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23話 オムツを履いたエルちゃん

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◆エルちゃん視点


「何なのだこれは!? なんと言う履き心地……こっちの方が断然良いではないか!?」

 なんの話しをしているかと言うと僕はお風呂から上がった後に、お姉さんにまた新たな服と下着を頂いたのです。

「ふふ……ついに可愛いらしい絵柄のパンツは卒業したぞ! 僕はもう時期、成人の義を迎えるお年頃なのだ。こんな可愛いらしい子供向けのパンツを履く何て恥ずかしい」

 僕の住んでいた場所では、15歳を迎えると成人として扱われます。だから今履いているパンツや服を卒業出来るのは、僕の精神衛生上凄く助かります。最初はお姉さんに無理矢理着せられてしまって、その後脱ごうとしたらお姉さんが泣きそうな顔をするので、仕方なく不本意ながら女の子が着るような服を僕は着ていました。

「しかし、お姉さんこんな高級そうな物を僕なんかにあげていいのかな?」

 このパンツは恐らく銀貨1枚くらいの値段はしそうです。肌触りも良くモコモコで履き心地も素晴らしいのです! この上下の衣服も軽くて生地は薄いですけど、着心地も良く暑い時期には持ってこいの服です。

「――――――♪」
「ん? お姉さんそれは何ですか?」

 2人のお姉さんが優しげな笑みを浮かべています。そしてボブカットヘアーのお姉さんが、茶色の箱の中から物を取り出します。

「おおっ! こ、これはっ!? 伝説の杖っ!? しかも、色違いを含めて3本!?」
「――――――!!」
「こないだ壊してしまったのに……また僕にくれるのですか? し、しかし……」

 お姉さんは満面の笑みで、僕に伝説の杖を授けてくれました。こないだの黒い魔物との戦いで僕が解き放った、極大魔法【隕石落下メテオストライク】によって伝説の杖は壊れてしまいもう使い物にならなくなってしまったのです。僕が未熟のばかりに……

「――――――♪」
「え? このボタンを押すのですか? あれ? よく見たらこの伝説の杖、ボタンが沢山付いてるぞ?」

 僕はお姉さんに言われた通りにボタンを押してみます。

「――――――♪ ――――――♪ ――――――!!」
「ふぁっ!? 杖が喋ったああああああっ!?」

 僕は驚きの余り、床に杖を落としてしまいました。だって、これは恐らくあれですよ! インテリジェンスウェポン……高度な知能を保有している、意思のある杖。確か大賢者の杖もそのインテリジェンスウェポン。僕はとんでも無い物をお姉さんから頂いてしまった……お姉さんはやはり底がしれぬ。こんなのいくらお金積んでも買える代物ではない筈だ。

「お、お姉さん!? さ、流石にこれは……駆け出しの僕には荷が重いというか……本当にくれるのです?」
「――――――♪」

 ま、まあくれると言うならありがたく頂戴します。こんな良い物を頂いたからには、いつか強くなってお姉さん達を守って見せます!

「――――――♪」
「ん? お姉さんどうしたんですか?」

 2人のお姉さんは杖を持って、僕の方へと向けて身構えています。

「も、もしや……これは修行なのかな? よし、そういう事ならいくらお姉さんだからと言って手加減しませんからね!」
「――――――!?」
「わぷっ!? 何で僕の頭をなでなでするのですか?」

 これはずるいです! お姉さんのなでなでは、気持ちいんだもん! もしやこれも攻撃……いや、試練なのかな?

「――――――♪ ――――――♪」
「ヒィッ!? お姉さんの杖が喋った!? やばい、あれは……何か来る!!」

 僕は一旦退避しようと机の下に身を寄せて隠れました。お姉さんの顔が……あれはきっと良からぬ事を考えてる顔です!

「仕方ない……これだけは使いたくなかったんだけど、お姉さん覚悟してくださいね!」

 僕は机の下から出て来て、2人のお姉さんに杖を向けて極大魔法を放ちます。

「我の名はエルっ! 地獄の炎よ! 顕現せよ! これは効きますよ!【地獄の炎壁インフェルノ】!!」

 辺りはシーンとしています。お姉さん2人は首を傾げて困惑している様子です。ん~また失敗したのかな?
 でも僕はめげずに何度も魔法を唱えます!

地獄の炎壁インフェルノ】!
地獄の炎壁インフェルノ】!
地獄の炎壁インフェルノ】!

 最後に呪文を唱えた瞬間、杖が眩い光りを放ち何かを言っておりました。するとお姉さん達は悲鳴を上げながら地面にばたりと倒れてしまいました。

「え……えっ!? まさか本当に成功しちゃったの? あ、あぁ……どうしよう!?」

 僕は目の前に倒れている2人のお姉さんと杖を交互に見て僕の顔は段々と青ざめて行きました。

「お、お姉しゃん!? う、嘘ですよね?」

 僕は2人のお姉さんの体をゆさゆさと揺らして見ましたが、全く反応がありません……

「うぅ……ぐすっ……ふぇえええええんんんんんっ!!」

 色々な感情が津波のように押し寄せて来て、僕は子供のように泣き叫んでしまいました。



 ◆楓視点



「あらあら♪ エルちゃんったら、余程パジャマとオムツが気に入ったのね♡」

 エルちゃんには今まで熊さんの可愛いらしいパンツを履かせて居たのですが、またお漏らししてしまっては大変です。なので、オムツをエルちゃんに履かせたらエルちゃんは目をキラキラと輝かせて喜びを顕にしております。私の方へ身体を向けて、オムツ一丁でドヤ顔しているエルちゃん……めちゃくちゃ可愛いです!

