蒼い炎

海棠 楓

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生まれた街で

第69話

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 真司の生まれた街に到着したのは、すっかり夜も明けて、東から朝日がまぶしく差しこむ頃だった。
「ここで待ってれば登校中の晃司に会えるだろ」
 晃司の家のそばで真司だけを降ろし、要の車はどこかへ走り去った。

 真司の心臓は今にも口から飛び出そうだ。消えてしまいたいとさえ思ったほどだ。もちろん晃司に会いたいなんて思うはずもなく、適当に時間をつぶして、会えなかった、と言って戻るしかない、そう考えていた。
「――真司?」
 心臓を鷲掴みにされたような気分だった。この聞き覚えのある、低い声は……。
 恐る恐る振り返る。
「やっぱり……」
 晃司だ。真司を見て、どうしていいか分からない、といった顔をしている。

 晃司は別れたときよりもずっと、大人びていた。身長もさらに伸びているし、髪も前より少し長めだ。予想通り、ここらで一番の進学校の制服が似合っている。
「おいっ、相変わらずだな」
 片時も想い続けて止まなかった晃司が今、目の前で普通に動き、話している。そう思うと真司の顔が涙の洪水と化すのも無理はない。
「こ……晃司……」
 涙声でそっと晃司の名を呼んでみた。昔は当たり前だったことが、今は違う。話してくれるだけで、見てくれるだけで、名を呼べるだけで胸がいっぱいになる。
 真司の大泣きが一段落ついたのを見計らって、晃司が口を開いた。
「なんか突然家出するわ、帰ってきたと思ったらすぐまた出てったわで、おばさん心配してたぞ。――俺だって心配してたよ」
 最後の言葉が真司を我に帰らせ、真司は背を向けた。
「な、なんで晃司が俺のこと心配するのっ、俺は晃司に……」
 言いかけた時、晃司が真司の正面に廻って顔を覗きこんだ。
「真司……幼馴染を心配すんのは、当然だろ?」
 幼馴染――『もう戻れない』とあの時言われた、本来あるべき関係。
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