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令嬢の婚約者は眠っている
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私は、グレース・ランバート。
ランバート侯爵家の長女だ。
今、王城の広い廊下をダルトン第二王子殿下の執務室へと向かって歩いている。
ダルトン殿下とは、側近を務めている婚約者のジャスティンを通して知己を得て以来、友人の一人として接する許可を頂き、親しくさせて貰っている。
殿下は優しい方で、私の事も色々と気遣って下さる。
「やあ、グレース、よく来てくれたね、変わりは無いかな?」
殿下は穏やかな笑顔を浮かべて出迎えてくれた、どうやら執務机の上にある大量の書類の処理をしていた模様だ。
「ダルトン殿下、執務中にお邪魔をして申し訳ありません」
「良いんだグレース、僕が君を呼んだんだから、気にしないで。ジャスティンには早く元気になってもらわないと、このままだと僕は書類の山に埋もれてしまうよ」
ダルトン殿下は青みがかった黒髪に青紺色の瞳の美形で、いまは優しい笑顔を浮かべて、私にソファーを勧めている。
「ジャスティンの様子はどうだい?」
婚約者のジャスティンは、先週、殿下と執務室で紅茶を飲んだ後、急に昏倒し、眠り病を発症して今も意識が戻らず眠ったままだ。
「相変わらず、目覚める様子も無く、眠ったままです」
眠り病は、緩やかな死の病として貴族の間では有名で、目覚め無ければ徐々に体が衰弱して、死に至るのだ。
治療薬は無く、人によって症状の重さが違う、謎の多い病である。
「君は、ジャスティンとの婚約をどう考えているのかな? 解消しないの?」
「そんな事は、考えておりません。私達の婚約は政略的な物でしたが、時間をかけて気持ちを育み、いまではお互いを大切に思っております」
「でも、ジャスティンがこのまま目覚めなかったら、君は父である侯爵から、新たな婚約を結ばされるのではないのかな?」
「私は、彼が目覚めるまで待ちます。彼に万が一の事があれば、私は修道院へ行き、祈りを捧げます」
「・・・・・ふうん、健気だね。思ったより君達の絆が深いな・・・・これは、はっきりさせた方が良いかもね?」
ダルトン殿下が思わせぶりだが、意味の分からない事を呟きながら、席を立ち執務机を回って、私の正面へ移動してきた。
私はソファーから立ち上がり、殿下と向き合う。
殿下はかなり近くまで来て、まるで内緒話をするかの様に顔をよせてきた。
そして、甘える様に鼻先で耳たぶを擦りながら言った。
「ジャスティンとの婚約が解消するまで待ってやろうと思ったんだが、覚えておくと良い、あいつの生死には関係なく、グレース、君は俺の婚約者になり、俺の女になるんだ」
いつも一人称は僕だった殿下が、急に荒ぶり俺と言う、普段の殿下とは別人みたいで、話した内容も含めて違和感と若干の恐れを感じて、距離を取るため下がろうとした。
私の動きを見た殿下は、いきなり覆い被さるようにして、私を腕の中を閉じ込め、両手で私の尻をグッと掴み自分の方へと引き寄せた。
顎を私の肩にのせて、体の前面を密着させ、尻肉をソフトに揉みしきだきながら、私の下腹部に己の昂りを押し付け腰をゆるく動かしてくる。
「ねぇグレース、分かる?、君といると、僕の体はいつもこうなんだ・・・グレース・・・君が欲しい・・・」
あからさまな殿下の行動に驚き、私の顔は赤くなるが、側近、しかも友人として長く付き合ってきたジャスティンの命よりも、自身の欲望を優先する酷薄さに恐怖心が増す。
本当にこれが優しかったダルトン殿下なのか、信じられない、裏切られた気持ちで涙が溢れてきた。
「泣いている君も、美しいね」
ダルトン殿下の顔が近づき、流れた涙を吸い取る様に、目尻に、頬に、唇が触れるキスをしてきた。
「どうか、おやめ下さい、殿下」
抱き寄せられ密着した体の間にある腕で殿下の胸板を推し、引き離す様に突っ張ると、意外とあっさり解放された。
私は、殿下の顔を睨むように見据える。
「ジャスティンは必ず目を覚ますと信じています」
綺麗な顔に魅惑的な微笑みを浮かべた殿下は、天使のごとく美しい。
だが、私の耳たぶを喰みながら、吐息混じりに囁いたのは、悪魔の言葉だった。
「ふふ、どうだろうね? 結構強めの薬を使ったから、目覚め無いまま死んじゃうかも、、ね?」
「!!」
怖気で身体が震えた。
やはりこの男がジャスティンに薬を盛ったのだ!
おかしな状況だと思っていた、疑いはあったが証拠はない。
私は怒りが込み上げてきて、ダルトン殿下を睨むように見つめた。
そして殿下も、私を見つめていた。
私を見つめる殿下の瞳に、情欲がともっている。
・・・・いつからこんな瞳で私を見ていたのだろうか
まさか、私を手に入れる為にこんな事を?
