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見知らぬ土地で
第59話
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翌日。静流はいつも通り出勤してきたが、ふっきれたことでどことなく明るく、颯爽とした雰囲気が漂っていた。
「紫苑、おはよう」
当然紫苑は面白くない。
「幸せそーにデレデレすんじゃねぇよ」
捨て台詞を残し、ぷいと立ち去った。周りの誰もが紫苑の不機嫌の理由に気づいていたが、静流本人ただ一人、わけがわからず憮然としていた。
「紫苑」
休憩中、スタッフルームで静流がついに声をかけた。店を開けてからも紫苑の態度は相変わらずで、業務に支障をきたすほどの酷さだった。
「何なんだよあの態度……僕には怒ることがあったって紫苑が僕にそんなに怒る理由は無いだろ?! お客様やスタッフだって不審に思ってる」
「『僕は怒っててもじっとイイ子で我慢してるのに』ってか」
静流に背を向けたまま紫苑の悪態は続く。
「そう……だよ、なんで真司にあんなこと……真司は僕がやっと見つけた」
「飼い犬だろ。お前は真司を助けてやってるつもりかもしれないがなぁ、お前は結局一人の寂しさを紛らすためのペットが欲しかったんだよ」
「……おまえに」
静流の肩がかすかに震えている。
「お前にそんなこと言われる筋合いは無いよ! ……誰のせいで寂しい思いしてると思って……」
紫苑は尚も挑発するように言う。
「おいおい、人のせーにすんな」
そう言って立ちあがり、やっと静流の方に向き直って、言った。
「そんなに寂しいんなら、抱いちゃろか?」
「な、なんだ? 今の音?!」
「スタッフルームのほうじゃないですか」
店に出ていたオーナー、要、輝が何事かとスタッフルームに向かう。
ドアを開け、そこに彼らが見たものは、倒れた椅子、割れたガラスコップ、床に投げ出された雑誌、そして傷だらけになった静流と紫苑。
「紫苑、おはよう」
当然紫苑は面白くない。
「幸せそーにデレデレすんじゃねぇよ」
捨て台詞を残し、ぷいと立ち去った。周りの誰もが紫苑の不機嫌の理由に気づいていたが、静流本人ただ一人、わけがわからず憮然としていた。
「紫苑」
休憩中、スタッフルームで静流がついに声をかけた。店を開けてからも紫苑の態度は相変わらずで、業務に支障をきたすほどの酷さだった。
「何なんだよあの態度……僕には怒ることがあったって紫苑が僕にそんなに怒る理由は無いだろ?! お客様やスタッフだって不審に思ってる」
「『僕は怒っててもじっとイイ子で我慢してるのに』ってか」
静流に背を向けたまま紫苑の悪態は続く。
「そう……だよ、なんで真司にあんなこと……真司は僕がやっと見つけた」
「飼い犬だろ。お前は真司を助けてやってるつもりかもしれないがなぁ、お前は結局一人の寂しさを紛らすためのペットが欲しかったんだよ」
「……おまえに」
静流の肩がかすかに震えている。
「お前にそんなこと言われる筋合いは無いよ! ……誰のせいで寂しい思いしてると思って……」
紫苑は尚も挑発するように言う。
「おいおい、人のせーにすんな」
そう言って立ちあがり、やっと静流の方に向き直って、言った。
「そんなに寂しいんなら、抱いちゃろか?」
「な、なんだ? 今の音?!」
「スタッフルームのほうじゃないですか」
店に出ていたオーナー、要、輝が何事かとスタッフルームに向かう。
ドアを開け、そこに彼らが見たものは、倒れた椅子、割れたガラスコップ、床に投げ出された雑誌、そして傷だらけになった静流と紫苑。
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