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最終回 美醜逆転異世界で、非モテなのに前向きな騎士様が素敵です。
しおりを挟む(......ゆい......ゆい......ラインハルトの生まれ変わりを、幸せにしてくれてありがとう......)
どこからともなく声が聞こえる。
聞こえるというより頭に響いているみたい。
......誰?
(私は女神と呼ばれる者。あなたの愛する人は、私の愛する人の生まれ変わりよ)
生まれ変わり?
(そう。私の愛する人の子孫です。この世界で苦労しているようだから、私の世界からふさわしい人を探し出したの。それがあなたよ)
貴女は日本から来た人なのですか?
(そう。貴女と同じ世界から来たの。ずっと昔のことだけれど。ラインハルトと私はこの国を創りし者。没後もこの地に留まって、国の行く末を見守っているわ。)
そんなすごい人が、私をこの世界に呼んだのですか?
(あなたは前の世界に居たままでは、内にこもっていたから生涯伴侶は現れない運命だったのよ。
だからあなたを連れて来たのだけれど、あなたには家族がいたし、あなたの内向的な性格から、この世界に馴染めるか不安があったの。
だから万が一、あなたが馴染めないようだったら、元の世界に戻そうと思って言葉を封印していたのよ。こちらの言葉に染まってしまうと、元の世界に戻せなくなってしまうから。
だけどあなたは見事に自分の殻を破ったわ。ここ最近のあなたの積極的な行動はとても素敵だったわよ。
あなたなら、生まれ変わりを幸せにできるし、あなたも幸せになれると判断しました。
これであなたの封印を完全に解きます。いいですね?)
あの、封印を解いたら、もう、前の世界に帰れないのですよね?
(帰りたいのですか?)
......いいえ、ですが、私がいなくなった後の、家族が心配で......。
私を探して、毎日泣いているんじゃないかって......。
(それは大丈夫。あなたには辛いことだと思うけれど、完全に封印を解いた時点で、あなたの家族や知人から、あなたという存在の記憶は消去されますから)
私の記憶がパパやママ、お姉ちゃんから消える......。
それでも、行方不明で悲しまれるよりはいい......。
女神さま。私の記憶は残りますか?
(あなたが辛いなら、消してもいいですよ)
いいえ、辛くてもいいです。セディが傍にいてくれるから。
大好きな家族を忘れたくありません。記憶は、消さないでください。
(分かったわ。ゆい、強くなったわね。生まれ変わりとともに、幸せにおなりなさい)
そこまでで女神さまの声は聞こえなくなったーー。
◇◇◇
「ゆいっ!ゆいっ!!」
愛しい人の声で意識が覚醒した。
「セディ......?」
「ごっ、ごめん!!抑制がきかずにゆいを気絶させてしまった......!大丈夫か?」
「私......?」
そうだ、私、セディとキスの最中だったはず......。
セディの舌が入って来て、頭がぼうっとして......。
「セディ、私、気を失ってどのくらい経ちますか?」
「え、そうだな、1、2分くらいだとは思うが...... 」
そんなに短い時間だったのか......。
「セディ、私、せっかく貴方が素敵なセカンド・キスをしてくれたのに、ぼうっとして記憶に残っていないの。だから、もう一度、してくれませんか......?」
「えっ?今、気絶したばかりなのに大丈夫か?......それに、その話し方......」
「セディ、詳しいことは後で話しますから。だからお願い...... 」
私は手を伸ばしてセディを求めた。
ふたりで盛り上がっていた所、ドアがノックされ、ハッとふたりで我に帰る。
セディがドアを開けた所、ママさんが心配そうに部屋に入って来た。
「ゆいちゃん、大丈夫?息子が自制心を失って、ゆいちゃんに乱暴していたらいけないと思って来たのよ」
「ママさん、心配してくれてありがとうございます。でも大丈夫です。セディは紳士だし、それに......セディなら、少しくらい紳士じゃなくても構わないですから」
私が流暢に言葉を話しているのでママさんは驚いていた。
「まあまあ。うまく喋るようになったわね。でもダメよ。息子を甘やかしすぎては」
「ママさん、私、セディに厳しくなんてできないです。だって、もっともっと幸せにしてあげたいから」
セディは私たちの会話に、顔を真っ赤にして震えていたーー。
◇◇◇
それから7年後ーー。
「カインー!カインどこお?」
3歳になる私の娘がお兄ちゃんを探している。
庭の植木を回ったところで娘は足を止めた。
(パパとママ?)
薔薇のアーチの向こうで、ふたりが何か話しながら笑いあっている。
娘は、私たちを見つけて駆け寄ろうとしたのだけれどーー。
「メアリ。行っちゃダメだよ」
5歳のお兄ちゃんがメアリを止めた。
「どうして?」
お兄ちゃんは内緒話をするように、小声で言った。
「パパとママは、今は恋人タイムだからね」
「コイビトタイム?」
「そう。仲良しパパとママは、すぐにくっついてイチャイチャしようとするから、メアリのいないところでやってよって言ったんだ」
「どうして私のいないところじゃなきゃいけないの?」
「メアリはまだ、子どもだから」
お兄ちゃんに子供扱いされたメアリは頬を膨らまして言う。
「何よ!お兄ちゃんだって子どもじゃないの!」
「俺は男だからいいんだよ」
「えーっ!そんなのズルい!」
お兄ちゃんは、メアリの頭を撫でながら、優しく宥めるように言って聞かせた。
「そうだな、メアリがあと10年経ったら、ママが書いているお話を読んだらいいよ。そうしたら、コイビトタイムって何かが分かるからね」
◇◇◇
そう、私は女神さまから封印を解かれ、話すだけではなく読み書きが完璧にできるようになっていた。
私は守られる身なので、働きに行くわけにもいかないし、先代さまのように秘書の仕事ができるわけでもなかった。
だけど国のお世話になるだけなのは嫌だったので、前の世界で培った小説を書いてみたのだ。
処女作は、美醜逆転の世界に迷い込んだヒロインのお話で、この世界にない設定が受けて大ヒットとなったのだ。
(稀人が書いていると言うのは秘密にしてある)
このお話を書いたおかげで、最近はこの世界の醜い人への風当たりがいくらか優しくなったと噂に聞いた。
そんな訳で、私もいくらか収入を得られるようになり、度々セディに贈り物をしてあげることができるようになった。
その、最初のお話のタイトルは、
【美醜逆転異世界で、非モテなのに前向きな騎士様が素敵です】
~THE END~
長い間、読んでくださってありがとうございました!
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面白かった、笑った、楽しかった、少し泣きそうになりました
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にゃんこさん、コメントありがとうございます。
ずいぶん前に書いた作品で、文章が未熟なもので、お恥ずかしゅうございます。
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南さん、コメントありがとうございます。
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この2人のお話をしっかり完結してくれてありがとうございます…((拝み
Reikaさん、こちらも読んでくださったのですね、ありがとうございます!
クレアも異世界では醜女なんで、性格がひねくれてしまっているようです。
誰も利益なしに結婚なんかしない。そう思っての言動かと。
私は悪人書くのあまり得意じゃないんですが、クレアは本当に嫌なやつに仕上がったと思います笑