「エルちゃん似合ってまちゅよ~♪ そろそろリビングの方に行きましょうね~♪」

 私はエルちゃんを抱っこしてからリビングへと向かいます。ディフフ……エルちゃん良い匂いがしますね。抱き心地も最高です♡

「ちょっとだけ、お姉ちゃんが遊んであげまちゅからね~♪ エルちゃんの大好きなおもちゃあるんだ~♪」

 そして私とエルちゃんは、リビングへと戻って来てソファに一緒に座りました。すると葵ちゃんがダンボール箱を持って来て、その中から魔法少女みくるちゃんの新品のおもちゃを取り出します。

「うわぁ~♪ これ凄いね! お姉ちゃん、これお値段高いやつじゃん」
「うふふ……そうだよ~3本それぞれ色違い買っておいたの♪ 値段は1つ7980円だったかしら? 色々な機能が付いてるらしいわよ♪」

 これで3人でエルちゃんと一緒に魔法少女ごっこして遊べますね♪ 赤色、青色、緑色と3種類あります。

「――――――!? ――――――!!」
「エルちゃん驚いてるね♪ 今回のは前回と違って機能が充実してるんだよ~」

 葵ちゃんがエルちゃんに青色の杖を渡しました。エルちゃんは目を見開いて、恐る恐る杖を受け取って両手で優しく握り閉めております。余程気に入ってくれたのか、物凄く上機嫌な様子です♪

「さて、エルちゃん~この杖はここ押すと喋るんだよ♪」

 私はエルちゃんに渡した杖のおもちゃのボタンをポチッと押します。

 〘世の中は金♪ 今日は定時で帰らないと行けないから 早急にキメるわよ! インフィニットブラスト!〙
「―――!? ――――――!!」

 エルちゃんが驚きの余り、地面にお尻をついてしまいました。それにしても、魔法少女としてこの発言はいかなるものでしょうか……魔法少女みくるちゃんをあんまり見た事無かったのですが、子供向けとしてはこれは何だかなと言う複雑な気持ちになります。

「まあ、良いか……葵ちゃん準備は良い?」
「うん! エルちゃん行くよ~!」

 私と葵ちゃんでエルちゃんの方へと身体を向けて身構えます。エルちゃんは神妙な面持ちで机の下に退避して、こちらの様子を伺っております。

「チェルチェチェ~チェルポパピ♪ 魔法少女、楓! 華麗にへ~んし~ん!!」

 私はポーズをキメて、エルちゃんに向けて杖のボタンを押してライトを光らせます。

「お姉ちゃん……良い歳してそれは……」

 何だか葵ちゃんの視線が……やめて! お姉ちゃんをそんなドン引きしたような目線で見るのは辞めてっ!!

「――――――!!」
「ん? お姉ちゃん、エルちゃんがおもちゃ振り回して何か言ってるよ! エルちゃんに合わせよう!」

 エルちゃんは杖を振りかざして、何かを呟いています。

「――――――!!」
「――――――!!」

 エルちゃんは何度か杖を振りかざしてから、首を傾げております。そして私達の方へ視線を向けて再び何かを言っております。

「――――――!!」
「ねえ、お姉ちゃん。ここは大人の対応をしてあげないと」
「そうね、葵ちゃん3秒後に床に倒れるわよ! やられた振りをするのよ」

 そしてエルちゃんが杖を振りかざしたタイミングに合わせて、私と葵ちゃんは名演技で床に倒れます。

「ぐ、ぐはっ!?」
「きゃっあああ!?」

 私と葵ちゃんはエルちゃんに気付かれないように、薄らと目を開けてエルちゃんの様子を見てみます。

「――――――。」

 エルちゃんは私達とおもちゃの杖を交互に見てから、身体を震えさせております。私と葵ちゃんで目配せして、しばらく倒れる事に決めました。エルちゃんは近くに寄って来て、私の身体と葵ちゃんの身体をユサユサと揺らします。

「――――――。――――――!!」

 あれ? 喜ぶと思ってたのですが、何だかエルちゃんの様子が……これは……何だかデジャブです。エルちゃんは突如泣きそうな表情を浮かべます。

「うぅっ……ぐすんっ」

 あ、これは行けません!! 私と葵ちゃんは慌てて起き上がりエルちゃんを抱き締めましたが、時すでに遅しでした。

「ふぇええええええんんんんんっ!!!」
「エルちゃんっ!? よしよし~お姉ちゃん達ちゃんと生きてるから……ね?」

 まさかここまで泣くとは予想外でした……私はエルちゃんを抱っこして優しく背中をトントンとしてあやします。葵ちゃんはエルちゃんの頭を優しくなでなでして、2人で我が家の可愛いお姫様の涙を止めようと必死でした。
    
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