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王太子の愛情
聖女のお姫様と王子様
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シャーロットとアリーは最後の巡回場所、ザカリー辺境伯のお膝元にある、孤児院と併設された教会に到着した。
ここはメイヴィス達と合流予定の場所でシャーロットは孤児院へ、アリーは教会へ向かった。
メイヴィス達はもう到着済みで、孤児院の子供達と遊んでいた。
メイヴィスは女の子達に囲まれて長椅子に座り絵本を読み聞かせている。
グリードは男の子達に簡単な体術を教えていた。
「・・・・石になったお姫様は呪いが解けて目が覚めると、勇敢な王子様と恋に落ちて、二人は幸せになりました、お終い」
絵本の朗読を終えたメイヴィスの膝の上に子供達が乗って、彼にペタペタ触って色々と質問をしている、メイヴィスは微笑んで子供達を見ている。
丁度部屋に入ってその光景を見たシャーロットは、メイヴィスの慈しむような表情にドキドキする、彼と子供達の邪魔をしない様にそっと部屋の角へ移動した。
「お兄ちゃんも王子様なんでしょ?、お姫様を助けてあげるの?」
「お兄ちゃんのお姫様はどんな人?」
メイヴィスは穏やかに微笑んで子供達の頭を撫でる、シャーロットはその姿に、まだ見ぬ二人の子供と遊ぶ未来のメイヴィスを想像して照れた。
「私のお姫様はね、人々を助ける仕事をしている素敵な女性だよ、王子様はいつも一生懸命に頑張っているお姫様の事が大好きなんだ」
美しい本物の王子様からお姫様との話を聞いた女の子達は、夢物語ではなく本当の恋物語に顔を赤くして ぼうっとメイヴィスを見つめて黙り込む。
ふと部屋の中にシャーロットがいる事に気付いたメイヴィスは、悪戯っ子の笑みを浮かべて『内緒だよ』と子供達に小声で教えた。
「あの聖女様が私のお姫様だ」
それを聞いた女の子達が、わっとシャーロットの所へ走り寄り彼女に抱きつく。
全く会話が聞こえていないシャーロットはいきなり子供達に囲まれて混乱している。
「お姉ちゃんはお姫様なの?」
「ねぇねぇ、王子様の事好きなの?」
「あっ、王子様が助けに来たよ」
「えっ?、えっ?」
「愛しいシャーロット姫、あらゆる危険から私が貴女を護ります」
メイヴィスは困っているシャーロットの側に行くと、お姫様抱っこをして子供達から助け出す。
二人の周りでは子供達が きゃーっきゃーっ 騒いでいる、シャーロットは恥ずかしさで更に混乱する。
「で、で、殿下?、これは一体何がどうなって、えっと重いですから、下ろしてください。」
「重く無い、むしろ軽くて心配になる。やっと逢えたねシャーロット、逢いたかった」
メイヴィスはシャーロットを抱いた状態でクルリと一周回ると、額に ちゅっ と口付ける、周りにいた子供達が、きゃーっと悲鳴を上げる。
シャーロットは恥ずかしさを耐え切れず、真っ赤に熟れた顔を両手で隠した。
絵本をたくさん読んだせいかメイヴィスの王子様度が高くなっている。
教会に移動して治癒を始めるとメイヴィスはシャーロットの直ぐ後ろから覗き込んだ。
自分の顔のすぐ横にあるメイヴィスの顔や近過ぎる身体から感じる熱で、シャーロットは治癒に集中する事が出来ずに、ややきつい声音で注意した。
「殿下、そんなに近くに寄られると緊張して上手く治癒が出来ません、少し離れて下さい」
「そうか、悪かった。君の近くに居たい私の気持ちが溢れ出てしまったようだ、治癒後なら抱き締めても良いかな?」
メイヴィスが悲しそう顔で図々しい事を言う、シャーロットが赤く染まる顔で軽く睨むと、逆にメイヴィスは嬉しそうだ。
シャーロットは彼を放っておく事にして治癒に専念した、これが聖女として最後の巡回治癒なのだ、悔いが残らないよう精一杯やり遂げる。シャーロットは時間ギリギリまで人々を治癒し続けた。
メイヴィスはそんなシャーロットの姿をじっと見つめる、聖女として働くシャーロットは美しかった。
メイヴィスは治癒に集中する彼女に自分を助けてくれた時の姿を重ねる。
ほぼ意識が無かった自分は見る事が出来なかったが、あの時もきっとこんな風に美しかったのだろうと。
人々に献身的に尽くす姿は正に聖女で、メイヴィスは運命の人シャーロットに出逢えた事を心から感謝した、そして・・・・・・
・・・・・もしかすると王子と名のつく存在は運命のお姫様に出会える生き物なのかも知れない・・・・・
子供達にせがまれて何冊も絵本の朗読をしたメイヴィスの頭の中は、夢物語に毒されていた。
最後の巡回治癒を終えた一行は、宿泊の為にザカリー辺境伯の邸へと向かった。
一方、その頃ザカリー邸ではメイヴィスの視察に同行していた監察官によって当主の不正が暴かれて糾弾されていた。
そして今ザカリーは邸の一室に軟禁されて、扉の前には見張りが立っている。
「だが、まだだ。あの男の弱みを握ればこの状況を覆せる、あの妙案が役に立ちそうだ」
ザカリーは執事を通じて情婦のプリシラに手紙で指示を出した、明日王都へ移送されるザカリーの計画を実行する機会は今夜しかない。
・・・・ふふふふ、何だそう云う事ね。上手く行けば今迄通りの暮らしが出来るじゃない、ザカリーも考えたわね・・・・
