49 / 55
第48話 嗚呼、我が友よ
しおりを挟む
「――ふむ……凄いな。さすがはスピネイル。さすがは魔王の残骸といったところか」
跡形もなく消し飛んだ魔王城の跡地には、息絶え絶えのスピネイルがいた。魔王化しそうだった身体は元に戻っていた。ただ、胸には魔王の瞳が健在であった。ちなみに浮遊大陸のほとんどは衝撃で消し飛んだ。
「ぐ……て、てすらぁ……わ、私は……」
「しゃべるな。そして、動くな」
テスラは、胸へと腕を伸ばす。そして、魔王の瞳を鷲づかみにした。ぎょろりと魔王の目が睨む。だが、それ以上の眼光でテスラが睨みつけた。そして、身体から魔王の瞳を引きちぎる。
「う……ぐぁッ――」
引きちぎったそれを、地面に放り投げるテスラ。生々しい眼球は、すぐに生気を失い、青白い水晶のような物体へと変貌を遂げる。
「スピネイル。意識はあるか?」
「……わ……私の……負けだ。煮るなり焼くなり――」
「いいか? 貴殿はなにも覚えていない」
「な、なんだ……と? ど、どういう――」
「おまえは、魔王の瞳に操られていただけだ。そんな不憫な領主を、私とリークが止めにきただけだ」
「ち、違う――」
「違うかどうかは、敗者の貴殿が決めることではない。私とリークが決めることだ」
……俺に決定権ないですよね? テスラ様が決めてますよね?
「貴殿は優秀な領主だ。国王への比類なき忠誠心と国家の繁栄を願うあまり、突飛なことをしてしまったのだろう」
「テスラ……あなたは……」
「パーティでのことは忘れろ。私の身内にしたことも忘れろ。私にしたことも忘れろ。今日のことも忘れろ。そして、これまでと同じように、立派な領主を務めよ。貴殿よりもクラージュ領に相応しき領主はおらん。――リーク」
「はい」
「おまえも、忘れるよな?」
「まあ、テスラ様がそうおっしゃるのであれば」
「うむ。バニンガの一件は何かの勘違いであったと、民に誤解を解いておけ」
まったく、この人は。どこまでお人好しなんだ。
「な、なぜ……」
「貴殿は、大きな過ちを犯したが、友である私が運良く止めることができた。優秀な人間は、同じ過ちは犯さない。これからのクラージュは、さらなる繁栄を遂げるだろう。私は、それが楽しみなのだ」
「テスラ……ッ! お、おまえは……私を友というかッ!」
「領主をしていれば、こういうこともある。それに、私の力はこういう時にこそ使うものだ」
個人的には、ここまで迷惑をかけたわけだし、ちょっとぐらいお仕置きしてもいいと思った。けど、この人が言うのなら、俺はもう従うだけかな。
「帰るぞ、リーク……っと――」
よろめくテスラ。さすがに疲労困憊のようだ。無理もない。俺は、すかさず肩を貸す。
「……すまんな。おまえには助けられてばかりだ」
「そんなことないですよ。俺は、ちょいとだけ力を貸しているだけです」
この後、俺たちはバルティアの町へと戻る。
そして、スピネイルは心を入れ替え、町の繁栄に力を入れたとか――。
跡形もなく消し飛んだ魔王城の跡地には、息絶え絶えのスピネイルがいた。魔王化しそうだった身体は元に戻っていた。ただ、胸には魔王の瞳が健在であった。ちなみに浮遊大陸のほとんどは衝撃で消し飛んだ。
「ぐ……て、てすらぁ……わ、私は……」
「しゃべるな。そして、動くな」
テスラは、胸へと腕を伸ばす。そして、魔王の瞳を鷲づかみにした。ぎょろりと魔王の目が睨む。だが、それ以上の眼光でテスラが睨みつけた。そして、身体から魔王の瞳を引きちぎる。
「う……ぐぁッ――」
引きちぎったそれを、地面に放り投げるテスラ。生々しい眼球は、すぐに生気を失い、青白い水晶のような物体へと変貌を遂げる。
「スピネイル。意識はあるか?」
「……わ……私の……負けだ。煮るなり焼くなり――」
「いいか? 貴殿はなにも覚えていない」
「な、なんだ……と? ど、どういう――」
「おまえは、魔王の瞳に操られていただけだ。そんな不憫な領主を、私とリークが止めにきただけだ」
「ち、違う――」
「違うかどうかは、敗者の貴殿が決めることではない。私とリークが決めることだ」
……俺に決定権ないですよね? テスラ様が決めてますよね?
「貴殿は優秀な領主だ。国王への比類なき忠誠心と国家の繁栄を願うあまり、突飛なことをしてしまったのだろう」
「テスラ……あなたは……」
「パーティでのことは忘れろ。私の身内にしたことも忘れろ。私にしたことも忘れろ。今日のことも忘れろ。そして、これまでと同じように、立派な領主を務めよ。貴殿よりもクラージュ領に相応しき領主はおらん。――リーク」
「はい」
「おまえも、忘れるよな?」
「まあ、テスラ様がそうおっしゃるのであれば」
「うむ。バニンガの一件は何かの勘違いであったと、民に誤解を解いておけ」
まったく、この人は。どこまでお人好しなんだ。
「な、なぜ……」
「貴殿は、大きな過ちを犯したが、友である私が運良く止めることができた。優秀な人間は、同じ過ちは犯さない。これからのクラージュは、さらなる繁栄を遂げるだろう。私は、それが楽しみなのだ」
「テスラ……ッ! お、おまえは……私を友というかッ!」
「領主をしていれば、こういうこともある。それに、私の力はこういう時にこそ使うものだ」
個人的には、ここまで迷惑をかけたわけだし、ちょっとぐらいお仕置きしてもいいと思った。けど、この人が言うのなら、俺はもう従うだけかな。
「帰るぞ、リーク……っと――」
よろめくテスラ。さすがに疲労困憊のようだ。無理もない。俺は、すかさず肩を貸す。
「……すまんな。おまえには助けられてばかりだ」
「そんなことないですよ。俺は、ちょいとだけ力を貸しているだけです」
この後、俺たちはバルティアの町へと戻る。
そして、スピネイルは心を入れ替え、町の繁栄に力を入れたとか――。
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ズボラ通販生活
ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!
異世界で黒猫君とマッタリ行きたい
こみあ
ファンタジー
始発電車で運命の恋が始まるかと思ったら、なぜか異世界に飛ばされました。
世界は甘くないし、状況は行き詰ってるし。自分自身も結構酷いことになってるんですけど。
それでも人生、生きてさえいればなんとかなる、らしい。
マッタリ行きたいのに行けない私と黒猫君の、ほぼ底辺からの異世界サバイバル・ライフ。
注)途中から黒猫君視点が増えます。
-----
不定期更新中。
登場人物等はフッターから行けるブログページに収まっています。
100話程度、きりのいい場所ごとに「*」で始まるまとめ話を追加しました。
それではどうぞよろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる