上 下
8 / 24

初デートのお誘い

しおりを挟む


「カスミ、やっと仕事がひと段落つきそうなんだ」

アレクシス様は突然言った。

今は夕飯を終えて、お茶をふたりで飲んでいるところだ。

「引き継ぎとかいろいろ大変ですよね、お疲れ様です」

私が労いの言葉をかけたのだけれど、アレクシス様はどこか上の空。

「アレクシス様?」

「……今まで仕事が忙しかった分、カスミに何もしてやれなかった。それで、今度の休みなんだが、カスミを街に連れて行ってやろうかと思うのだが」

ちょっと照れくさそうにアレクシス様が言った。

私は瞳を輝かせて聞いた。

「もしかして、それってデートのお誘いですか?」


アレクシス様は、コホン、とひとつ咳払いをして言った。

「まあ、そんなところだ。今までカスミに婚約者として贈り物ひとつしてやれなくて、すまなかった。明日は何でも買ってやる」

「アレクシス様……!私、貴方と居られるだけで十分なんです、でも、貴方とデートできるなんて、やっぱり嬉しい……!ありがとうございます!」


お礼を言う私を優しい目で見つめ、アレクシス様は言う。

「これからは、騎士団の仕事はかなり減るから、もっとそなたに楽しめることをしてやるつもりだ。結婚式の準備も共にしよう。やりたいことがあれば、遠慮なく言ってくれ」

こんなにも、私のことを考えてくれて……。嬉しい……。
私は瞳を潤ませて言った。

「アレクシス様、そのお言葉だけで私は十分幸せです。私、アレクシス様と婚約できて、本当に良かったです…… 」

「まだ何もしていないのに、そんなに喜んで。欲のない奴だな」

アレクシス様は私の頭を撫でながら笑った。

「いいえ、私はとても欲が深いですよ。アレクシス様とデートするなら、やりたいことがたくさんあります」

「ほう?例えば?」

「えっと、アレクシス様と手を繋いで綺麗な遊歩道を散歩したり、腕を組んでお店を見たり、ご飯をあーんして食べさせ合いっこしたり、膝枕でお昼寝もいいですね~、とにかくイチャイチャしたいです!」

私は欲望を隠しもせずに並べ立てた。

アレクシス様は少し頬を染めて言った。

「そ、そうか……。ちょっと照れてしまいそうなことばかりだが、そんなことでカスミが喜んでくれるなら、いくらでも付き合ってやろう」

私は嬉しくて、思わずアレクシス様に飛びついてしまった。

「大好き!アレクシス様!そんなに優しいと、チュウしちゃいますよ~っ!」私は抱きついたまま、唇をんーっと尖らせて見せた。

「……望むところだ」

アレクシス様は私の顎を捕まえ、優しく口付けた。

(ああっ!デート楽しみだ~っ!)


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

聖女は世界を愛する

編端みどり
恋愛
聖女召喚されたけど、コレって誘拐じゃん。会話ができるの虐待するシスターだけなんてつらすぎる。なんとか、あの優しいお兄さんと誰にも邪魔されずおしゃべりしたい。 ※17話くらいまで聖女がひたすら虐げられております。 もともと短編でした。短編は完結したので下に移動。その後や番外編をちょこちょこ更新予定。 37.怒られてばかりの聖女サマ 抜けてたの入れました。あと、番号ずれててごめんなさい!訂正しました

平凡地味子ですが『魔性の女』と呼ばれています。

ねがえり太郎
恋愛
江島七海はごく平凡な普通のOL。取り立てて目立つ美貌でも無く、さりとて不細工でも無い。仕事もバリバリ出来るという言う訳でも無いがさりとて愚鈍と言う訳でも無い。しかし陰で彼女は『魔性の女』と噂されるようになって――― 生まれてこのかた四半世紀モテた事が無い、男性と付き合ったのも高一の二週間だけ―――という彼女にモテ期が来た、とか来ないとかそんなお話 ※2018.1.27~別作として掲載していたこのお話の前日譚『太っちょのポンちゃん』も合わせて収録しました。 ※本編は全年齢対象ですが『平凡~』後日談以降はR15指定内容が含まれております。 ※なろうにも掲載中ですが、なろう版と少し表現を変更しています(変更のある話は★表示とします)

