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12話 はっ…さっきのは夢…?

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 ぅぅ……ドラゴンに襲われかけて、颯爽と助けてくれたのがイケメンじゃなくて……じ、ジミー。

 …………はっ!? 気が付くと私はベッドの上で寝ていたようだった。

 え、さっきのは夢……? そっか、そうだよね……。
 まぁ乙女ゲームの主人公に転生した私が、実習中にドラゴンに襲われるとか、流石にないよねー!!
 あれ?でも寝てる場所が自分の部屋じゃなくて……学園の医務室みたいな気が……。

「おや、目が覚めたんだね? よかった」
「アンタはあの時のジミー!?」
「いや、そんな名前じゃないけど……」

 あ、間違えた……なんか地味っぽいやつで記憶してたから、うっかりジミーって言っちゃった。
 しかしさっき助けに入ってくれた、地味な茶髪で眼鏡の彼がいるということは……やはりアレって現実だったのね。
 ああ、夢がよかったなぁ……。

「そもそも名乗ってなかったよね。僕は君と同じクラスのチャーリー・クレイ、よろしく」
「なるほど……ジミー・チャーリー・クレイね、覚えたわ」
「うん、大体あってるけどジミーの部分はいらないかな」
「……あっ完全に無意識で、ごめんなさい」

 でも実際チャーリーより、ジミーって感じがしちゃうんだよね。
 まぁどっちもパッとしない名前というのは共通してる気がするけど……。

「ところで話は変わるけど、君ってばアレだけ勢いよく啖呵を切ったくせに、僕がドラゴンを吹っ飛ばした後すぐに気絶しちゃったんだもん。びっくりしたよ~」
「あ……」
「なんだっけ、確か『さぁー、私が相手だ!!掛かってきなさい!!』とか言ってたっけ?」

 そ、そう言えば、そんなこともいったなぁ……恥ずかしい!!

「あー、そんな顔しちゃって、もしかして今更恥ずかしくなった? 個人的にはアレ面白くて好きだったんだけどなぁ」

 こ、この男ニヤニヤして、初対面なのに完全に面白がっている!?
 やっぱりこんなやつジミーで十分よ、少なくとも心の中ではそう呼んでやるんだからっっ!!
 助けてくれたのは確かだけど、それはそれ……!! ゆるさんジミー!!

「…………改めてお礼を言わせて下さい。私の名前はミルフィ・クリミアと申します、今回は助けて下さってありがとうございました」

 しかし、それでも、一応、助けてくれたのは確かなので、ジミーにお礼は言っておく。
 癪にさわるけど、何も言わないってのは良くないからね。一応。

「君さ……」
「なんでしょう?」
「物凄く丁寧な言葉使いが似合わないよね」
「あはは、喧嘩売ってます……?」

 笑顔よ、笑顔、あくまで笑顔。イライラするからこその笑顔。
 そう、これでも私は一応貴族令嬢だもの、この男を一発くらい殴りたいとか全然思ってないから。

「いやいや、さっきまでの方がいいんじゃないってことだよ。君としてもそっちの方がやりやすいんじゃない、クリミアさん?」
「さっきまでって……」
「もう覚えてないの? 随分と砕けた口調だっただろう、ドラゴンに啖呵切った時を含めてさ」
「……」

 コイツ、もうさっきのことを延々と弄りたいだけでは?

「だからさ、もし良ければそうしなよ?」
「……分かったわ、その代わりあとから文句とか言わないでよね」
「もちろん」

 なんでこのジミーは、こんなやり取りだけでムカつくくらい楽しそうなのだろうか。
 いっそ眼鏡を割って、ただの地味なやつにしてやりたい。

「それじゃあ、クリミアさんと話もできたし僕はそろそろお暇しようかな」
「あっそう、よかった」
「よかった……? ねぇ、今よかったって言った?」

 あ……うっかり、ジミーが居なくなってくれそうでよかったという、本音が出てしまった!?
 いくらコイツがムカつくやつでも、わざわざクラスメートを敵に回すのもよくないから、ごまかさないと……。

「いやー、お互い怪我とかがなくてよかったって意味だけど?」
「ふーん……まぁいいや。それじゃあ、また会おうね、クリミアさん」

 そういうとジミーことチャーリーは、それ以上の追求はせず、軽く手を振って医務室から出ていったのだった。

 はぁ……ようやく行ってくれた。
 しかし鬱陶しいというか、腹の立つ男だったなぁ。
 イケメンならまだ多少許せたかもしれないけど、地味眼鏡だったし、イライラするし、正直関わりたくない。

 でも一応、クラスメイトだから一体どうすれば…………よし、決めた。
 ジミーのことは頑張ってメチャクチャ避けるようにしよう……!!

 助けてくれたのは事実だけど、お礼も言ったわけ無理に無理に関わる必要なんてないからね。
 明日からは限りなく他人です。元々他人だし、そういう関係性で問題ないと思うんだ私。

 はい決定!! そういうことで、さよならジミー永遠に……。
 お願いだから、今後私のことを見つけても、絶対に近寄ってきたりしないでね?
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