上 下
15 / 29

ローランド様のメイドをします

しおりを挟む
ローランド様の部屋の前。

私は居ずまいを正して扉をノックする。

「入れ」

低くて素敵な声を聞いて顔が綻ぶ。

「失礼します」

ベッドで上半身を起こしているローランド様は、やっぱり仮面を付けている。

人が来るたびこうして付けているんだろうな。なんか切ないよ。


「おはようございます、ローランド様。カーテンを開けさせていただきますね」

そう言う私にローランド様は

「本当にメイドをやるんだな……」と小さく呟いていたが、聞こえないフリをした。


私はカーテンを開け、小窓を開けて換気する。

「ローランド様。お茶を用意いたしますね」

「ああ。……頼む」

私はいそいそとワゴンを部屋に入れ、紅茶をカップに注いだ。ベッド脇の小テーブルに乗せる。

「ローランド様、この後朝食をご用意しますが、あの、私もこの部屋でご一緒してもいいですか?あ、もちろん私はよそを向いて食べますので」

ローランド様は少し間を置いて、諦めたように

「主人と食事を一緒にさせてくれと申し出るメイドは初めてだよ」と笑った。


私たちは背を向けあって朝食を取る。

「ローランド様、この後はいかがなさいますか?私はローランド様のお部屋の掃除と、シーツを変えようと思っているのですが」

「なら私は庭で剣の素振りでもしているよ」

「わかりました。後はローランド様の衣類の洗濯をしますので、着替えたら取りに来ますね」

「え、洗濯までするのか?それは他の者に任せてくれないか」

「何故です?」

「それは、その……、下着とか、も、あるし……」

「ああ、それでしたら大丈夫です。私、おじいちゃんのぱんつだって洗っていましたから」

「パ……ッ‼︎  頼む、それだけはやめてくれ……‼︎」


「そうですか?そんなにお嫌なら諦めますけど……そんなにお気になさらなくてもいいのに」

私はそう言って、ローランド様のぱんつを洗うところを想像してしまった。きっと、高級なぱんつなんだろうな。


食後私は掃除とシーツ交換を、ローランド様は剣の鍛錬をなさって、その後は邸の庭で花を見ながらふたりでお茶を楽しんだ。

やはり背を向けあってであるが。

いつかローランド様が仮面を取ってくれて、同じ景色を見ながらティータイムを過ごせたら、もっともっと楽しいのにな、と思った。


こうしていつもくっついて、世話を焼きたがる私なのである。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

美醜逆転異世界で、非モテなのに前向きな騎士様が素敵です

花野はる
恋愛
先祖返りで醜い容貌に生まれてしまったセドリック・ローランド、18歳は非モテの騎士副団長。 けれども曽祖父が同じ醜さでありながら、愛する人と幸せな一生を送ったと祖父から聞いて育ったセドリックは、顔を隠すことなく前向きに希望を持って生きている。けれどやはりこの世界の女性からは忌み嫌われ、中身を見ようとしてくれる人はいない。 そんな中、セドリックの元に異世界の稀人がやって来た!外見はこんなでも、中身で勝負し、専属護衛になりたいと頑張るセドリックだが……。 醜いイケメン騎士とぽっちゃり喪女のラブストーリーです。 多分短い話になると思われます。 サクサク読めるように、一話ずつを短めにしてみました。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

私が美女??美醜逆転世界に転移した私

恋愛
私の名前は如月美夕。 27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。 私は都内で独り暮らし。 風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。 転移した世界は美醜逆転?? こんな地味な丸顔が絶世の美女。 私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。 このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。 ※ゆるゆるな設定です ※ご都合主義 ※感想欄はほとんど公開してます。

気付いたら異世界の娼館に売られていたけど、なんだかんだ美男子に救われる話。

sorato
恋愛
20歳女、東京出身。親も彼氏もおらずブラック企業で働く日和は、ある日突然異世界へと転移していた。それも、気を失っている内に。 気付いたときには既に娼館に売られた後。娼館の店主にお薦め客候補の姿絵を見せられるが、どの客も生理的に受け付けない男ばかり。そんな中、日和が目をつけたのは絶世の美男子であるヨルクという男で――……。 ※男は太っていて脂ぎっている方がより素晴らしいとされ、女は細く印象の薄い方がより美しいとされる美醜逆転的な概念の異世界でのお話です。 !直接的な行為の描写はありませんが、そういうことを匂わす言葉はたくさん出てきますのでR15指定しています。苦手な方はバックしてください。 ※小説家になろうさんでも投稿しています。

美醜逆転の世界に間違って召喚されてしまいました!

エトカ
恋愛
続きを書くことを断念した供養ネタ作品です。 間違えて召喚されてしまった倉見舞は、美醜逆転の世界で最強の醜男(イケメン)を救うことができるのか……。よろしくお願いします。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

私は女神じゃありません!!〜この世界の美的感覚はおかしい〜

朝比奈
恋愛
年齢=彼氏いない歴な平凡かつ地味顔な私はある日突然美的感覚がおかしい異世界にトリップしてしまったようでして・・・。 (この世界で私はめっちゃ美人ってどゆこと??) これは主人公が美的感覚が違う世界で醜い男(私にとってイケメン)に恋に落ちる物語。 所々、意味が違うのに使っちゃってる言葉とかあれば教えて下さると幸いです。 暇つぶしにでも呼んでくれると嬉しいです。 ※休載中 (4月5日前後から投稿再開予定です)

転生したので猫被ってたら気がつけば逆ハーレムを築いてました

市森 唯
恋愛
前世では極々平凡ながらも良くも悪くもそれなりな人生を送っていた私。 ……しかしある日突然キラキラとしたファンタジー要素満載の異世界へ転生してしまう。 それも平凡とは程遠い美少女に!!しかも貴族?!私中身は超絶平凡な一般人ですけど?! 上手くやっていけるわけ……あれ?意外と上手く猫被れてる? このままやっていけるんじゃ……へ?婚約者?社交界?いや、やっぱり無理です!! ※小説家になろう様でも投稿しています

処理中です...