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絶世の美女が、俺の部屋に泊めてくれと言うんだが(困惑)。
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「お願いです! しばらくここにおいてくれませんか?」
女性は、意を決したように雅人に言った。
「えっ?」
雅人は面食らって言葉を失う。
(何を言うんだ、この女性は。見ず知らずの男の部屋にいさせてくれなどと。普通でもあり得ないことだが、よりによって他人から疎まれるような、不細工男の部屋にいさせてくれなどと)
雅人は心の中で考えを巡らせ、女性を諭すように語りかけた。
「......あなたのご家族は? こんな男の部屋にいたら、ご両親が心配しますよ」
「親はいません」
「ご兄弟や親戚は?」
「親戚はいますが、両親とは関係が断たれた間柄ですから、今も音信不通です」
「......それは本当なのですか?」
「本当です。信用してもらえないなら、戸籍抄本取ってきて見せます」
雅人はどうしたものかと悩んだ。もしも嘘で、ただの家出とかだった場合、親切で泊めているだけでも、俺がこんな容姿だから犯罪者に間違われる可能性が高い。それに何か問題を抱えた人だったら、巻き込まれる可能性があるし......。
それでも、このまま断って放置したら、この美しさだ。さっきみたいな輩に捕まって、骨までしゃぶられてしまいかねない。雅人は小さくため息をついて、目の前の女性に言った。
「......とりあえず、中に入って。お話だけは、聞かせて貰います」
「なるほど。それは困った問題ですね」
雅人と女性は、リビングのソファに向かい合って座っている。暖かいお茶が入れてあったが、話している間に冷めてしまった。
「お茶が冷めてしまいましたね。入れ直してきましょう」
「すみません。......ありがとうございます」
キッチンで急須に茶葉を入れながらどうすべきか考える。
ーー女性の話を要約するとこうだ。
女性の名は藤吉愛羅、22歳。15分ほど歩いた辺りのアパートで一人暮らしをしているそうだ。歯科衛生士としてちゃんと働いているらしい。両親は、二十歳の時に事故で亡くなり、以後一人で暮らしていると言う。遺産はほとんどないが、生命保険が入ったため生活には困ってないらしい。兄弟姉妹無し。父は日本人で母がイギリス人だったそうで、金髪碧眼は母譲りだとか。そんな見た目だけど、ずっと日本で暮らしているから英語はあまり得意ではないとのこと。
そこまではいい。問題は、ここからだ。
最近、どうもストーカーらしき人に付きまとわれているらしく、今日はアパートにまでそいつがやってきてしまったらしい。もともと歯科に通って来ていた男で、何度か付き合いを申し込まれたが、好みでないので断っていたのだそうだ。だがそのうち電話番号を調べられ、留守電が残されるようになったり、しつこく携帯のアドレスを聞かれたりして困っていたところ、ついに家を突き止められてインターホンが鳴らされた。ドアスコープから覗いてその男だと分かった彼女は、恐ろしくなって反対側のベランダから逃げて走ってきたため裸足だったそうだ。
足が痛くなってあのベンチで休んでいたところ、さっきのチャラ男たちにナンパされたらしい。俺のような不細工も苦労が多いが、美しすぎるのも大変なんだなと同情心が湧いてしまった。あの美しさで一人暮らしは確かに危険だ。今の問題が片付いても、きっとまた似たようなことが起きるに違いない。
「はて、どうしたものか」
雅人はヤカンから湯を注ぎながら、独り言を呟いた。
女性は、意を決したように雅人に言った。
「えっ?」
雅人は面食らって言葉を失う。
(何を言うんだ、この女性は。見ず知らずの男の部屋にいさせてくれなどと。普通でもあり得ないことだが、よりによって他人から疎まれるような、不細工男の部屋にいさせてくれなどと)
雅人は心の中で考えを巡らせ、女性を諭すように語りかけた。
「......あなたのご家族は? こんな男の部屋にいたら、ご両親が心配しますよ」
「親はいません」
「ご兄弟や親戚は?」
「親戚はいますが、両親とは関係が断たれた間柄ですから、今も音信不通です」
「......それは本当なのですか?」
「本当です。信用してもらえないなら、戸籍抄本取ってきて見せます」
雅人はどうしたものかと悩んだ。もしも嘘で、ただの家出とかだった場合、親切で泊めているだけでも、俺がこんな容姿だから犯罪者に間違われる可能性が高い。それに何か問題を抱えた人だったら、巻き込まれる可能性があるし......。
それでも、このまま断って放置したら、この美しさだ。さっきみたいな輩に捕まって、骨までしゃぶられてしまいかねない。雅人は小さくため息をついて、目の前の女性に言った。
「......とりあえず、中に入って。お話だけは、聞かせて貰います」
「なるほど。それは困った問題ですね」
雅人と女性は、リビングのソファに向かい合って座っている。暖かいお茶が入れてあったが、話している間に冷めてしまった。
「お茶が冷めてしまいましたね。入れ直してきましょう」
「すみません。......ありがとうございます」
キッチンで急須に茶葉を入れながらどうすべきか考える。
ーー女性の話を要約するとこうだ。
女性の名は藤吉愛羅、22歳。15分ほど歩いた辺りのアパートで一人暮らしをしているそうだ。歯科衛生士としてちゃんと働いているらしい。両親は、二十歳の時に事故で亡くなり、以後一人で暮らしていると言う。遺産はほとんどないが、生命保険が入ったため生活には困ってないらしい。兄弟姉妹無し。父は日本人で母がイギリス人だったそうで、金髪碧眼は母譲りだとか。そんな見た目だけど、ずっと日本で暮らしているから英語はあまり得意ではないとのこと。
そこまではいい。問題は、ここからだ。
最近、どうもストーカーらしき人に付きまとわれているらしく、今日はアパートにまでそいつがやってきてしまったらしい。もともと歯科に通って来ていた男で、何度か付き合いを申し込まれたが、好みでないので断っていたのだそうだ。だがそのうち電話番号を調べられ、留守電が残されるようになったり、しつこく携帯のアドレスを聞かれたりして困っていたところ、ついに家を突き止められてインターホンが鳴らされた。ドアスコープから覗いてその男だと分かった彼女は、恐ろしくなって反対側のベランダから逃げて走ってきたため裸足だったそうだ。
足が痛くなってあのベンチで休んでいたところ、さっきのチャラ男たちにナンパされたらしい。俺のような不細工も苦労が多いが、美しすぎるのも大変なんだなと同情心が湧いてしまった。あの美しさで一人暮らしは確かに危険だ。今の問題が片付いても、きっとまた似たようなことが起きるに違いない。
「はて、どうしたものか」
雅人はヤカンから湯を注ぎながら、独り言を呟いた。
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