貴方がいるから大丈夫〜醜いイケメン騎士と異世界の稀人

ただ、傍にいるだけじゃ嫌なんです

隣国のリンドル王国というのは、小さな国ではあるのだが、武に特化した貴族が多く、侮れない国だ。

サンドラ姫はそんな国の騎士姫なので、顔は二の次、強い男との結婚を望んでいるようだ。アレクシス様の強さの噂を耳にして、やって来たのだろう。

アレクシス様は、毎朝早くから夕暮れまで、サンドラ姫に連れ出されている。なので私の護衛が出来ず心配して、今は側にリサさんとマーティンさんをつけて下さっている。


「王宮からの返信はまだなのでしょうかね～」

リサさんは、元気のない私を気遣って言った。

「隣国までの通信のやり取りは、急いでも一週間ほどかかるものです。そろそろ連絡がある頃でしょう」

マーティンさんも、希望を持たせるように声をかけてくれる。

けれど私は全然元気が出ない。

それはーー。


少し前、マリーさんが私に耳打ちしてきたのだ。

「カスミ様、わたくし、大変な事を小耳に挟みましたの！なんと、サンドラ姫は、日中旦那様を連れまわすだけでは飽き足らず、夜間旦那様のお部屋にまで訪問なさっているらしいのです！毎日ではないようですが、二度程目撃した者がいるんです」

私はそれを聞いて、身体が崩れ堕ちそうな気がしたーー。

どう言ってマリーさんに返事したのか、どうやって帰って来たのかもわからない。
何とか自室に辿りついて塞ぎ込んでしまったのを、リサさんたちに心配されているのだ。

「リサさん……。最近まで私は、ただアレクシス様の傍にいたいって思っていたんです。結婚すれば、ずっと傍にいられるからそうなればいい、でももし結婚できないなら、メイドでも文官でもいいって……」

私はそのまま顔を手で覆った。

「でも……！ 今はそれじゃ嫌なんです。アレクシス様が、私以外の女の人と結婚して、優しく見つめたり、触れたりするのを、文官として隣で見ているなんて、耐えられない……！ 」

リサさんは、私を抱きしめながら、マーティンさんに困ったような視線を送っていた。マーティンさんも、何と言葉をかけていいか分からず、ただ黙って立っていた。