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『冷血騎士』の名は貴方に相応しくない。

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「…ギルベール様は、女嫌いと聞いてましたけど…大丈夫でしたか?」
と私が聞くと、
「女嫌い、か…。」
ギルベール様は少し考えたのち、
「少し、俺の幼少期の話をしても良いか?」
と、語りだした。

「実は、俺の両親は、俺が小学校に入るまではとても仲が良かったんだ。
俺が小さい時は、両親のことが大好きだった。
だけど、変わったのは、小学校に入って、俺が特別な才能をもっていることに周りが気づき始めた時だ。」
…そうだった。
カルファもさっき言っていた、ギルベール様は頭脳が飛びぬけて冴えてるのだ。
…きっと、冴えてるなんて言葉では収まらない位、天才なのだろう。

「それで、両親は色々な習い事を俺にさせた。
小さい時の俺は、習い事なんかしたくない。そんな思考だったから、俺は習い事を拒否したんだ。
…そこで、俺の両親は揉めた。」
私は、頷いていることしかできなかった。

「結局は、離婚したよ。
でも、二人は俺のことを気遣ってくれて、離婚は俺が高校を卒業してからだった。
…だから、俺は騎士団に入ることにしたんだ。騎士団で、力をつけて、一人でも生きていけるようにした。
…まぁ、それがきっかけで、ちょっと女性不信…みたいな感じになってるんだ。
別に、女嫌いってわけじゃないんだけどね。」

私は、気づけばギルベール様の頭を撫でていた。
「…頑張りましたね。」
…きっと、私には想像のできない痛みだ。
だけど、ギルベール様が苦しかったのは、なんとなくわかる。
だから、せめて、私に出来ることを。

ギルベール様は、一言、
「ありがとう。」
と言った。
(…この人が、『冷血騎士』だなんて。
…貴方に、『冷血騎士』の名は相応しくないです。)

ギルベール様は、落ち着いたように、
「あんまり人に話したくなかったのだけど…。
でも、何故か君には話せた。
…すっきりした、ありがとう。」
ギルベール様は笑顔で笑った。
その美貌も相まって、その姿は、「綺麗だ」と思った。


その日から、私はギルベール様の屋敷に同居させてもらうことになった。
婚約の話はすんなり進み、もうすぐでギルベール様と私は婚約関係になる。

ギルベール様は、私に会うと、少し嬉しそうにしているのが分かる、、私も嬉しい。
…正直、ギルベール様と会ってから一週間ほど経つけど…。
いまだに、ギルベール様の顔面が良すぎて、ギルベール様を…直視できない!

私は一つのことを思い出してしまった。
カルファは、最初私に、
「アンジュ様には、ギルベール様との婚約をしてほしいのです。」
と、言っていた。
もしかしたら、ギルベール様は、本当に形だけの婚約をするつもりかもしれない。

…私は、ここ数日でギルベール様に惚れかけていた。
だから、これから形だけの婚約、というのはきっと無理だろう。
(ギルベール様に、意識してもらうには…何をすればいいんだろう。)
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