上 下
4 / 18

王太子殿下は悩ましい

しおりを挟む
「母上、叔母上、ご機嫌は如何でしょうか、お待たせして居ないと良いのですが・・・」

 私は、御婦人方との茶会に予定よりに合流した。

「メイヴィス、もう少し遅くても良い位ですよ、女性は話し好きですからね」


 母上は優しく微笑み、叔母上は相変わらずの元気さで迎えてくれた。


「メイヴィス!、相変わらず美男子ね、きらめく太陽だと囁かれているのも頷けるわ」


「叔母上、何ですか、きらめく太陽とは?」


 聞いた事のない形容詞に、つい質問してしまう。


「知らないのかしら、貴方の黄金色の髪と琥珀色の瞳が太陽の輝きを思わせるから、貴族女性達からそう呼ばれているのよ。因みにダルトンは、夜を思わせる色を持っているから、夜の天使と呼ばれているわ」


 ・・・夜の天使・・・恐らく堕天使と言いたいのだろうが、王族にそんな事を言えば不敬罪を問われかねないから、言えないのだろうなとメイヴィスは思い、ふともう一人の弟王子を思い出す。


「イオニスにはそう言った二つ名は無いのですか?」

 母上は苦笑し、叔母上は面白そうな顔をした。


「勿論あるわよ、イオニスは虹の妖精よ」


 ・・・虹の妖精・・・イオニスは乳白色の珍しい髪色をしており、それで白猫とも呼ばれているが、普段は好きな色をメッシュで入れているので、カラフルな髪色からの連想だろう。


「所で叔母上、私に何かお話しが有ると伺ったのですが、どう言ったお話しでしょうか?」


 問い掛けると叔母上は母上と目配せし、表情を引き締めて話出した。


「以前貴方の依頼でグレーシー王子妃に薄めた媚薬を手配した事があったでしょう?、最近、グレーシーから又あれが欲しいとお願いされたのよ。あれを使ったときの事が忘れられなくて、もう一度試したいそうよ」


「でも、薄めていたのよね?もう一度試したい程、効果が有ったのかしら?」


 母上が不思議そうに言う、もっともだ。叔母上の媚薬は効かないが、実際にグレーシーが服用したのは強力な媚薬だからかなり気持ち良かったのだろう。問題は誰にそれを使うつもりなのかだ。


 まさか、私か?


 最近やたらとグレーシーが私に近づいて来て、体が触れそうになる事がある、狙われているのか?
 一応、気を付けておく事にしよう。


「叔母上、あれはほとんど害のない物なので、渡してやっても良いですよ。別の誰かから強い媚薬を手に入れる方が問題ですから」


「分かったわ。所で貴方、新しい婚約者と交流してるのかしら?、社交界でサッパリ噂を聞かないのだけれど、どうなっているの?」


「彼女は普段、神殿に居ますからね、中々交流は持てて居ません。まあ焦らなくてもどうせ結婚するのだから、結婚後にお互いを知れば、自然と距離が縮まるかと」

 そう言って、私はお茶を一口飲む。 


「メイヴィス!」
「貴方、なんて事を!」


 叔母上と母上が同時に私を咎めた。


 そこから私は、女性へのアプローチの方法で有るとか、女性が心地良く感じるエスコートの仕方だとか、女性が喜ぶ贈り物の選び方だとか、二人から色々と享受され、執務の時間を潰された。




 ◆◇◆◇◆◇




 グレーシーはあの時の夢のような時間が忘れられずに、何度も思い返していた。思い返す度に胸も体も熱くなり、じんわりと秘所が潤う。


『あの時のメイヴィス様は、凄かった』


 もう一度だけでも良いから、メイヴィス様に抱かれたい。その思いは日々強まり、遂には友人に媚薬を頼んだ。


 そして、それを使う事を夢想する。 


『今度の仮面舞踏会が、絶好の機会だわ、仮装するから誰だか分からないし、休憩の為の部屋もある。給仕にお小遣いを握らせて服を濡らさせて、部屋へ誘導するのよ。メイヴィス様は私のものよ』


 その時の事を想像して、堪らなくなったグレーシーは、メイヴィスの悩ましい姿を思い描きながら、自分を愛撫しはじめた・・・・・・・・・








しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

契約結婚の終わりの花が咲きます、旦那様

日室千種・ちぐ
恋愛
エブリスタ新星ファンタジーコンテストで佳作をいただいた作品を、講評を参考に全体的に手直ししました。 春を告げるラクサの花が咲いたら、この契約結婚は終わり。 夫は他の女性を追いかけて家に帰らない。私はそれに傷つきながらも、夫の弱みにつけ込んで結婚した罪悪感から、なかば諦めていた。体を弱らせながらも、寄り添ってくれる老医師に夫への想いを語り聞かせて、前を向こうとしていたのに。繰り返す女の悪夢に少しずつ壊れた私は、ついにある時、ラクサの花を咲かせてしまう――。 真実とは。老医師の決断とは。 愛する人に別れを告げられることを恐れる妻と、妻を愛していたのに契約結婚を申し出てしまった夫。悪しき魔女に掻き回された夫婦が絆を見つめ直すお話。 全十二話。完結しています。

【完結】番が見つかった恋人に今日も溺愛されてますっ…何故っ!?

