ耳飾りを付けている、私は妙にそれが気になる。
「どうして片耳だけ耳飾りをつけているのかな?」
「これは母の形見なんです、大切にしていたのですが、数年前に片方を紛失してしまいまして、それで片方だけなんです」
彼女は照れながら、ちびちびワインを飲んでいる。
「素敵な耳飾りだね、少し近くで見せてもらえるかな?」
私はその耳飾りに見覚えがあり、じっくり確かめてたくて、反対側に座っていた彼女に近づく。彼女は焦って動揺しているが、私も譲れない。彼女の右隣りに座りそれを細かく確認し始める。
「え、え、えっ、」
「これは何処で手に入れたか教えて貰えるかな?、私も欲しいのだけれど」
近すぎる私に動揺する彼女は2杯目のワインを一気飲みしている。
「何処かは分かりませんが、オーダーメイドの一点ものです、同じ物は無いので手に入れるのは難しいです」
「同じ物が無い・・・」
その言葉の意味を理解した私は、仮面越しに彼女をまじまじと見たら、彼女は様子がおかしかった。顔を赤らめ、呼吸が少し荒くなっていて小刻みに震えてるような・・・?
「レディ、もしかして体調が悪くなったのかな?、もしそうなら寝台で休むといい」
声を掛けたが上の空で、両腕で自分を抱きしめて前屈みになり、頭を膝に付けて小刻みに震えている。私は丸まった彼女の背中にそっと触れ声をかける。
「レディ?」
「ひゃっぁあ」
少し触れただけなのに、まるで感電したかのような反応だ、ワインを飲んだだけにしては様子がおかしい、私は残ったワインを少し口に含んでみた、後味が甘く舌が痺れるような味がした。
ここはメイヴィスが予約をしている王族だけが使える部屋だ、不審者が何かの工作をするのは無理が有る。
まさか、グレーシーが媚薬を?
婚約者は息が更に荒くなり肌が赤く染まっている、恐らく今回はひと瓶丸ごと媚薬が入っていたのだろう、それを彼女は2杯も飲んでいる、今体が敏感になり過ぎて少しの刺激でも辛そうだ。
・・・・・・これは、どうしたものかな・・・・・・
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