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第3話
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私の高校は丘の上に立っている。
自転車でてっぺんまで登る毎朝の苦行。
なんでこんな所にわざわざ学校を建てたんだと思いつつ、最後の難所をつきすすむ。
坂の上まで立ちこぎをして、校門へすべりこんだ。なんとかぎりぎりセーフ。
親友のミキにそんな姿を見られたら一大事。
「立ちこぎなんて、女の子のすることじゃないわ」って、優しくたしなめられるんだから。
髪はすっかりあちこち乱れているんだろうな。
苦笑しながら手ぐしで整える。
のどがやっぱり痛む。鉄の味がして嫌な感じだ。
寒い日に全力で何かをすると必ずこうなってしまう。オリンピック選手はそんなことないのかな。
やれやれ。朝から疲労困憊。遅刻せずにすんだことにほっとひとつ安堵のため息をつく。心に余裕が出てくると、母に逆切れしたことに対して、ふつふつと罪悪感が湧き上がってきた。
だめだなぁ、私。
げた箱で上靴に履き替えていると、ちょうど担任教師がやってきて、教科書で軽く頭をこつ かれた。後藤田先生はいつも青色ジャージの上下。
ちゃんとした大人なんだから、身なりはきっちりしてほしいものだなぁ。
と、自分のことは棚上げにしてつい思ってしまう。
先生だって、まだ若いんだから、スーツを着ればそれなりに決まるのになぁ。もったいない。
「二ノ宮、見たぞ。おまえ、ローソンの前の交差点で信号無視しただろう。」
「あれ?そうでしたっけ。」
「あんな運転したら命がいくらあっても足りんぞ。
気をつけなさい。」
「はーい。気をつけます。」
片手をあげて、満面の笑みで答える。
先生は苦笑して溜息をつく。
「おまえは、反省の色がみえんなぁ。
やれやれ。」
そう言って、ぼさぼさの頭をかきながらサンダルをぺたんぺたんとさせて歩いて行った。
私はぺろっと舌を出す。
不潔なことをのぞくと、いい先生なんだけどな。
あのジャージ、どのくらい洗たくされていないんだろうか。
変なにおいはしないけど。
…あれじゃ、彼女いないんだろうなぁ。
って先生っていくつなんだっけ?
と、どうでもいいことを考えていると声をかけられた。
「おはよう。りさ。」
鈴音のような美しい声。
振り返ると、すき通るような白い肌が、朝日に輝いてまぶしい美少女がいた。
親友のミキだ。起きぬけに来た私とは違い、ミキの身なりはいつものようにきっちりとしている。彼女のまつ毛はとても長く、色っぽい。印象的なすんだ黒い瞳は不思議な魅力をはらんでる。
同性の私から見ても、どきっとする瞬間があるくらい魅惑的な瞳。
漆黒なはずなのに、時に青くみえたりする。とても神秘的な美しさ。
ぱっとしない自分にできた学校で一番の美人の親友。
たまたま席が前後だったのが仲良くなったきっかけだけど…。
今でも彼女の親友が私なんかでいいのか不安だ。完全に釣り合っていない自覚があるから。
美しすぎて、時々彼女が人間離れをしていると感じる時がある。
私の気のせいかもしれないけど。
親友とは、どれくらいの距離を置いてつきあうものなのだろう。
私は、この美しすぎる親友との距離をどんなふうにとったらいいのか分からない。
彼女と知り合うまではそんなことを考えたこともなかった。見た目や価値観が同じようなレベルの友達としか付き合ってこなかったから。
あけっぴろげな性格の私とは違って、彼女は心の奥底までは見せてくれない。
そんな時、ミキがどこかとても遠いところにいるように感じる時がある。うまくは言えないけれど、そんな時私はとても寂しくなるのだ。私には上等すぎる大好きな親友を理解したいと思っているから。
自転車でてっぺんまで登る毎朝の苦行。
なんでこんな所にわざわざ学校を建てたんだと思いつつ、最後の難所をつきすすむ。
坂の上まで立ちこぎをして、校門へすべりこんだ。なんとかぎりぎりセーフ。
親友のミキにそんな姿を見られたら一大事。
「立ちこぎなんて、女の子のすることじゃないわ」って、優しくたしなめられるんだから。
髪はすっかりあちこち乱れているんだろうな。
苦笑しながら手ぐしで整える。
のどがやっぱり痛む。鉄の味がして嫌な感じだ。
寒い日に全力で何かをすると必ずこうなってしまう。オリンピック選手はそんなことないのかな。
やれやれ。朝から疲労困憊。遅刻せずにすんだことにほっとひとつ安堵のため息をつく。心に余裕が出てくると、母に逆切れしたことに対して、ふつふつと罪悪感が湧き上がってきた。
だめだなぁ、私。
げた箱で上靴に履き替えていると、ちょうど担任教師がやってきて、教科書で軽く頭をこつ かれた。後藤田先生はいつも青色ジャージの上下。
ちゃんとした大人なんだから、身なりはきっちりしてほしいものだなぁ。
と、自分のことは棚上げにしてつい思ってしまう。
先生だって、まだ若いんだから、スーツを着ればそれなりに決まるのになぁ。もったいない。
「二ノ宮、見たぞ。おまえ、ローソンの前の交差点で信号無視しただろう。」
「あれ?そうでしたっけ。」
「あんな運転したら命がいくらあっても足りんぞ。
気をつけなさい。」
「はーい。気をつけます。」
片手をあげて、満面の笑みで答える。
先生は苦笑して溜息をつく。
「おまえは、反省の色がみえんなぁ。
やれやれ。」
そう言って、ぼさぼさの頭をかきながらサンダルをぺたんぺたんとさせて歩いて行った。
私はぺろっと舌を出す。
不潔なことをのぞくと、いい先生なんだけどな。
あのジャージ、どのくらい洗たくされていないんだろうか。
変なにおいはしないけど。
…あれじゃ、彼女いないんだろうなぁ。
って先生っていくつなんだっけ?
と、どうでもいいことを考えていると声をかけられた。
「おはよう。りさ。」
鈴音のような美しい声。
振り返ると、すき通るような白い肌が、朝日に輝いてまぶしい美少女がいた。
親友のミキだ。起きぬけに来た私とは違い、ミキの身なりはいつものようにきっちりとしている。彼女のまつ毛はとても長く、色っぽい。印象的なすんだ黒い瞳は不思議な魅力をはらんでる。
同性の私から見ても、どきっとする瞬間があるくらい魅惑的な瞳。
漆黒なはずなのに、時に青くみえたりする。とても神秘的な美しさ。
ぱっとしない自分にできた学校で一番の美人の親友。
たまたま席が前後だったのが仲良くなったきっかけだけど…。
今でも彼女の親友が私なんかでいいのか不安だ。完全に釣り合っていない自覚があるから。
美しすぎて、時々彼女が人間離れをしていると感じる時がある。
私の気のせいかもしれないけど。
親友とは、どれくらいの距離を置いてつきあうものなのだろう。
私は、この美しすぎる親友との距離をどんなふうにとったらいいのか分からない。
彼女と知り合うまではそんなことを考えたこともなかった。見た目や価値観が同じようなレベルの友達としか付き合ってこなかったから。
あけっぴろげな性格の私とは違って、彼女は心の奥底までは見せてくれない。
そんな時、ミキがどこかとても遠いところにいるように感じる時がある。うまくは言えないけれど、そんな時私はとても寂しくなるのだ。私には上等すぎる大好きな親友を理解したいと思っているから。
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