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第11話
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どんな一日も終わる。
そして明けない夜はない。そう信じたい。
私は、ふとんの中でおびえていた。
今夜の夢。今日こそ私はあの蜘蛛に食われるのだろうか。
手の中には、ミキの残した石。
青い、青い、凍えるように冷たい石。
ミキ。
岸田先輩。
一体、何がどうなっているんだろう。
昨日までは普通だったのに。
涙で視界がぼやけてくる。
そういや、ラーメンおいしかったなぁ。
森田君ってば、かまずに食べるんだから。
あれじゃ、体に絶対よくないよね。
ふふふ。と、笑みがこぼれる。
支離減裂なことばかり考えてしまう。
思考はもう飽和状態だった。
ああ、どうしよう、嫌だ。
瞼が重くなってくる。
-----------------------------
目ざましがけたたましく鳴って、朝をつげる。
私は、朝が来たことに、ほっとする。
昨夜の夢。ひどいものだった。
最悪だった!
夜中に目を覚ましてから、結局眠ることができなかった。
悪夢をふりはらう様に、頭を左右にふる。それでも生々しいあの夢はしっかりとこびりついて頭から離れようとはしない。
軽く、ため息を一つついて起き上がる。
朝がきた。そう、また一日が始まるんだ。ふらふらと、準備をしていく。何も考えなくても決まった手順で支度がすんでいく。
機械的な動作はいい。頭をからっぽにしていてもできるから。
いつものように、家を出る。見上げた霜月の空は寒々とした灰色で、綿雪がふわふわと空を漂いながら落ちてくる。綿雪を顔で、一つ、また一つと受け止めた後、私は自転車に乗ってこぎだした。
登校して、私は、先輩の失踪の噂と、ミキの急病による長期休学を知った。
みんな先輩の話でもちきりだった。…そして興味本位に好きなことを言っていた。
予感が現実としてそこにあった。嫌だった。信じたくなかった。
私は、気分が悪くなっていく。
昨夜の夢はきっとただの夢だ。きっとそうだ。
「二ノ宮、大丈夫か?」
森田君が心配そうに声をかけてきた。
「…うん。大丈夫だよ。」
「でも、顔色悪いぞ。早退したほうがいいんじゃないか?」
「うん。ちょっと、ここ最近寝てなくて。」
「そう。」
森田君はいつものように、隣の机に腰掛けて両足をぷらぷらさせている。
「なぁ。」
森田君は言いにくそうに切り出した。
「おまえ、何か知っているんじゃないか?」
「え?」
私は血の気が引いて行くのが自分でも分かった。震える声できき返す。
「なんの話?」
森田君はじれったそうに言う。
「岸田先輩と久野のことだよ。
だって、おかしいだろ?昨日の今日だぜ?
どうだったんだ?別れ際の二人の様子は。」
私は下を向いたまま答える。
「どうだって聞かれても。別に。
二人で帰ってたよ。」
「それも、おかしくないか?」
「何で。」
「だって、突然二人がそんな仲になるなんて。久野のクールな感じを知っているだけに、よく考えるとおかしいなって思って。」
私は本当に頭が痛くなってきた。
「そんなの、私に言われたってわかんないよ。二人が一緒に帰ったのは事実なんだから!」
私は気づくと大きな声を出していた。森田君は驚いた顔をして、唖然としている。
「ごめん。頭痛い。ちょっと、保健室に行ってくる。」
私は、森田君の返事も聞かず、教室を飛び出した。ああ、頭がくらくらする。朦朧とする意識で保健室についた。
誰もいない。ストーブがあって温かい。私は、ベットに倒れこんだ。世界がぐらぐらゆがんでいく。
岸田先輩。ミキ。本当に、一体どこに行ってしまったの?何が起こっているの?
私の重たいまぶたが自然に閉じて行く。私は願った。
どうか、お願い。悪夢はもう見たくないの!
