上 下
7 / 44

第六話〜苦い青春④〜

しおりを挟む
 好きな人が失恋した、らしい。

 好きな人の好きな人は、彼ではなく、彼のお兄さんを選んだ。
 この半年間彼の話を聞いて、背中を押すように励まし続けてきたけど、彼の恋は実らなかった。

 私と同じで。

『兄貴のアパートに遊びに行ったけど、彼女来てて……。俺はお邪魔虫だからさ……』

『連絡しないで凸った俺が悪いんだけど』

『あ、でも邪魔にされた訳じゃないよ。仲良く三人で話してたけど、俺が二人の空気に耐えられなくて出てきちゃっただけ』

『兄貴より俺と話してる方が多かったけどなー。俺のが兄貴より仲良くなれたと思ってたのに』

 うん、うん、そうだね。
 否定せず、ただ彼の話に相槌を打つ。
 余計なお世話のアドバイスもしない。

『それは辛いね。私で良ければいつでも話聞くよ。大して役には立てないけど』

『そんな事ないよ。話聞いてくれて助かった』

『気晴らしに今からカラオケでも行く? ちょっとここから遠いけど』

『うーん。今日はいいかな……』

 俯き、何度も大きなため息を吐く彼を見て、自然と身体が動いた。

『い、と……ちゃん……?』

 私の部屋のベッドに腰掛けた彼を抱きしめ、子供にしてあげるみたいに背中を上下にゆっくり撫でる。
 好きな人に触れたいと言う下心が一ミリも無かったかと言うと、そうではない、けど。
 下を向いた彼が、何かを必死に我慢する幼い子供のように私には映ったから。
 泣きたいのを必死に堪えているように辛そうに見えたから。
 
『ほっしーはいっぱい頑張ったよ。だから、辛い時は我慢しないで。泣いてもいいんだよ?』

『流石に泣きはしないけど』

『そっか』

『うん、それは大丈夫かな』

 彼が胸の中でフッと笑ったような気がして、少しだけ胸を撫で下ろす。

『じゃあ……気晴らしに、今からエッチする?』

 何故こんな弱った人間につけ込むような真似をしてしまったのか。
 やはり、彼に触れたいと言う下心からだったのかもしれない。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…

ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。 しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。 気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…

どうして隣の家で僕の妻が喘いでいるんですか?

ヘロディア
恋愛
壁が薄いマンションに住んでいる主人公と妻。彼らは新婚で、ヤりたいこともできない状態にあった。 しかし、隣の家から喘ぎ声が聞こえてきて、自分たちが我慢せずともよいのではと思い始め、実行に移そうとする。 しかし、何故か隣の家からは妻の喘ぎ声が聞こえてきて…

初めてなら、本気で喘がせてあげる

ヘロディア
恋愛
美しい彼女の初めてを奪うことになった主人公。 初めての体験に喘いでいく彼女をみて興奮が抑えられず…

壁の薄いアパートで、隣の部屋から喘ぎ声がする

サドラ
恋愛
最近付き合い始めた彼女とアパートにいる主人公。しかし、隣の部屋からの喘ぎ声が壁が薄いせいで聞こえてくる。そのせいで欲情が刺激された両者はー

これ以上ヤったら●っちゃう!

ヘロディア
恋愛
彼氏が変態である主人公。 いつも自分の部屋に呼んで戯れていたが、とうとう彼の部屋に呼ばれてしまい…

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~

taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。 お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥ えっちめシーンの話には♥マークを付けています。 ミックスド★バスの第5弾です。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

処理中です...