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68話 魔界?

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 ◆エルちゃん視点



「あおいねーたんに怒られちゃった.......悲しい」

 思わず泣いてしまいそうでした。確かにそうですよね.......あんな美味しい食べ物が無料で食べれる筈がありません。最初は炊き出しなのかと思ってました。

「―――――――――♪」
「よし、でも店員のお姉さんにありがとうと言えたから僕も少しは進歩してる筈。かえでねーたん達に家でもありがとうの重要性は教わってたし」

 今後は感謝の心を持って、行動する様に心掛けよう。僕は立派な大人になるのだ! かっこいい冒険者になる為には、沢山お勉強して学ばないと行けません!

「――――――?」
「にぎにぎ.......」
「―――――――――♡」

 思わずあおいねーたんの手をにぎにぎとしてしまいました。あおいねーたんは笑顔で僕の手をにぎにぎと握り返してくれました。女性の手は、何でこうも柔らかくて綺麗なのでしょうか? かえでねーたんもそうですが、手を繋いで居ると何故か僕の心の奥底がポカポカと温まるのです。

 手を繋ぎながら歩いていると何だか凄い所に来てしまいました。

「ファッ.......!? 何じゃあそこは!? 魔界か!?」
「―――――――――?」

 凄い騒音だ.......見た事の無い魔道具が沢山置いてある.......しかもデカい! 家でもあんなものは無かったぞ!?

「か、かえでねーたん! あおいねーたん! あそこは駄目ですよ! やばい.......絶対やばいよ!」

 僕の危機的警鐘がガンガンと鳴り響いています。あそこに行ったら最期かもしれません。あそこはきっと魔界の入口に通じているに違いありません!

「―――――――――♪」
「ま、待って! 心の準備がまだ.......」


 僕は問答無用で、お姉さんに抱かれながら魔界へと踏み込んでしまいました。




 ――――――――――――





「ファッ.......!? あ、あれは! おかちじゃないか!」

 しゅ.......しゅごいよ! ここは魔界じゃなくて楽園だったのか! かえでねーたんが指を指しながら、くれぇんげぇーむと言っております。この大きな魔道具の名前なのでしょうか? かなり精巧に作られており、ピカピカと音を立てながら光っています。その魔道具の中に僕の大好きなおかちが大量に入っているのですよ!

「おかちの双璧だ.......あっちにもこっちにも!」
「―――――――――♡」
「かえでねーたん! あれ僕がこないだ食べたおかちだよ! 沢山ありゅよ! しゅごいよ!」

 かえでねーたんはクスクスと笑いながら、僕を床に降ろしてくれました。僕は目の前のおかちに夢中になってしまいました。

「ぬっ? またしても透明な壁か.......何じゃこれ?」

 僕の目線の高さに2つのボタンがあります。⬅と⬆️のマークが書いてありますね。

「ふむふむ、これはこうして.......あれ、動かない」
「――――――♪」
「―――――――――♡」

 かえでねーたんとあおいねーたんが、僕を見ながら笑ってる。あの顔は何か企んでいる時の顔かこの後、僕をめちゃくちゃにしようとする時の顔ですね。最近かえでねーたんやあおいねーたんのスキンシップが激しくなって来ているような気がします。

「ん?」

 隣りの人が何やらボタンを押して動かす際に丸い硬貨を入れておりました。あれは、お金と言うやつですね。かえでねーたんから家で教わりました。お値段がいくらとか、計算は出来ませんけどあれは確か1万円玉というやつです。

「――――――♪」
「おお、かえでねーたんやるの?」

 でも、かえでねーたんがお金を入れたのは良いのですが、何故か前じゃなくて僕の方をじっーと見ながらウットリとしています。僕何もしてませんよ?

「あぁ! かえでねーたん」

 アームと言う2つ爪の奴が下がってしまいました。

「――――――!」
「んみゅ? あおいねーたんもやるの?」

 僕はお金が無いので見守るしかありません。神様お願いします! おかちが沢山取れますように!

「――――――。」
「ありゃ、これは中々難しいですね」

 ビクともしなかったです。この魔道具さんは、僕達に最高級のおかちを取らせないように意地悪してるに違いありません。

「魔道具さん、一本で良いのでおかち下さい!」
「――――――♪」
「な、何じゃ!? おまえ喋るんかい! インテリジェンスウエポンだったのか!?」

 何て言ってるのか分かりませんが、雰囲気で分かります。あれは僕を煽ってるに違いありません!

「ふ~ん、なら僕にも奥の手がありますよ?」

 下の穴から入っておかち沢山取っちゃうもんね! 泣いて後悔しても知りません!

「ふぇ?」
「――――――!」
「か、かえでねーたん! 僕に任せて下さい! 中に入っておかち沢山取ってくるからね!」
「―――――――――!!」
「んぅっ.......」

 ぐぬぬ.......かえでねーたんに怒られてしまいました.......成程、これで正々堂々と戦えと言うのですね。

 かえでねーたんがお金を魔道具の中に入れてくれました。今度は僕のターンです!

「えいっ!」

 ありゃ? 全然進まずに下降しちゃった.......

「――――――!」
「――――――――――――!?」

 わーい! 何だかよく分からないけど、おかちGETです!

「あれ? 何かおかちの壁が揺れてる!?」

 そして次の瞬間、おかちの壁が崩れたのです! 

「ふぁっ.......!?」

 周りを見てみると僕達の方へ視線が集まっています。やった本人の僕が一番困惑しています。適当に押したらおかちが沢山.......

「―――――――――!」
「――――――!?」

 んぅ? かえでねーたんの知り合いかな?

「―――――――――♪」
「あぅ.......」

 思わずかえでねーたんの後ろに隠れてしまいました。優しそうなお姉さんですが僕は知っています。見た目真面目そうな人でも中々にやばかったりと.......今までその前例が多々あった為、そのおかげで僕も警戒するようになりました。人は見た目だけで判断するのは難しいのです。

「エル.......ちゃ.......ん.......」
「ん? 何だこの子」

 黒髪の小さな女の子が、トコトコと僕の目の前まで歩み寄って来ました。まだ幼い幼女ですね。

「お、お嬢ちゃん.......どうしたのかな?」
「―――――――――!」

 この子あざといぞ!? 可愛い女の子じゃないか。ここは大人として、僕も冷静に対応してあげようではありませんか。小さな子は頭を撫でてあげれば喜ぶ筈です。あ、そうだ! このおかちもあげよう!

「お嬢ちゃん可愛い子だね~」
「はぅ.......!?」
「よしよし~♪ お兄さんがこのおかちをプレゼントしてあげよう♪」

 今の僕は幼女になってしまいましたが、中身は立派な大人です。ただ少し解せぬ所は、この子の方が僕より身長が少し高いと言う所ですかね。これでは大人としての威厳の欠片もありません。

「かえでねーたん!?」

 かえでねーたんの顔が飛んでも無いことになっています! あの顔は危ない.......いつものパターンだとこの後めちゃくちゃにされるやつです!

「―――――――――♡」
「はわっ.......!? こんな所で流石に不味いですよ!? 他の人が見てますよ!」

 んみゃああああああ.......!?
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