けれど、私の願いに反して睡魔は悪夢をつれてくる。
そして明けない夜はない。そう信じたい。
私は、ふとんの中でおびえていた。
今夜の夢。今日こそ私はあの蜘蛛に食われるのだろうか。
手の中には、ミキの残した石。
青い、青い、凍えるように冷たい石。
ミキ。
岸田先輩。
一体、何がどうなっているんだろう。
昨日までは普通だったのに。
涙で視界がぼやけてくる。
そういや、ラーメンおいしかったなぁ。
森田君ってば、かまずに食べるんだから。
あれじゃ、体に絶対よくないよね。
ふふふ。と、笑みがこぼれる。
支離減裂なことばかり考えてしまう。
思考はもう飽和状態だった。
ああ、どうしよう、嫌だ。
瞼が重くなってくる。
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目ざましがけたたましく鳴って、朝をつげる。
私は、朝が来たことに、ほっとする。
昨夜の夢。ひどいものだった。
最悪だった!
夜中に目を覚ましてから、結局眠ることができなかった。
悪夢をふりはらう様に、頭を左右にふる。それでも生々しいあの夢はしっかりとこびりついて頭から離れようとはしない。
軽く、ため息を一つついて起き上がる。
朝がきた。そう、また一日が始まるんだ。ふらふらと、準備をしていく。何も考えなくても決まった手順で支度がすんでいく。
機械的な動作はいい。頭をからっぽにしていてもできるから。
いつものように、家を出る。見上げた霜月の空は寒々とした灰色で、綿雪がふわふわと空を漂いながら落ちてくる。綿雪を顔で、一つ、また一つと受け止めた後、私は自転車に乗ってこぎだした。
登校して、私は、先輩の失踪の噂と、ミキの急病による長期休学を知った。
みんな先輩の話でもちきりだった。…そして興味本位に好きなことを言っていた。
予感が現実としてそこにあった。嫌だった。信じたくなかった。
私は、気分が悪くなっていく。
昨夜の夢はきっとただの夢だ。きっとそうだ。
「二ノ宮、大丈夫か?」
森田君が心配そうに声をかけてきた。
「…うん。大丈夫だよ。」
「でも、顔色悪いぞ。早退したほうがいいんじゃないか?」
「うん。ちょっと、ここ最近寝てなくて。」
「そう。」
森田君はいつものように、隣の机に腰掛けて両足をぷらぷらさせている。
「なぁ。」
森田君は言いにくそうに切り出した。
「おまえ、何か知っているんじゃないか?」
「え?」
私は血の気が引いて行くのが自分でも分かった。震える声できき返す。
「なんの話?」
森田君はじれったそうに言う。
「岸田先輩と久野のことだよ。
だって、おかしいだろ?昨日の今日だぜ?
どうだったんだ?別れ際の二人の様子は。」
私は下を向いたまま答える。
「どうだって聞かれても。別に。
二人で帰ってたよ。」
「それも、おかしくないか?」
「何で。」
「だって、突然二人がそんな仲になるなんて。久野のクールな感じを知っているだけに、よく考えるとおかしいなって思って。」
私は本当に頭が痛くなってきた。
「そんなの、私に言われたってわかんないよ。二人が一緒に帰ったのは事実なんだから!」
私は気づくと大きな声を出していた。森田君は驚いた顔をして、唖然としている。
「ごめん。頭痛い。ちょっと、保健室に行ってくる。」
私は、森田君の返事も聞かず、教室を飛び出した。ああ、頭がくらくらする。朦朧とする意識で保健室についた。
誰もいない。ストーブがあって温かい。私は、ベットに倒れこんだ。世界がぐらぐらゆがんでいく。
岸田先輩。ミキ。本当に、一体どこに行ってしまったの?何が起こっているの?
私の重たいまぶたが自然に閉じて行く。私は願った。
どうか、お願い。悪夢はもう見たくないの!
けれど、私の願いに反して睡魔は悪夢をつれてくる。
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