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舞踏会というものに参加しました。

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天井に、いくつも並んだ豪華なシャンデリアから放たれる光が、大理石の床に反射して会場を煌びやかに演出している。

会場内には楽団が奏でる明るい音楽が流れ、色とりどりのロングドレスを着たご令嬢と、燕尾服を纏った紳士が大勢いて、それぞれに交流を楽しんだり、ダンスを踊ったりしている。

私は久しぶりにアスラン様と離れ、アメリアさんと二人、光沢のあるサーモンピンクのテーブルクロスが掛けられた丸テーブルの隅で、飲み物を頂きながらその様子を眺めていた。

映画やアニメで見たことがあるような場面だけど、違っているのはやっぱり人々の容姿だ。

男性は太っちょかもやしで、女性は美人がほとんど。1割くらいぽっちゃりさんが混ざってる。

女性の美人はこの世界ではたくさんいて〝普通〟なのだから、羨ましいような、残念なような複雑な気持ちになる。

数が少ないぽっちゃりさんはセクシー系美女らしい。私のような普通系の美少女(笑)はいないみたい。

男性も〝普通〟や〝イケメン〟がいないから、アスラン様がこの場にいたならさぞかし目立ってカッコ良いことだろう。アスラン様のプリンスジャケット着たお姿を見てみたかったな~。はあ。


そう思いつつも、この世界の容貌にだいぶ慣れてきている私は、このゴージャスな光景に興奮し、楽しんでいた。

「舞踏会を実際に見られるなんて感激~。私社交は苦手だけど、見るのは好きなのよね~」

私がウキウキしながらそう言うと、アメリアさんは笑って言った。

「みく様、見ているだけではダメでしてよ。宰相様に、訓練の成果を見せてもらうと言われたでしょう?」

「ルドルフって、どこからか見ているのかしら?」

「陛下がお出ましになる前に、こちらへ一度顔を出されると伺っていましたが......」


そうこう言っていると、会場の入り口がざわついた。

女性たちみんながざわついている。

「宰相のルドルフ様よ! 見て! あの精悍なお姿! ......だけど珍しいわね? お一人で舞踏会の会場をお歩きになるなんて。いつもは陛下にピタリと侍っておられて、低い場所などにはいらっしゃらないのにね」

「本当ね。彼はもう30歳になると言うのに、いまだ正妻を娶っておられないし、いよいよお相手を見つけようと動き出されたのかもしれないわ!」

以前、ルドルフは、「自分は女性から求められる存在だ」とか偉そうに言っていたけれど、本当にそうだったとは驚いた。若い人も熟女もみんな彼に目が釘付けだ。

そんなルドルフは、いつもの俺様腹黒はどこへやら、爽やかな笑顔で時々挨拶を交わしつつ、こちらに向かって歩いてくる。

「え、アメリアさん、ルドルフってばこっちに向かって来てない?」

私が青い顔をして言うと、アメリアさんは苦笑いで答えた。

「......みく様のダンスの試験は、直接実技が行われるみたいですわね」

ええっ、この空気の中ルドルフと踊るの? このたくさんの視線を集める男と踊るのは嫌だ~!

私はどうか通り過ぎてくれと願っていたが、やはりその願いは叶わなかった。

「レディ。一曲私と踊っていただけますか?」

私の前に来ると、ルドルフは断るのは許さないと言った黒いオーラを纏った笑顔で腕を差し出して来た。

「はい......喜んで」

私は周りのご令嬢たちから突き刺さるような視線を感じつつも、そう答えるしかないと観念してルドルフの腕に手を添えた。

忙しい宰相のルドルフが、自分の時間を削って教えてくれたダンスだ。上手くとまで行かなくても、失敗しないように踊りたい。

私はルドルフに会場の中心近くまで連れていかれた。その時ちょうど音楽が緩やかなワルツに変わったのにほっとしながらルドルフのリードに合わせてステップを踏んだ。

「......なかなか出来上がっているじゃないか。あれからもちゃんと練習を続けたんだな」

「はい。アスラン様が、時間を作ってはお相手してくださったので」

ルドルフは頷いて見せると、声を落として話し始めた。

「今日は、アスラン殿下はとても重要な任務をこなされる。だからお前を連れて動けないが、ここにいれば安全だ。今日はほとんどの警備がここに集まっているからな」

「はい、わかっています」

いくら私がずっとそばにいたいと言ったって、限度がある。カンガルーの親子じゃないんだから、そのくらい我慢できるよ。

「だが、用心のため、今日踊るのは私とナディル殿下だけにしておけ。他のやつから誘われたら、約束があると言って断るように。それから会場の外には出るな。一人きりにもなるな」

「......はい、分かりました」

ルドルフはそれを伝えたかったようで、用は済んだとばかりに大きな声で話し始めた。

「しかし、いつもとは違って、今日はなかなか綺麗じゃないか。いつもそのように着飾っておれば、もう少し良い女に見えるのにな」

「それは褒めているんですか、貶しているんですか。まあ、どちらでも構いませんけど」

ルドルフに綺麗だと言われてもそんなに嬉しくもないから、私は適当に流して、ルドルフに聞いた。

「さっき、ルドルフ様のファンらしいご令嬢が言っていたのを小耳に挟んだのですけど、ルドルフ様はおモテになるのに未だ独身なのですってね。どうしてご結婚なさらないのですか?」

「ふん、余計なお世話だ。私は国を守るのが第一。女のことなどにいちいち構ってはいられないからな」

「でも、お仕事が忙しい分、癒しも必要でしょう?」

「お前に心配されずとも、私に癒しをくれる女は大勢いる」

「あ~、愛人ってやつですか? 変なの。そんなの作るなら、そのうちの誰かを正妻にすればいいのに」


そんな話をしているうちに音楽が終わってしまった。

「......私が気に入った女に限って、手に入れることができないのだから、仕方がなかろう」

曲が変わって、周りの男女が入れ替わったりしてざわついているのでルドルフの呟きが聞こえなかった。

「ルドルフ様、何かおっしゃいましたか?」

「いや。私は陛下のもとへ行かねばならないから戻ると言ったのだ」

「そうですか。ルドルフ様、ありがとうございました。今回の試験の結果は合格でしょうか?」

「まあ、甘くつけて合格といったところだな」

ルドルフはそう言って、会場から去っていった。




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