このままでは、ジャスティンは目覚めるどころか、殺されるかもしれない。
「今日はもう帰るといい、グレース、君の気持ちを確認したかっただけだから。でも僕は君を諦めないよ、だから君は諦めて僕のものになって?」
私は、彼と同じ部屋にいる事に耐えられず、退室の挨拶もせずに、執務室を飛び出した。
「またね、グレース、愛してるよ」
扉が閉まる前に、殿下の甘い声が聞こえた。
ランバート侯爵家の長女だ。
今、王城の広い廊下をダルトン第二王子殿下の執務室へと向かって歩いている。
ダルトン殿下とは、側近を務めている婚約者のジャスティンを通して知己を得て以来、友人の一人として接する許可を頂き、親しくさせて貰っている。
殿下は優しい方で、私の事も色々と気遣って下さる。
「やあ、グレース、よく来てくれたね、変わりは無いかな?」
殿下は穏やかな笑顔を浮かべて出迎えてくれた、どうやら執務机の上にある大量の書類の処理をしていた模様だ。
「ダルトン殿下、執務中にお邪魔をして申し訳ありません」
「良いんだグレース、僕が君を呼んだんだから、気にしないで。ジャスティンには早く元気になってもらわないと、このままだと僕は書類の山に埋もれてしまうよ」
ダルトン殿下は青みがかった黒髪に青紺色の瞳の美形で、いまは優しい笑顔を浮かべて、私にソファーを勧めている。
「ジャスティンの様子はどうだい?」
婚約者のジャスティンは、先週、殿下と執務室で紅茶を飲んだ後、急に昏倒し、眠り病を発症して今も意識が戻らず眠ったままだ。
「相変わらず、目覚める様子も無く、眠ったままです」
眠り病は、緩やかな死の病として貴族の間では有名で、目覚め無ければ徐々に体が衰弱して、死に至るのだ。
治療薬は無く、人によって症状の重さが違う、謎の多い病である。
「君は、ジャスティンとの婚約をどう考えているのかな? 解消しないの?」
「そんな事は、考えておりません。私達の婚約は政略的な物でしたが、時間をかけて気持ちを育み、いまではお互いを大切に思っております」
「でも、ジャスティンがこのまま目覚めなかったら、君は父である侯爵から、新たな婚約を結ばされるのではないのかな?」
「私は、彼が目覚めるまで待ちます。彼に万が一の事があれば、私は修道院へ行き、祈りを捧げます」
「・・・・・ふうん、健気だね。思ったより君達の絆が深いな・・・・これは、はっきりさせた方が良いかもね?」
ダルトン殿下が思わせぶりだが、意味の分からない事を呟きながら、席を立ち執務机を回って、私の正面へ移動してきた。
私はソファーから立ち上がり、殿下と向き合う。
殿下はかなり近くまで来て、まるで内緒話をするかの様に顔をよせてきた。
そして、甘える様に鼻先で耳たぶを擦りながら言った。
「ジャスティンとの婚約が解消するまで待ってやろうと思ったんだが、覚えておくと良い、あいつの生死には関係なく、グレース、君は俺の婚約者になり、俺の女になるんだ」
いつも一人称は僕だった殿下が、急に荒ぶり俺と言う、普段の殿下とは別人みたいで、話した内容も含めて違和感と若干の恐れを感じて、距離を取るため下がろうとした。
私の動きを見た殿下は、いきなり覆い被さるようにして、私を腕の中を閉じ込め、両手で私の尻をグッと掴み自分の方へと引き寄せた。
顎を私の肩にのせて、体の前面を密着させ、尻肉をソフトに揉みしきだきながら、私の下腹部に己の昂りを押し付け腰をゆるく動かしてくる。
「ねぇグレース、分かる?、君といると、僕の体はいつもこうなんだ・・・グレース・・・君が欲しい・・・」
あからさまな殿下の行動に驚き、私の顔は赤くなるが、側近、しかも友人として長く付き合ってきたジャスティンの命よりも、自身の欲望を優先する酷薄さに恐怖心が増す。
本当にこれが優しかったダルトン殿下なのか、信じられない、裏切られた気持ちで涙が溢れてきた。
「泣いている君も、美しいね」
ダルトン殿下の顔が近づき、流れた涙を吸い取る様に、目尻に、頬に、唇が触れるキスをしてきた。
「どうか、おやめ下さい、殿下」
抱き寄せられ密着した体の間にある腕で殿下の胸板を推し、引き離す様に突っ張ると、意外とあっさり解放された。
私は、殿下の顔を睨むように見据える。
「ジャスティンは必ず目を覚ますと信じています」
綺麗な顔に魅惑的な微笑みを浮かべた殿下は、天使のごとく美しい。
だが、私の耳たぶを喰みながら、吐息混じりに囁いたのは、悪魔の言葉だった。
「ふふ、どうだろうね? 結構強めの薬を使ったから、目覚め無いまま死んじゃうかも、、ね?」
「!!」
怖気で身体が震えた。
やはりこの男がジャスティンに薬を盛ったのだ!
おかしな状況だと思っていた、疑いはあったが証拠はない。
私は怒りが込み上げてきて、ダルトン殿下を睨むように見つめた。
そして殿下も、私を見つめていた。
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・・・・いつからこんな瞳で私を見ていたのだろうか
まさか、私を手に入れる為にこんな事を?
このままでは、ジャスティンは目覚めるどころか、殺されるかもしれない。
「今日はもう帰るといい、グレース、君の気持ちを確認したかっただけだから。でも僕は君を諦めないよ、だから君は諦めて僕のものになって?」
私は、彼と同じ部屋にいる事に耐えられず、退室の挨拶もせずに、執務室を飛び出した。
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