上 下
19 / 45

私の想い、伝えます。

しおりを挟む


【もしもあなたが、この世界でとても美しい人を好きになったなら、その人は醜いというだけで理不尽な目に遭いたくさん傷ついている人だと思って下さい。これまで諦めたものも、普通の人よりはるかに多いと思います。
だからそのような人には、言葉の駆け引きなど伝わりません。具体的な言葉で、誤解できないほどハッキリと好意を伝えて下さい。そして、一度だけでなく、何度も何度も、好意を示し続けなければ、相手は愛されている実感を持ちにくいと思います。日本人には難しいことかも知れませんが、そんな夫を持った私からの、上手くいく夫婦の秘訣だとでも思ってもらえたらと思います】

先代様。
アドバイスをありがとうございます。

私、自分の思いを外に出すのがとても苦手だけれど、セディに相応しくありたいから頑張ります。

「セディ。ノート、ありがとです。すごく、たすかりました」

「そうか。それなら持って来て良かった」
セディはにこりと笑って言った。

「……セディ、まだ、じかんある?わたし、セディにはなしある」

セディは少し硬い表情になったけど、「大丈夫だ」と言った。

私はセディの顔を、目を逸らさないように頑張って見つめた。

……でも、やっぱり急には無理で。
心臓が口から出てしまいそうなので、持っていたノートで顔を隠した。

「セディ、わたし、かおかくす、はずかしいから。あなたのことさけているではない。しんじてくれる?」

「……ああ……」

やや自信なさげだけど、セディは返事をしてくれた。

「ありがと。……では、いまから、わたしのキモチ、いいます。さいごまでゼンブ、きいてクダサイ」

「分かった」
神妙な面持ちでセディが返事をした。

「わたしは、あなたがすき、です」

「……っ!」

セディが息を飲むのが分かったけれど、私は構わずに続ける。

「わたしは、あなたのカオ、とてもすきです。あなたのすたいる、とてもカッコいい。あなたのカミのいろ、ひとみのいろもキレイです。あなたのみため、ぜんぶ、ぜんぶすきです」

私はノートを顔に当てているから、セディの反応が分からなかったけれど、何も言わずに聞いてくれているみたいだ。

「それから、あなたのなかみは、もっとすき、です。ゆうきがあって、おとこらしくて、がんばりやさん。すっごくやさしい。だいすき、です。わたし、うちきで、はなすのがニガテです。でも、あなたにふさわしくなるよう、がんばる。だから、わたしのごえい、なってくれますか?」

「 ………… 」

返事がない。
どうしよう、もうダメだった?

私は恐る恐るノートを下ろして、セディを見た。

「……っ ‼︎ 」

なんと、セディは真っ赤になって、そして滝のように溢れる涙をこぼしていた。

「セディ ⁈  どした?どっかイタイか?」

私はベッドから降りて、セディの足元へ歩み寄った。

「ああ……痛いんだ……。ゆいが、信じられないようなことを言ってくれたから、俺の胸が痛くてしょうがないんだ」

「セディ?ダイジョブ?なかないで?……わたし、どうしたらいい?」

私はどうしていいかわからずオロオロしていたけれど、心の中で自分に言い聞かせる。

(私は妖艶美女よ!セクシー女優なら、こんな時どうするの ⁈ )

私は思い切って、座っているセディの頭を抱きしめた。苦しくないように、ふんわりと。そしてセディの頭を優しく撫でた。

「あなたのむねをいたくして、ごめんね。いっぱいヨシヨシするから、なかないで、セディ」

私は何度も何度も好きだよ、と言いながらセディの頭を撫で続けた。



……その頃壁にマネキンとなっていた侍女は、真っ赤になり震えていたーー。



しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

天使は女神を恋願う

紅子
恋愛
美醜が逆転した世界に召喚された私は、この不憫な傾国級の美青年を幸せにしてみせる!この世界でどれだけ醜いと言われていても、私にとっては麗しき天使様。手放してなるものか! 女神様の導きにより、心に深い傷を持つ男女が出会い、イチャイチャしながらお互いに心を暖めていく、という、どう頑張っても砂糖が量産されるお話し。 R15は、念のため。設定ゆるゆる、ご都合主義の自己満足な世界のため、合わない方は、読むのをお止めくださいm(__)m 20話完結済み 毎日00:00に更新予定

私は女神じゃありません!!〜この世界の美的感覚はおかしい〜

朝比奈
恋愛
年齢=彼氏いない歴な平凡かつ地味顔な私はある日突然美的感覚がおかしい異世界にトリップしてしまったようでして・・・。 (この世界で私はめっちゃ美人ってどゆこと??) これは主人公が美的感覚が違う世界で醜い男(私にとってイケメン)に恋に落ちる物語。 所々、意味が違うのに使っちゃってる言葉とかあれば教えて下さると幸いです。 暇つぶしにでも呼んでくれると嬉しいです。 ※休載中 (4月5日前後から投稿再開予定です)

私が美女??美醜逆転世界に転移した私

恋愛
私の名前は如月美夕。 27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。 私は都内で独り暮らし。 風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。 転移した世界は美醜逆転?? こんな地味な丸顔が絶世の美女。 私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。 このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。 ※ゆるゆるな設定です ※ご都合主義 ※感想欄はほとんど公開してます。

転生したら美醜逆転世界だったので、人生イージーモードです

狼蝶
恋愛
 転生したらそこは、美醜が逆転していて顔が良ければ待遇最高の世界だった!?侯爵令嬢と婚約し人生イージーモードじゃんと思っていたら、人生はそれほど甘くはない・・・・?  学校に入ったら、ここはまさかの美醜逆転世界の乙女ゲームの中だということがわかり、さらに自分の婚約者はなんとそのゲームの悪役令嬢で!!!?

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

千年に一度の美少女になったらしい

みな
恋愛
この世界の美的感覚は狂っていた... ✳︎完結した後も番外編を作れたら作っていきたい... ✳︎視点がころころ変わります...

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

ただ貴方の傍にいたい〜醜いイケメン騎士と異世界の稀人

花野はる
恋愛
日本で暮らす相川花純は、成人の思い出として、振袖姿を残そうと写真館へやって来た。 そこで着飾り、いざ撮影室へ足を踏み入れたら異世界へ転移した。 森の中で困っていると、仮面の騎士が助けてくれた。その騎士は騎士団の団長様で、すごく素敵なのに醜くて仮面を被っていると言う。 孤独な騎士と異世界でひとりぼっちになった花純の一途な恋愛ストーリー。 初投稿です。よろしくお願いします。

処理中です...