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初デートです⑶

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私とセディは馬車の中で、向かい合って座っている。

これから初めてのデートをするのだと思うと、お互い変に意識してギクシャクしていた。


(いつもと違ってドキドキしちゃう。何か話さないと気まずいわ)
私は意を決してセディに話しかけた。


「あ、あの、セディ。きょうはどこつれていってくれるですか?」

するとセディはちょっと済まなそうに眉を下げた。

「それなんだが......。こんなにゆいが綺麗にしてくるとは思っていなくて......。実は動物園に連れて行くつもりだったのだが、もっとしゃれた場所の方が良かっただろうか?」

「あ...... 」

私はカアッと顔を赤くした。
行き先も確認せずにめかしこんで、なんて恥ずかしいことをしてしまったんだろう!

「ご、ごめんなさい、わたし、はりきりすぎて......。ウレシかったからつい...... 」

私が尻つぼみにそう言って俯くと、セディが慌てたように言った。

「い、いや!俺が悪いんだ!行き先をちゃんと言って、ラフな格好で来てくれるように話しておくべきだった。まともなデートなんて、数えるほどしかしたことがなかったから、気が利かなくて......すまなかった」

セディは数えるほどでもデートしたことがあるんだ......。
私は彼氏ができたことすら初めてなのに......。

軽いショックに打ちのめされていると、セディが遠慮がちに言った。

「マークが女性には観劇とか人気歌手のオペラ鑑賞とかをと勧めてくれたんだが、ゆいには言葉がまだ十分わからないだろうから、単純に見て楽しめるものの方が良いかと思ったんだが。俺がこんなラフな格好でも良ければ、行き先を変えようか?」

「わ、わたし、どうぶつスキです。どうぶつえんがイイです」

こちらの言葉がよくわからないのにそんな洒落た所へ行っても疲れそうだ。

ちゃんとそんなことまで考えてくれたセディのデートコースを楽しみたい。

私がそう言うと、セディはニコリと微笑んで、

「分かった。じゃあ、せっかく綺麗に着飾ってくれたから、まずは商店街を歩こう。そしてそこでラフな服をプレゼントする。そこで着替えて動物園、ていうのでいいだろうか?」

「ありがとです!セディ」

やっぱりセディといれば頼りになるなあ。安心して一緒に居られるわ。

セディは御者に行き先を告げると、私にポツリと言った。

「せっかく時間をかけてお洒落してくれたのに、本当にごめんな」

「ううん、セディにオシャレしたところ、みてもらいたかっただけ。それはもう、かなったから」

私がそう言うと、セディは頬を赤らめて言った。

「うん。ゆいの綺麗な姿は目に焼き付けた。......綺麗な足が出てしまっているから、実はあんまり人混みの中を連れて歩きたくなかったんだ。他の男がそこを見るのが嫌だったから」

私はそんな風に言われて恥ずかしくなり、思わずバックで足元を隠した。

「ん......、こんどから、アシださないふくをかうです」

「そうしてもらえるとありがたい......」

私たちはまた、照れ合ってギクシャクしてしまった。




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