報われない恋の行方〜いつかあなたは私だけを見てくれますか〜

矢野りと
恋愛
『少しだけ私に時間をくれないだろうか……』 彼はいつだって誠実な婚約者だった。 嘘はつかず私に自分の気持ちを打ち明け、学園にいる間だけ想い人のこともその目に映したいと告げた。 『想いを告げることはしない。ただ見ていたいんだ。どうか、許して欲しい』 『……分かりました、ロイド様』 私は彼に恋をしていた。だから、嫌われたくなくて……それを許した。 結婚後、彼は約束通りその瞳に私だけを映してくれ嬉しかった。彼は誠実な夫となり、私は幸せな妻になれた。 なのに、ある日――彼の瞳に映るのはまた二人になっていた……。 ※この作品の設定は架空のものです。 ※お話の内容があわないは時はそっと閉じてくださいませ。

【完結】可愛い妹に全てを奪われましたので ~あなた達への未練は捨てたのでお構いなく~

Rohdea
恋愛
特殊な力を持つローウェル伯爵家の長女であるマルヴィナ。 王子の妃候補にも選ばれるなど、子供の頃から皆の期待を背負って生きて来た。 両親が無邪気な妹ばかりを可愛がっていても、頑張ればいつか自分も同じように笑いかけてもらえる。 十八歳の誕生日を迎えて“特別な力”が覚醒すればきっと───……そう信じていた。 しかし、十八歳の誕生日。 覚醒するはずだったマルヴィナの特別な力は発現しなかった。 周りの態度が冷たくなっていく中でマルヴィナの唯一の心の支えは、 力が発現したら自分と婚約するはずだった王子、クリフォード。 彼に支えられながら、なんとか力の覚醒を信じていたマルヴィナだったけれど、 妹のサヴァナが十八歳の誕生日を迎えた日、全てが一変してしまう。 無能は不要と追放されたマルヴィナは、新たな生活を始めることに。 必死に新たな自分の居場所を見つけていこうとするマルヴィナ。 一方で、そんな彼女を無能と切り捨てた者たちは────……

なぜ毛を剃らなきゃいけないのか? ムダ毛って何?

月澄狸
エッセイ・ノンフィクション
体毛が生えているのは不潔。って誰が決めたの!?

【完結】番が見つかった恋人に今日も溺愛されてますっ…何故っ!?

ハリエニシダ・レン
恋愛
大好きな恋人に番が見つかった。 当然のごとく別れて、彼は私の事など綺麗さっぱり忘れて番といちゃいちゃ幸せに暮らし始める…… と思っていたのに…!?? 狼獣人×ウサギ獣人。 ※安心のR15仕様。 ----- 主人公サイドは切なくないのですが、番サイドがちょっと切なくなりました。予定外!

大好きな恋人が、いつも幼馴染を優先します

山科ひさき
恋愛
騎士のロバートに一目惚れをしたオリビアは、積極的なアプローチを繰り返して恋人の座を勝ち取ることに成功した。しかし、彼はいつもオリビアよりも幼馴染を優先し、二人きりのデートもままならない。そんなある日、彼からの提案でオリビアの誕生日にデートをすることになり、心を浮き立たせるが……。

別れてくれない夫は、私を愛していない

abang
恋愛
「私と別れて下さい」 「嫌だ、君と別れる気はない」 誕生パーティー、結婚記念日、大切な約束の日まで…… 彼の大切な幼馴染の「セレン」はいつも彼を連れ去ってしまう。 「ごめん、セレンが怪我をしたらしい」 「セレンが熱が出たと……」 そんなに大切ならば、彼女を妻にすれば良かったのでは? ふと過ぎったその考えに私の妻としての限界に気付いた。 その日から始まる、私を愛さない夫と愛してるからこそ限界な妻の離婚攻防戦。 「あなた、お願いだから別れて頂戴」 「絶対に、別れない」

処理中です...