手紙を読んだプリシラは娼婦をしていた頃に使っていた睡眠薬の小瓶を取り出した、それは即効性が高くて盛られた事を決して気付かせない特殊な薬だった。
ここはメイヴィス達と合流予定の場所でシャーロットは孤児院へ、アリーは教会へ向かった。
メイヴィス達はもう到着済みで、孤児院の子供達と遊んでいた。
メイヴィスは女の子達に囲まれて長椅子に座り絵本を読み聞かせている。
グリードは男の子達に簡単な体術を教えていた。
「・・・・石になったお姫様は呪いが解けて目が覚めると、勇敢な王子様と恋に落ちて、二人は幸せになりました、お終い」
絵本の朗読を終えたメイヴィスの膝の上に子供達が乗って、彼にペタペタ触って色々と質問をしている、メイヴィスは微笑んで子供達を見ている。
丁度部屋に入ってその光景を見たシャーロットは、メイヴィスの慈しむような表情にドキドキする、彼と子供達の邪魔をしない様にそっと部屋の角へ移動した。
「お兄ちゃんも王子様なんでしょ?、お姫様を助けてあげるの?」
「お兄ちゃんのお姫様はどんな人?」
メイヴィスは穏やかに微笑んで子供達の頭を撫でる、シャーロットはその姿に、まだ見ぬ二人の子供と遊ぶ未来のメイヴィスを想像して照れた。
「私のお姫様はね、人々を助ける仕事をしている素敵な女性だよ、王子様はいつも一生懸命に頑張っているお姫様の事が大好きなんだ」
美しい本物の王子様からお姫様との話を聞いた女の子達は、夢物語ではなく本当の恋物語に顔を赤くして ぼうっとメイヴィスを見つめて黙り込む。
ふと部屋の中にシャーロットがいる事に気付いたメイヴィスは、悪戯っ子の笑みを浮かべて『内緒だよ』と子供達に小声で教えた。
「あの聖女様が私のお姫様だ」
それを聞いた女の子達が、わっとシャーロットの所へ走り寄り彼女に抱きつく。
全く会話が聞こえていないシャーロットはいきなり子供達に囲まれて混乱している。
「お姉ちゃんはお姫様なの?」
「ねぇねぇ、王子様の事好きなの?」
「あっ、王子様が助けに来たよ」
「えっ?、えっ?」
「愛しいシャーロット姫、あらゆる危険から私が貴女を護ります」
メイヴィスは困っているシャーロットの側に行くと、お姫様抱っこをして子供達から助け出す。
二人の周りでは子供達が きゃーっきゃーっ 騒いでいる、シャーロットは恥ずかしさで更に混乱する。
「で、で、殿下?、これは一体何がどうなって、えっと重いですから、下ろしてください。」
「重く無い、むしろ軽くて心配になる。やっと逢えたねシャーロット、逢いたかった」
メイヴィスはシャーロットを抱いた状態でクルリと一周回ると、額に ちゅっ と口付ける、周りにいた子供達が、きゃーっと悲鳴を上げる。
シャーロットは恥ずかしさを耐え切れず、真っ赤に熟れた顔を両手で隠した。
絵本をたくさん読んだせいかメイヴィスの王子様度が高くなっている。
教会に移動して治癒を始めるとメイヴィスはシャーロットの直ぐ後ろから覗き込んだ。
自分の顔のすぐ横にあるメイヴィスの顔や近過ぎる身体から感じる熱で、シャーロットは治癒に集中する事が出来ずに、ややきつい声音で注意した。
「殿下、そんなに近くに寄られると緊張して上手く治癒が出来ません、少し離れて下さい」
「そうか、悪かった。君の近くに居たい私の気持ちが溢れ出てしまったようだ、治癒後なら抱き締めても良いかな?」
メイヴィスが悲しそう顔で図々しい事を言う、シャーロットが赤く染まる顔で軽く睨むと、逆にメイヴィスは嬉しそうだ。
シャーロットは彼を放っておく事にして治癒に専念した、これが聖女として最後の巡回治癒なのだ、悔いが残らないよう精一杯やり遂げる。シャーロットは時間ギリギリまで人々を治癒し続けた。
メイヴィスはそんなシャーロットの姿をじっと見つめる、聖女として働くシャーロットは美しかった。
メイヴィスは治癒に集中する彼女に自分を助けてくれた時の姿を重ねる。
ほぼ意識が無かった自分は見る事が出来なかったが、あの時もきっとこんな風に美しかったのだろうと。
人々に献身的に尽くす姿は正に聖女で、メイヴィスは運命の人シャーロットに出逢えた事を心から感謝した、そして・・・・・・
・・・・・もしかすると王子と名のつく存在は運命のお姫様に出会える生き物なのかも知れない・・・・・
子供達にせがまれて何冊も絵本の朗読をしたメイヴィスの頭の中は、夢物語に毒されていた。
最後の巡回治癒を終えた一行は、宿泊の為にザカリー辺境伯の邸へと向かった。
一方、その頃ザカリー邸ではメイヴィスの視察に同行していた監察官によって当主の不正が暴かれて糾弾されていた。
そして今ザカリーは邸の一室に軟禁されて、扉の前には見張りが立っている。
「だが、まだだ。あの男の弱みを握ればこの状況を覆せる、あの妙案が役に立ちそうだ」
ザカリーは執事を通じて情婦のプリシラに手紙で指示を出した、明日王都へ移送されるザカリーの計画を実行する機会は今夜しかない。
・・・・ふふふふ、何だそう云う事ね。上手く行けば今迄通りの暮らしが出来るじゃない、ザカリーも考えたわね・・・・
手紙を読んだプリシラは娼婦をしていた頃に使っていた睡眠薬の小瓶を取り出した、それは即効性が高くて盛られた事を決して気付かせない特殊な薬だった。
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