王宮の片隅で、醜い王子と引きこもりライフ始めました（私にとってはイケメン）。

実はまだ、狐ではないかと疑っている⑵ 〜アスラン視点

私は宰相たちが諦めて、もう奴隷を寄越して来ないだろうと踏んでいた。

だが万が一、また連れてきてしまった時は、最初の奴隷のように逃がしてやろうと思っていた。

そしてまた、連れて来たらまた逃がす。

それを繰り返していれば、向こうもいつかは諦めるだろう。


そう思っていたはずなのに、私の口から出たのは......。

「可哀想だがそなたをここから逃がしてやることはできない」


なぜあんなことを言ってしまったのか。

その娘が見たこともない美しさだったから？

それとも他の使用人や奴隷のように泣き叫ばなかったから？


私は自分の中で混乱していると、

「王子様、これからよろしくお願いします」

そう言って、娘は頭を下げたものだから驚いてしまった。

驚いてしまったと同時に、会話が可能な娘がいたのだと思うとつい、名前を聞きたくなってしまった。

（いけない！名前など聞いたら恐れられてしまう）

「そなたの名は......言いたくなければ言わなくていい。私からそなたを呼ぶことはないから」

娘と関わるつもりがない意思を伝えておけば、必要以上に恐れられないのではないかと思ってそう言った。

そして今できる最善のことは、娘の前から自分の姿を消すことだと思い至り、そのまま庭に出て行った。