ハリエニシダ・レン
恋愛
大好きな恋人に番が見つかった。 当然のごとく別れて、彼は私の事など綺麗さっぱり忘れて番といちゃいちゃ幸せに暮らし始める…… と思っていたのに…!?? 狼獣人×ウサギ獣人。 ※安心のR15仕様。 ----- 主人公サイドは切なくないのですが、番サイドがちょっと切なくなりました。予定外!

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

ご期待に沿えず、誠に申し訳ございません

野村にれ
恋愛
人としての限界に達していたヨルレアンは、 婚約者であるエルドール第二王子殿下に理不尽とも思える注意を受け、 話の流れから婚約を解消という話にまでなった。 ヨルレアンは自分の立場のために頑張っていたが、 絶対に婚約を解消しようと拳を上げる。

婚約者マウントを取ってくる幼馴染の話をしぶしぶ聞いていたら、あることに気が付いてしまいました 

柚木ゆず
恋愛
「ベルティーユ、こうして会うのは3年ぶりかしらっ。ねえ、聞いてくださいまし! わたくし一昨日、隣国の次期侯爵様と婚約しましたのっ!」  久しぶりにお屋敷にやって来た、幼馴染の子爵令嬢レリア。彼女は婚約者を自慢をするためにわざわざ来て、私も婚約をしていると知ったら更に酷いことになってしまう。  自分の婚約者の方がお金持ちだから偉いだとか、自分のエンゲージリングの方が高価だとか。外で口にしてしまえば大問題になる発言を平気で行い、私は幼馴染だから我慢をして聞いていた。  ――でも――。そうしていたら、あることに気が付いた。  レリアの婚約者様一家が経営されているという、ルナレーズ商会。そちらって、確か――

【完結】恋人との子を我が家の跡取りにする? 冗談も大概にして下さいませ

水月 潮
恋愛
侯爵家令嬢アイリーン・エヴァンスは遠縁の伯爵家令息のシリル・マイソンと婚約している。 ある日、シリルの恋人と名乗る女性・エイダ・バーク男爵家令嬢がエヴァンス侯爵邸を訪れた。 なんでも彼の子供が出来たから、シリルと別れてくれとのこと。 アイリーンはそれを承諾し、二人を追い返そうとするが、シリルとエイダはこの子を侯爵家の跡取りにして、アイリーンは侯爵家から出て行けというとんでもないことを主張する。 ※設定は緩いので物語としてお楽しみ頂けたらと思います ☆HOTランキング20位(2021.6.21) 感謝です*.* HOTランキング5位(2021.6.22)

継母の心得

トール
恋愛
【本編第一部完結済、2023/10〜第二部スタート ☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定☆】 ※継母というテーマですが、ドロドロではありません。ほっこり可愛いを中心に展開されるお話ですので、ドロドロ重い、が苦手の方にもお読みいただけます。 山崎 美咲(35)は、癌治療で子供の作れない身体となった。生涯独身だと諦めていたが、やはり子供は欲しかったとじわじわ後悔が募っていく。 治療の甲斐なくこの世を去った美咲が目を覚ますと、なんと生前読んでいたマンガの世界に転生していた。 不遇な幼少期を過ごした主人公が、ライバルである皇太子とヒロインを巡り争い、最後は見事ヒロインを射止めるというテンプレもののマンガ。その不遇な幼少期で主人公を虐待する悪辣な継母がまさかの私!? 前世の記憶を取り戻したのは、主人公の父親との結婚式前日だった! 突然3才児の母親になった主人公が、良い継母になれるよう子育てに奮闘していたら、いつの間にか父子に溺愛されて……。 オタクの知識を使って、子育て頑張ります!! 子育てに関する道具が揃っていない世界で、玩具や食器、子供用品を作り出していく、オタクが行う異世界育児ファンタジー開幕です! 番外編は10/7〜別ページに移動いたしました。

悪意か、善意か、破滅か

野村にれ
恋愛
婚約者が別の令嬢に恋をして、婚約を破棄されたエルム・フォンターナ伯爵令嬢。 婚約者とその想い人が自殺を図ったことで、美談とされて、 悪意に晒されたエルムと、家族も一緒に爵位を返上してアジェル王国を去った。 その後、アジェル王国では、徐々に異変が起こり始める。

処理中です...