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いつまでも可愛い人
しおりを挟む「冬誠さん......やっぱり私、無理です......許してください」
「だめだよ。これから毎日やってもらうって言っただろ? さぁ言って」
美春は真っ赤になり、涙目でイヤイヤをするが、俺は美春に要求し続けた。
「やだぁ~っ、できないっ!」
「美春はやっぱり......俺のこと、好きじゃないんだな。俺ばかり、美春に愛を囁いているもんな」
俺は心に余裕ができたせいで、こんなふざけたセリフを言って、沈んだ演技までして美春におねだりしている。
「ち、ちがっ......! 好きです! 大好きです!」
可愛い美春は、慌てたように言えなかった言葉を発した。
「美春、ちゃんと言えたじゃないか。さぁ、もう一回、ちゃんと言って。俺だけが好きだって」
「うう......好きです......冬誠さんだけです......」
美春は蚊の鳴くような小さな声で呟いた。ーーうわ、なんて可愛いんだ! もっと聞きたい!
俺は心の中で悶えながら、さらに美春におねだりした。
「そんな小さな声じゃ聞こえなかったよ。ちゃんと俺に聞こえるように言って?」
俺は美春の頬を両手で包み、上向かせて強制的に俺と目線を合わせた。
美春はそうされたことで、ますます恥ずかしさが募り、ついにポロリと涙を一粒こぼして言った。
「好きです......冬誠さん.....あなただけ、あなただけです......他には誰も目に入らない......」
そう言うと、美春の綺麗な瞳から、次々と輝く涙がこぼれ出た。ーーなんて美しい涙だろう。
「美春......! 俺も出会った時から美春だけだ。そしてこれからも、ずっとずっと愛していくから......!」
俺はそう言うと、美春の涙を唇で拭っていく。その後、目尻にキスをして、美春に言った。
「これから長い時を経て、君が人生を振り返る時、俺と結婚して良かったと、そう思ってもらえるように努力する」
俺は改めて心に決めたことを美春に誓った。
すると美春の瞳からは、ますます涙がこぼれ、綺麗な顔をくしゃりと歪ませて言った。
「ありがとう......冬誠さん......。私、あなたと出会えて、結婚できて本当に幸せです」
こうして俺たちは、甘く、熱い新婚生活を得て、新しい家族を迎えた。
長女の千夏と長男の秋生。
二人の子供を授かったことで、俺たちの愛は熱く激しいものから穏やかなものへと変化していった。
けれどその間、二人で乗り越えた様々な困難によって、さらにお互いを信頼し絆は深まっていく。
そうして子供たちもすっかり大きくなり、俺も歳を取って50歳になった。
「パパー、50歳のお誕生日おめでとう~!」
二人の子供たちは、問題が全くないわけではないが、優しい良い子に育ってくれた。俺は娘と息子に祝われ、楽しい時間を過ごしていた。
「......このアイドルグループのリーダーすごくカッコイイ。私、こんな人と付き合いたかった......」
俺の奥さんはもう42歳になったが、相変わらず美しく可愛らしい。子供たちが俺をチヤホヤするので、奥さんは拗ねているようだ。一人背を向け、テレビを見ながら美春が聞こえよがしに独り言を言っている。
「なあに、またママのかまってアピール? そんなアイドルなんて、全然かっこ良くないって、パパの方が何百倍もかっこいいって、昨日言っていたじゃないの」
娘の千夏がそう言うと、美春は慌てたようにこちらに来て千夏の口を塞いだ。
「やだぁ~、どうしてパパの前でそんなこと言うのっ! 酷いわ、ちなっちゃん!」
美春は顔を赤くして叫んだ。
「今更隠したって、パパには筒抜けだよ。昨日、俺がパパのこと、少しハゲてきた白髪のおっさんなのに、このアイドルよりかっこいいとかありえないって言ったらママにビンタされたって告げ口しといたんだから」
「いやぁ! アッキーったら、なんてことパパに言うの! パパ、薄くなってきたこと、気にしてるのよっ?」
美春は秋生の両肩を掴んで、ガクガクと揺さぶりながら怒った。秋生は慣れているので平気な顔で続ける。
「だからちゃんとフォローもしたって。ママがたとえ全部髪がなくなっても、パパが一番かっこいいって言ってたよって」
「いやあぁぁぁぁっ! アッキーのばかぁ! パパに......パパに、そんな恥ずかしいこと言わないでぇ!」
美春は真っ赤な顔から湯気を出しそうな勢いで、秋生をポカポカと殴った。
「パパ、ママがうざいから、今度二人でデートしてきなよ」
「そうだな。ここしばらく仕事が忙しかったしな」
俺は美春のそばへ行き、美春の手を取って手の甲にキスをした。
「俺の素敵な奥さん、今度のお休み、二人っきりで食事に行きませんか? その後、よろしければ映画でも見ませんか?」
俺がそう言うと、美春は瞳を輝かせ、パアと顔を綻ばせた。相変わらず花が綻ぶような、美しい笑顔だ。
「パパっ、本当ですか? 嬉しいっ......!」
顔をくしゃりと歪めて嬉しそうに言う妻に、俺は子供たちに聞こえないように、小さな声で耳元で囁いた。
「さっき、君は浮気なことを言ったね。デートの後、お仕置きしなければならないから、覚悟していて」
俺はこの可愛い人に、飽きることなくゾッコンである。
~終わり~
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