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第二章
第8話
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悠一は運転中の長谷部の顔が好きだ。
助手席からなので横顔しか見られないが、いつもは頼りない長谷部がほんの少しだけ大人びて見える。
自分がまだ免許を取得できない年齢だからだろうか。
来年の誕生日にはすぐに運転できるようになってやる、そうしたら対等になれる、そんな気がしていた。
子ども扱いされることももうなくなるだろうか、なんて思ってもいる。
悠一は早く十八歳になりたかった。
「ああー!!また道間違っちゃったよー」
そんなことを考えて長谷部の横顔に見とれていたら、またいつもの間抜けな声。
一気にうっとりとした気持ちが冷めた。
「また?何年車乗ってんだよ、全く……」
悠一が小馬鹿にしたように言い放つ。
カーナビはもちろんきちんと仕事をしている。
なのに、このザマである。
「もっかい言うぞ。三つ目の信号を右だからな。わかった?」
「うん……」
少ししょぼくれながら、長谷部は運転を続ける。
二人は目的のショッピングセンターに無事到着、服やCDなど各々目当てのものを買いこむと、さっさと再び車に乗りこんだ。
今日のメインイベントは、買い物ではないのだ。
「そ。ここここ!ここで悠に俺、告白したんだよなあ~!」
車を降りて景色を見渡すニコニコ上機嫌の長谷部を尻目に、悠一は今買ってきたばかりのCDを聴き続けている。
二人が次に来たのは、始めに待ち合わせた駅から来るまで二時間ほどの大きな臨海公園。
去年の遠足で、教師である長谷部は生徒である悠一に大胆にも愛の告白を決行、やや強引にOKを勝ち取った。
同性の、高校生の、しかも教え子に告白してしまった長谷部。
思いを告げた夜はなんてことをしでかしてしまったんだ、と顔面蒼白になって頭を抱えたものだった。
バレたら確実に職を失うどころか、下手すれば前科者になりかねない。
人生が変わってしまう危険を伴っていたと言っても過言ではない。
幸い悠一がOKしてくれたからまだ良かったようなものの、とんでもないハイリスク告白だったわけだ。
長谷部はもともとゲイで、しかしそのせいで苦い経験もしてきた。
どうして自分は同性しか愛せないのか、と自分を責めたこともあった。
もう恋なんかしたくない、そう思った日々もあったが、結局また好きになったのは自分よりずっと年下の、生意気そうな少年だった。
入学式のあの日、何の気なしに声をかけたあの時から、突然気になる存在になった。
擦れたようでいて実は真っ白で、まっすぐで頑強な心はしなやかさに欠け、容易く手折られることもあるだろう。
まるで近寄るもの全てを傷つけてやろうとでも思っているかのような態度や容姿も、傷つきたくない弱い心の裏返し。
そんな悠一を、一番近くで見ていたい、見守りたいと思うようになった。
──扱いにくいことは重々承知の上で。
助手席からなので横顔しか見られないが、いつもは頼りない長谷部がほんの少しだけ大人びて見える。
自分がまだ免許を取得できない年齢だからだろうか。
来年の誕生日にはすぐに運転できるようになってやる、そうしたら対等になれる、そんな気がしていた。
子ども扱いされることももうなくなるだろうか、なんて思ってもいる。
悠一は早く十八歳になりたかった。
「ああー!!また道間違っちゃったよー」
そんなことを考えて長谷部の横顔に見とれていたら、またいつもの間抜けな声。
一気にうっとりとした気持ちが冷めた。
「また?何年車乗ってんだよ、全く……」
悠一が小馬鹿にしたように言い放つ。
カーナビはもちろんきちんと仕事をしている。
なのに、このザマである。
「もっかい言うぞ。三つ目の信号を右だからな。わかった?」
「うん……」
少ししょぼくれながら、長谷部は運転を続ける。
二人は目的のショッピングセンターに無事到着、服やCDなど各々目当てのものを買いこむと、さっさと再び車に乗りこんだ。
今日のメインイベントは、買い物ではないのだ。
「そ。ここここ!ここで悠に俺、告白したんだよなあ~!」
車を降りて景色を見渡すニコニコ上機嫌の長谷部を尻目に、悠一は今買ってきたばかりのCDを聴き続けている。
二人が次に来たのは、始めに待ち合わせた駅から来るまで二時間ほどの大きな臨海公園。
去年の遠足で、教師である長谷部は生徒である悠一に大胆にも愛の告白を決行、やや強引にOKを勝ち取った。
同性の、高校生の、しかも教え子に告白してしまった長谷部。
思いを告げた夜はなんてことをしでかしてしまったんだ、と顔面蒼白になって頭を抱えたものだった。
バレたら確実に職を失うどころか、下手すれば前科者になりかねない。
人生が変わってしまう危険を伴っていたと言っても過言ではない。
幸い悠一がOKしてくれたからまだ良かったようなものの、とんでもないハイリスク告白だったわけだ。
長谷部はもともとゲイで、しかしそのせいで苦い経験もしてきた。
どうして自分は同性しか愛せないのか、と自分を責めたこともあった。
もう恋なんかしたくない、そう思った日々もあったが、結局また好きになったのは自分よりずっと年下の、生意気そうな少年だった。
入学式のあの日、何の気なしに声をかけたあの時から、突然気になる存在になった。
擦れたようでいて実は真っ白で、まっすぐで頑強な心はしなやかさに欠け、容易く手折られることもあるだろう。
まるで近寄るもの全てを傷つけてやろうとでも思っているかのような態度や容姿も、傷つきたくない弱い心の裏返し。
そんな悠一を、一番近くで見ていたい、見守りたいと思うようになった。
──扱いにくいことは重々承知の上で。
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