悪魔な義妹の神乳バブみ

東風北

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第三話 人を呪わば穴二つ

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 凪介を公園に置き去りにした後、大地と美里は二人でホテルへ向かって歩いていた。

 「はっはっはっはっ!傑作だったな!モヤシ野郎のあの顔!」

 「……」
 
 「寝取られてるとも知らずにずっと彼氏面して挙句があの様って、俺だったら恥ずかしくて自殺するわ!はっはっはっはっは!」

 ケタケタと品を欠いた笑い声をあげて凪介を蔑む言葉を並べる大地。
 隣を歩く美里は俯きながら黙って大地の話を聞いていた。

 「……」
 
 「美里もやっとあの陰キャから解放されて良かったな!あんな奴、恥ずかしくて隣歩きたくないもんな!これから俺と堂々と遊びに行こうな!」

 「……あの…………ごめん。今日はやっぱり帰るね」

 終始上機嫌な大地とは反対に、美里はどこか浮かない表情をして大地へ言葉を返す。

 「え?何だよ急に」

 美里から突然連れないことを言われ、戸惑いに似た苛立ち混じりの反応を示す大地。

 「……さっきみたいなことあったし、気分じゃないの」

 「…………え?まさか、今更情が戻ったとか言わないよな?」

 「…………」

 「なになに?実際にボコされた彼氏くんみて罪悪感湧いちゃったわけ??」

 「……………………」

 「今更私は悪者にはなりたくありませんって?そんなムシのいい話通じないって!」

 美里の言葉に語気を荒げて責め立てる大地。その剣幕に気圧される美里だが、何とか大地に意見する。

 「…………だ、だって、乱暴するなんて思わなかった!もっと普通に話し合ってーー」

 「向こうから殴りかかってきたんだから当然だろ!正当防衛だよ!セートーボーエー!!」

 「にしたってやり過ぎだよ!動けなくなった後あんなに蹴らなくたって……。それに、さっきから大地すごく感じ悪いし…………」

 「……んだよ、それ。メンドクセーなぁ。あれくらいでいちいちめくじら立てんなよ」

 徐々に露呈していく優しく、年上らしい余裕のある振る舞いとはまるで違う、刺々しくて品性などかけらもない一面に、戸惑いと怯えを抱く美里。

 「あれくらいって、怪我させてたら問題になってかもしれないんだよ?そうなったらきっと学校から処分だってされるし…………」

 「だったら、全裸にして動画撮って脅しゃ黙るし大丈夫だろ」

 「…………何言ってんの?脅す?それ本気!?」

 「問題にさせない為にはそれしかねーじゃん。他にあんの?」

 「そういうこと言ってるんじゃないよ!さっきから大地おかしい!どうしちゃったの?」

 自分の知っている大地ではない。同一人物なのか疑わしいほどだ。
 目の前にいる男は、浮ついた美里の気持ちが靡いてしまった原因である、凪介にはない、年上らしい余裕と包容力、そして甘く魅惑的なルックスを持つ、大崎大地ーーではなかった。

 「…………はぁぁぁっ。メンドクセーなぁ」

 「ねぇ、大地?」

 「もういいわ。解散。終わり終わり」

 「…………え?」

 「帰んだろ?さっさと行けば?鬱陶しくてかなわん」

 「…………なにそれ」

 「だから終わりだって。シューリョー。解散。そんでこれっきり」

 「…………どういう意味?」

 「そのまんまだよ。ちょうど飽きてきたし。頃合いだわ。ま、お前よりいい女、俺の周り腐るほどいるし別にいいわ」

 「え?」

 大地の言葉を聞いた美里は一瞬理解が追いつかない。
 今しがた言われた言葉を頭の中で何度も反芻する。

 「…………どういう、こと?」

 大地の台詞を再び聞き返す作業は決して理解していないからではない。
 
 ーーこれは明確な逃避行動だ。
 
 今日までたった数ヶ月とはいえ、凪介を裏切ってまで一緒に過ごし、自らの初めてを捧げた男が"そういう輩"だった。そうだとしたらーー?
 ただでさえ凪介にした仕打ちに対し、強い罪悪感を抱いている今、その原因が目の前の男のただただ愚鈍な悪意に自分が弄ばれただけだとしたらーー?
 
 美里の中で最悪の場合を想定した無意味な自問自答が繰り返される。
 
 時間稼ぎにも似た美里の必死の抵抗は虚しく、最も避けたい答えが美里に突きつけられる。

 

 「だ・か・ら!言葉の通りだよ!お前とはもう終わり!これっきり!メンドクセーし、ヤれねーなら用ねーって!」

 「……………………」

 「何?泣いてんの?モヤシ彼氏にさっき同じことしてきたじゃん。被害者ぶったっておせーんだよ」

 無意識に涙が流れていた。
 泣きたかったわけではない。女の意地か、最後、弱みは見せまいとグッと目に力を入れたはずが、意思に反して涙は流れていた。

 「な……んで」

 「何でって、ちっと可愛かったら一発ヤッときたいじゃん?それだけだよ」

 「……………………」

 「お前みたいなバカ女はチョロくてマジ助かるわ。彼氏いんのに平気でパカパカ股開くんだもん。お前にはモヤい彼氏くんがお似合いだよ。今から謝って抱いてもらえば?使い古された中古品ですがよろしくってさ。はははははっ!」

 大地の心ない本音を浴びせられ、ただ涙を流して聞き入るしかできない美里は、自分が凪介に何をして、どれほど傷つけたのかを皮肉にも今この瞬間、我が身を持って知った。

 「んじゃ、二度と連絡してこないでね。メンドーな女と関わりたくないから♪」

 立ち尽くす美里を置いて大地は去ってしまう。
 美里はただ呆然としている。自分が何をして何をされて、何を失ったのか。ショックのあまり鈍った頭で必死に思考し、自分は決して被害者になれないことを痛感するのだった。
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